ごめんなさい、お淑やかじゃないんです。

ましろ

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8.初めてのデート (遠征準備)

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「明日、一緒に出掛けないか」


エミディオ様からの突然のお誘いだった。


「明日ですか?私は特に予定がある訳では無いから大丈夫ですけど、エミディオ様の方が忙しいのでは?」
「実は財務局の同僚からパーティーの誘いを受けたのだ。娘の誕生日祝いだから、ぜひ君を連れて来てほしいと言われてね」
「私を……ですか?」
「ああ、君のこれからの為だよ。奥方が年若い君の事を心配してくれているそうだ。ディーナ夫人は24歳。君よりは年上だけど、せっかくの心遣いだ。参加した方がいいと思う。行けそうなら、それ用のドレスを見に行こう」


なるほど。同僚の誘いなら断れないわよね?


「分かりました。よろしくお願いします」
「よかった。あと……買い物の後にモニカの所へ行こうと思う。一緒に行かないか?」


おぉ?モニカさんとの対決?しまったわ、すっかり忘れていた!
幸せボケしてたかも。
私はモニカさんの為の存在だった。


「私が一緒に行って大丈夫ですかね」
「連絡は入れておく。気が乗らないなら断ってくれていいぞ」
「いえ、私はお会いしてみたいです」


だって、私達の始まりであり、終わりを告げる人だもの。私がいったいどんな人の為に契約結婚したのか。ちゃんとこの目で確かめたい。

……エミディオ様が騙されてる可能性もあるし。
お人好しの甘々だからね。








「ストップ!駄目ですよエミディオ様!」
「どうした?気に入らなかったか」
「気に入らないのは品質では無く量の方です!私は一人しかいないのに何十着買おうとしてるのですか!」
「だが、どれも捨てがたい」


確かに伯爵家は豊かだけれど!


「これでも私は結構稼いでいるぞ。自分のお金を好きに使って何が悪い」
「せっかく働いた対価なら、ご自分の為に使って下さいよ」
「自分の為に使っているだろう。かなり楽しいぞ。お、あれも似合いそうだ」


誰かこの男を止めて!


「……私はせっかくのプレゼントなら大切にしたいと思います。でもこんなに大量だと、着る機会が無いうちに流行を逃して衣装部屋で眠ったままになりかねません。
それに体重を増やせと言ったじゃないですか。着れなくなる可能性が出てきますよ!」
「なるほど。分かった、残念だが少し減らそう」


よし!この人がこんなにお買い物好きだとは思わなかった。人は見かけによらないものね。
でも確かに楽しかった。お財布を気にしないで買い物するなんて初めて。こんな高級なお店も来ることなんてなかったし。

あ、綺麗
これはサファイア?


「どうした?気に入ったか」
「え、ううん。綺麗だから見ていただけ」
「そうか。ではこれも貰っていこう」


いやいや、だからどうしてそうなるの!


「ネックレスなら体型が変わっても大丈夫だし、シンプルなデザインだからそんなに流行も関係ないだろう」


……確かにそうだけど。


「じゃあこれは17歳の誕生日プレゼントだ」
「え、誕生日なんてとっくに過ぎてるわ」
「いいじゃないか、なんなら0歳からの分を贈りたいくらいなんだが」
「いえ、17歳の分だけで!」
「嫌がられるのは悲しいからそうしよう。このまま付けていくか?」
「うん。……、あのね。ありがとう、誕生日プレゼント」
「どういたしまして。アリーチェも生まれて来てくれてありがとう」


そう言って頬にキスしてくれる。
誕生日もキスをするもの?
この人は将来子供を甘やかしまくって駄目にしそうで怖いわ。
……でも嬉しい。何年ぶりかな、誕生日プレゼントを貰うのは。


「どう?似合ってる?」
「ああ、うちの子は最高に可愛い」
「……馬鹿ね。恥ずかしいからやめて」


こんなに甘やかさてどうしよう。
嬉しいけど、この愛情に慣れてしまうのが怖い。だって私のものじゃない。本当の夫じゃないし、本当の親でもない。3年だけの家族ごっこだ。


「どうした、疲れたか?」
「……ううん、平気。行きましょう」
「いや、あそこの店で少し休もう。紅茶が上手いしケーキもあるぞ」





この人がこういうお店を知っているのは不思議だ。誰かと来たことがあるのかしら。


「まさかモニカさんと?」
「ん?この店のことか」


あ、声に出てた。


「ここはグイド……パーティーに誘ってくれた同僚と来たんだ。男二人で茶を飲むには不向きで、かなり恥ずかしかったよ。
あいつは愛妻家で、さっきの店もアイツに教えてもらった。妻のドレスと、ここは娘へのおみやげのケーキを買いに付き合わされた。どれが美味しいか食べてから買うとわがままを言いやがったんだ」
「仲がいいんですね」
「まぁな。学生の頃からの付き合いだ」


エミディオ様の学生時代か。頭良さそう。

お店の紅茶とケーキは本当に美味しかった。
なんとなく落ち込んでた気分が浮上した。


「もし、モニカに会うのが苦痛なら止めていいんだぞ。ずっと辛そうな顔をしている」
「え、違いますよ!」


ウソ、顔に出てた?そんなつもりなかったのに!


「じゃあ、どうした?……もしかして私と出掛けるのは恥ずかしかったか?」
「は?」
「いや、こんなおじさんと夫婦だと思われるのが恥ずかしいのかと」


そんなこと心配してたの?やだ、笑える!


「本当に違いますよ。エミディオ様って自信家だと思ってました。違うんですね」
「……人相の悪さと若さはどうしようもないだろう」
「アハハッ、人相!だから眉間のシワを減らしてって言ったじゃないですか」
「君が来てからはだいぶ減った筈だ。毎日が楽しいからな」
「……楽しいの?私がいて」
「ああ、娘がいる楽しさなんて一生味わえないと思っていた。毎日楽しいさ」


なんだ。笑えるじゃない。……これは、私だけの笑顔だよね?


「……私も楽しいですよ。優しいお父様なんて一生無理だと思ってたもの。
だから、慣れちゃうのが怖いなって思っただけです。3年間だけなのに、手放したく無くなりそうで」


言っちゃったわ。でも、嘘は付きたくなかった。


「私は君の事をずっと家族だと思うだろう。たとえ住む町が変わっても、もしかしてずっと会えなくなったとしても。家族であることは変わらない」
「離婚しても家族?」
「ああ、妻じゃなくなる。どうどうと娘扱いが出来るじゃないか」


それはどうだろう。妻が娘に変わるってあり?
でも、ずっと家族だと思っていいんだ……


「ありがとう。あなたと結婚出来てよかった」
「それはこちらの台詞だな」


この人は今、どれだけ私を幸せにしたかきっと分かっていない。でも、それでいい。


「よし!そろそろ行きましょうか」





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