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【前話分コレット語り】
コレットは語り出す。忌まわしき事件の詳細を。
「あるお茶会でそれは起きました。
参加者は私とクロディーヌ様、断罪事件で証言を拒否されたマイヤール伯爵令嬢、モンテーニュ侯爵令嬢。そしてアラン様です。
そこで私はクロディーヌ様に媚薬を盛られました。解毒薬も無く、放って置くと気が触れると言われました。
アラン様が助けを呼びに行こうとすると、その間に私を窓から突き落とすと言われてしまい、殿下は動けなくなりました。
このような事件を起こした理由は、アラン様が私を褒めたからだそうです。そのお仕置きだと。
だから、私を助ける為にアラン様が欲を発散させて、でも、それに惑わされる事は許さないと、もしもそのような事になったら私の事を殺すと脅しました。
クロディーヌ様達は、ずっと眺めて笑っていました。
媚薬は私の使用人が買いに行き、私が自らアラン様を誘惑する為に飲んだと……罠を張られていました。
……死にたいと思いました。皆の前で辱めを受け、アラン様にもあの様なことをさせて……
でも、クロディーヌ様は自殺したら全て私の罪として公表すると脅してきたのです」
【前話分語り終了】
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
何と言う悍ましいことを……
お母様だけでなく、他にも高位令嬢が二人も加担していていただなんて!
「なぜそれを訴えなかったのだ」
「彼女達がやったという証拠がありませんでした。そして、私の使用人が入手したという証拠がありました。
いくらアラン様が証言して下さっても、証拠の方が判断材料として有力です。それに、あの三人の令嬢がわざわざ危険を犯してまで私なぞを罠に嵌めたと言って、本当に信じて下さいましたか?
私がアラン様の寵愛を欲してやったのだと、そう言った方が信じられたでしょう。
それに……私はまだ16歳でした。あんな辱めを受けたことを人様に言う勇気などありませんでした」
言えなかったことを責めることなんて出来ない。だって言っても信じて貰えないかもしれない、他の証拠が捏造されているなら余計にだ。
「ラシュレ夫人、何か言う事はないか」
「さぁ、どんな答えをお望みですか?嘘ですわ!と泣いてほしいですか?真実だと高笑いして欲しいのかしら。
どうせこれからお調べになるのでしょう?私が何か言う必要など無いと思うのですけど?」
ここまで来ても笑っている。
この人はどうしてこんなふうになったの?
「ねぇ、クロディーヌ様。あなたは昔から頭がおかしいけれど、アラン様のことは本当に好きでしたよね」
「あら、ずいぶんと強気になったのね。10年以上経つと人って変わるのね。もう少し早くにそれくらい言えるとよかったのに。残念だわ」
この人は自分のことすらどうでもいいの?
「クロディーヌ様。どうしてアンジェリークという名前にしたんですか?」
「……それはアランが……」
私の名前?伯父様が言ってた、確か──
「男の子だったらアンジュ。女の子ならアンジェリーク。どちらも私達の最愛の天使という意味だよ」
「……どうして……」
「あ!やっと薄笑いが消えましたね、クロディーヌ様!」
「どうしてあなたが知っているのよ!!」
あぁ、コレット様が悪意に染まって行く。
お母様を今度こそ断罪するため、綺麗なままではいられないのかと思うと……哀しい。
「だって。私とアラン様で決めた名前だもの」
「うそ!だって!アランは結婚してからずっと私を愛しているって言ってくれていたわ!」
「愛しているよ、愛しい人」
「あ……」
「気付いてたんじゃないんですか?クロディーヌ様は人の心の機微を読むのが得意だったじゃない。
アラン様は「クロディーヌ」を愛してるとは一度も言わなかったでしょう?」
「やめてっ、やめてやめてやめてやめてっ!!」
とうとうお母様からの微笑みの仮面が剥がれた。
「違うわ!私はアランを手に入れたの!私の物なのよ!!」
「……卒業パーティーの前に約束したんです。
もしも計画が失敗して、アラン様がこのままクロディーヌ様と結婚することになったら。
少しだけ目を瞑って、少しだけ耳を塞いで。
そこにいるのは私だと思って。愛する人って呼んでって」
「嘘よ!アランがそんな酷いことをするはずないじゃない!彼は優しいの!すごくすごく優しい人なの!!」
「何を言っているの?その優しいアラン様をひたすら痛めつけて壊したのはあなたじゃない。
あなたがあんな事をしなければ、彼は優しくて誠実な婚約者として、夫として、あなたを大切にしたでしょう。
私だって最初はただの憧れだった。アラン様だって私の事なんて特別に思ってなどいなかった!
あの事件が私達を結び付けたの。
最初は同情だったかもしれない。でも、あなたがあの後も私を何度も脅して!何度も何度も彼を試し続けたから!
幸せを台無しにしたのはあなた自身よ、クロディーヌ。
あなたがアラン様を殺したのでしょう?」
コレットは語り出す。忌まわしき事件の詳細を。
「あるお茶会でそれは起きました。
参加者は私とクロディーヌ様、断罪事件で証言を拒否されたマイヤール伯爵令嬢、モンテーニュ侯爵令嬢。そしてアラン様です。
そこで私はクロディーヌ様に媚薬を盛られました。解毒薬も無く、放って置くと気が触れると言われました。
アラン様が助けを呼びに行こうとすると、その間に私を窓から突き落とすと言われてしまい、殿下は動けなくなりました。
このような事件を起こした理由は、アラン様が私を褒めたからだそうです。そのお仕置きだと。
だから、私を助ける為にアラン様が欲を発散させて、でも、それに惑わされる事は許さないと、もしもそのような事になったら私の事を殺すと脅しました。
クロディーヌ様達は、ずっと眺めて笑っていました。
媚薬は私の使用人が買いに行き、私が自らアラン様を誘惑する為に飲んだと……罠を張られていました。
……死にたいと思いました。皆の前で辱めを受け、アラン様にもあの様なことをさせて……
でも、クロディーヌ様は自殺したら全て私の罪として公表すると脅してきたのです」
【前話分語り終了】
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何と言う悍ましいことを……
お母様だけでなく、他にも高位令嬢が二人も加担していていただなんて!
「なぜそれを訴えなかったのだ」
「彼女達がやったという証拠がありませんでした。そして、私の使用人が入手したという証拠がありました。
いくらアラン様が証言して下さっても、証拠の方が判断材料として有力です。それに、あの三人の令嬢がわざわざ危険を犯してまで私なぞを罠に嵌めたと言って、本当に信じて下さいましたか?
私がアラン様の寵愛を欲してやったのだと、そう言った方が信じられたでしょう。
それに……私はまだ16歳でした。あんな辱めを受けたことを人様に言う勇気などありませんでした」
言えなかったことを責めることなんて出来ない。だって言っても信じて貰えないかもしれない、他の証拠が捏造されているなら余計にだ。
「ラシュレ夫人、何か言う事はないか」
「さぁ、どんな答えをお望みですか?嘘ですわ!と泣いてほしいですか?真実だと高笑いして欲しいのかしら。
どうせこれからお調べになるのでしょう?私が何か言う必要など無いと思うのですけど?」
ここまで来ても笑っている。
この人はどうしてこんなふうになったの?
「ねぇ、クロディーヌ様。あなたは昔から頭がおかしいけれど、アラン様のことは本当に好きでしたよね」
「あら、ずいぶんと強気になったのね。10年以上経つと人って変わるのね。もう少し早くにそれくらい言えるとよかったのに。残念だわ」
この人は自分のことすらどうでもいいの?
「クロディーヌ様。どうしてアンジェリークという名前にしたんですか?」
「……それはアランが……」
私の名前?伯父様が言ってた、確か──
「男の子だったらアンジュ。女の子ならアンジェリーク。どちらも私達の最愛の天使という意味だよ」
「……どうして……」
「あ!やっと薄笑いが消えましたね、クロディーヌ様!」
「どうしてあなたが知っているのよ!!」
あぁ、コレット様が悪意に染まって行く。
お母様を今度こそ断罪するため、綺麗なままではいられないのかと思うと……哀しい。
「だって。私とアラン様で決めた名前だもの」
「うそ!だって!アランは結婚してからずっと私を愛しているって言ってくれていたわ!」
「愛しているよ、愛しい人」
「あ……」
「気付いてたんじゃないんですか?クロディーヌ様は人の心の機微を読むのが得意だったじゃない。
アラン様は「クロディーヌ」を愛してるとは一度も言わなかったでしょう?」
「やめてっ、やめてやめてやめてやめてっ!!」
とうとうお母様からの微笑みの仮面が剥がれた。
「違うわ!私はアランを手に入れたの!私の物なのよ!!」
「……卒業パーティーの前に約束したんです。
もしも計画が失敗して、アラン様がこのままクロディーヌ様と結婚することになったら。
少しだけ目を瞑って、少しだけ耳を塞いで。
そこにいるのは私だと思って。愛する人って呼んでって」
「嘘よ!アランがそんな酷いことをするはずないじゃない!彼は優しいの!すごくすごく優しい人なの!!」
「何を言っているの?その優しいアラン様をひたすら痛めつけて壊したのはあなたじゃない。
あなたがあんな事をしなければ、彼は優しくて誠実な婚約者として、夫として、あなたを大切にしたでしょう。
私だって最初はただの憧れだった。アラン様だって私の事なんて特別に思ってなどいなかった!
あの事件が私達を結び付けたの。
最初は同情だったかもしれない。でも、あなたがあの後も私を何度も脅して!何度も何度も彼を試し続けたから!
幸せを台無しにしたのはあなた自身よ、クロディーヌ。
あなたがアラン様を殺したのでしょう?」
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