ごめんなさい、お淑やかじゃないんです。

ましろ

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【番外編】

負け犬の遠吠え・ガヴィーノ 【中編】

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「起きてガヴィーノ」


だれ……やだ、おきたくない


「こら、もうお昼よ!ご飯食べようよっ」
「……ダリア」
「ん、おそよう。あんまり寝過ぎると夜眠れなくなっちゃうわよ。
ご飯食べるでしょ?手と顔と洗っておいで。洗面所はあっち、タオルはこれね」


こいつはテキパキと指示を出すのが早い。
言われた通りに顔を洗ってようやく目が覚めた。頭痛も吐き気もすっかり治っていた。


「ん、美味い」
「でしょ?」


こいつに謙遜ということばは無いのか?
でも、何故だろう。今朝のスープもだし、こいつの作るご飯は美味い。


「お前はひとり暮らしなのか?」
「うん、そうよ」


確かに恋人はいなさそうだ。



「ちょっと。今失礼なこと考えなかった?」
「いや?そうだろうなと思っただけだ」
「なんかムカつく。どうせモテないわよ。そういうあなたは?振られたの?」
「ぶっ!」
「やだ、汚いな!拭くから動かないで!」


ゴホゴホとむせていると、手早く拭き取られる。口元まで拭われて恥ずかし過ぎる。


「ゴホッ、お前、どうしてっ」
「だって昨日……あ~、ごめんね?」


謝られる方がツライ……


「ほら!いっそのこと私に喋っちゃいなよ!心の中に溜め込むのは良くないよ。ね?ぜ~んぶ吐き出して楽になっちゃえ!」
「……どうしてそんなに俺のことを」
「ん?ちょっと待ってて。午後はお休みって看板出してくるから!」


俺が話し終わるのを待たずに走っていってしまう。なんて慌ただしさだ。でも……どうして俺の為に店まで閉めて話を聞こうとするんだ?


「お待たせ!お茶も入れてきたよ」
「……ありがとう」
「お、ちゃんとお礼が言えるようになったじゃない。偉いぞ~っ」


まさか頭を撫でられるとは思わなかった。
何故だろう、一瞬心臓の動きがおかしくなった気がする。


「どしたの?」
「不整脈かもしれない…」
「え、持病とかある?うちは薬はあっても診察は出来ないわよ?隣の病院で診てもらう?」
「いや、大丈夫だ」
「そお?何かあったら言うのよ?」


いや、だから俺の方が年上なのに。
こいつはまるで幼い子どもに言い聞かせる様に話すよな。……以外と嫌じゃないけど。


それから、俺は何故か素直にモニカへの恋をダリアに話した。こいつの事だからもっとちゃかしたり、笑い飛ばすかと思ったのに、俺が話し終わるまでずっと相槌を打ちながら静かに聞いているだけだった。


「これで終わり。くだらないだろ?」


人に話すことで本当に少しスッキリした気がする。相手に伝わる様に、色々整理しながら話したせいだろうか。


「……生意気なこと言ってもいい?」
「ああ」
「もっとあなたの恋を大事にしてあげればよかったのにね」
「……は?何…、どこに大事にする要素が」
「だってさ、そんなに何年も思い続けるなんて凄いじゃない!彼女の為に爵位まで継ごうとしたんでしょ?」
「……いや、そう思っただけで何も努力してないし」
「でも、大切なお兄さんと彼女さんが幸せになれるように何かしてあげたかったんでしょ?奪うんじゃなくて手助けしたかったんでしょ?」
「……でも、気持ち悪いって、いいとこ取りしようとしてるって言われた」


あれは本当に堪えた……恥ずかし過ぎて二度と会えないと思った程だ。


「確かにね、出来もしないことに手を出そうとするのって周りから見ると愚かに見えたりするよね。
でもさ、本当に無理だったかなんて分からないじゃない?
ん~、そうだな。私の話をしてもいい?
……この店ね、お父さんのお店だったの」
「だった?」
「うん、私が17の時に事故で亡くなったわ。
お母さんはわたしが小さい頃に病気で亡くなって、ずっと二人で生きてきたの。だから本当に悲しかったなぁ。
私はまだ学生で、これでも結婚の約束をしてた人がいたんだよ?でもまぁ、親同士の繋がりなだけで、お父さんが死んじゃったらすぐにサヨナラされちゃったけどね。おかげで一人になっちゃった」
「……酷いな」
「よくある話だよ。でね、この店も売った方がいいって親戚に言われたんだ。でも私は絶対に嫌で。私が継ぐって宣言したわ。周りは呆れるやら笑うやら。知識も無い女に何が出来るんだって馬鹿にされた」
「……でも諦めなかったのか」
「うん。だってお父さんが大切にしていたお店よ?私が守らなきゃ!
だから、その年から薬学の勉強を始めて、ありがたいことに事故の相手がお金持ちで慰謝料をたんまりくれたからね。なんとか資格を取るまで頑張ることが出来たの」
「……すごいな」
「でしょ?で、今では二代目として立派に頑張ってるわ!
誰が馬鹿にしたってやってみなくちゃ分からない事ってあるのよ」


そうだろうか。こいつは努力する事が出来た。だから掴みとる事が出来たのだろう。でも俺は……


「俺はお前みたいに努力出来なかった」
「そうだね。だから勿体無かったの。勝負を挑めばよかったのに。相手の気持ちばかり気にしてないで舞台に上がればよかったのに。今のあなたでは負け犬の遠吠えにすらならないわよ」
「……辛辣だな」
「次はさ、相手の気持ちじゃなくて、自分の恋を大事にしてあげなさいな。あなたは自分を卑下し過ぎよ?」
「……違う。相手を思いやったんじゃなくて、自分が傷付くのが嫌だっただけだ」
「うん、弟が自分の恋人を好きになったと知って苦悩するお兄さんを見て、傷付くのが嫌だったんでしょう?」


どうしてお前が。誰もそんなこと言ってくれなかった。皆が俺を何もしない卑怯者だと罵ったのに。


「ガヴィーノは生きるのが下手くそね」
「……うるさい」


どうしてだ。どうして涙が止まらないんだ。
ダリアは何も言わず、優しく涙を拭ってくれる。

どうして、俺の事なんか……





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