ヤンデレ王子に鉄槌を

ましろ

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1.ヤンデレは何故逮捕されないのか

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まあ、どアップでも毛穴が見えないわ。

只今絶賛現実逃避中。
え?現実ですか?今、ベッドに押し倒されていますが。殿下が濁った瞳で薄ら笑いを浮かべながら私を押し倒しておりますが!?

「愛しいアリアネル。君が他の男を見つめるなんて許せない」

……何を言っているのかしら?
普通に生きていれば、男性と話をすることはあって然るべきこと。だって私は貴方の婚約者です。王子であるサフィア様の婚約者なのですよ!弁えた行動はしますが、偉い方達はみな男性です。顔を見ないなんて無理なのです!

「君は僕だけのものだ」

いえいえいえいえいえ!それも間違っております。私は私のものですよ私の主は私自身でございますっ!

「殿下?あの、いくら婚約者でも」
「サフィアだ」

近いから!このままではお口がくっついてしまいますわ!
慌てて顔を横に向ける。

「……逃げるの」

声のトーンを下げないでっ!どうしよう、どうしたらこの危機を回避できる!?このまま犯されてしまったら傷物令嬢だわ、いくら婚約者でも初夜よりも前に純潔を散らされるわけにはいきません!考えてっ、逃げ道はあるはず!

「君がデビュタントを迎えるなんて嫌だ。美しいドレス姿を誰にも見せたくない」
「…貴族の義務ですわ」
「このまま抱いてしまえば私だけのものだ」

イヤ─────っっつ!!!

アウトっ!それは犯罪ですっ!!

そうよ、この人は最初っから犯罪者だわっ!中学生が小学一年生を見初めたことがそもそもの間違いで!

……あれ……小学生って何?

カチッ

何かの鍵が開く音がした気がした。

そこから溢れ出たのはこことはまったく違う世界の記憶。自分が別の名前で呼ばれている。過去?未来?よくわからない。
科学が発展していて、男女平等がうたわれている。恋愛結婚が当たり前。え、なにそれ羨ましい……。
私はこんな変態なヤンデレに押し倒されて、身分のせいで強くも出れず、このまま犯されて閉じ込められて……


──こんなの、絶対に嫌だっ!!!


「……貴方は私を何だと思っているの?」
「アリアネル?」
「私は貴方の性欲処理の道具?それとも孕み袋?」
「……………ん?なんて?」

あら。私からそんな言葉が出るとは思わなかったのかしら。

「ヤリたいだけか、子供が欲しいだけかと聞いているのよ」
「なっ!違うよ、君を愛しているんだっ!」
「……嘘吐き。今、私の心を殺そうとしているじゃない。愛してるならそんなことするはずがない」

そんなのを愛だなんて言わないで。愛が穢れるわ。

「……違う、ただ君を私のものにしたくて」
「ほら。モノだって認めましたね」
「そうじゃなくてっ!」
「違うなら放して下さい」

冷たく言い放って視線を逸らす。だってもう顔すら見たくなかった。
それがいけなかったのか。

突然首筋に吸い付かれた。

「痛っ」
「ん。上手く痕が付いた」

……この野郎っ、キスマークを付けやがった!

「傷害罪です、殿下」
「違う、愛の証だ。それから呼び方も間違えてるよ」
「いいえ、殿下。は鬱血痕です。皮下失血です。怪我ですから傷害罪ですわ」

目を逸らすと何をされるか分からないので仕方なく睨み付けておく。

「……そんなふうに真っ直ぐに私を見つめるのは初めてだね」

くそう、喜ばせてしまった。

「まあ。不敬だと裁きますか?」
「まさか。もっと見つめて?」

誰か!変態がいますっ!ヘルプっ!

「……手が痛いです」
「ふふっ、まるで蝶の標本の様だ。ずっとここに飾りたいなぁ」

ヤンデレロリコンは死体愛好家なのか。

「要するに私の心は要らず、体だけをご希望なのですね。では、婚約の解消を求めますわ」
「君は私から逃げるのか?」
「はい。器しか必要としない貴方に私を捧げるつもりはございませんの」
「……本気で言っているのか」
「だって勿体無いでしょう?せっかくならば、私の体だけでなく、心を大切にして下さる殿方に添い遂げたいと思うのは当然のことでしょう」

だって変態だし強姦未遂だし監禁未遂だしロリコンだし。このままでは標本にされるか孕み腹か。

「今の心無い貴方様に、私を捧げる気はございません」

もっと早くに抵抗出来ていたらなあ。密室は大変不味いです。

「キスしていい?」
「死んでも嫌ですが?」

更にサイコパスと来たかっ!

これで王子だよ。どうするの?国が滅んじゃわない?滅んでもいいけど、その前に私を離せっ!
ドレスじゃなければ金的とか……いっそ、唾を吐きかける?……喜ばれたら泣いちゃうわ。

「婚約は続行だし結婚もするし処女も貰う」
「変態と身勝手を直さない限り、婚約破棄する一択です」
「片手だけで押さえ込めるのに?」
「………もしも、今から貴方が私を抱いても貴方のものにはならないわ。もし、膣が濡れても、それは体を守る為だし、万が一快感を得たとしても、ただの生理的反応なだけ。私の心は貴方を嫌悪しつづけ、いずれ何らかの方法で逃げてみせるから」

ヤラれちゃったら仕方がないわね。醜男じゃなくてラッキーだと思っておこう。

「困ったな。試したくてウズウズする」

失敗!?新しい扉を開けてしまったの!?
……変態のスイッチがさっぱり分からないわ。

「でも、君とこんな遣り取りが出来ると思わなかった。君の心か。……欲しいな」

えーっ。どうして興味を持ってしまうかな。面白い女枠というものなの?

「……それならば努力なさいませ」
「ふふ。じゃあキスしてもいい?」
「死んでも嫌だと言いましたが」
「あーんってして?」

いきなりディープなのをしようとするな!

手の力が緩んだ隙に彼の目を狙う。

「わお。眼球を抉ろうとする令嬢は初めてだ」
「監禁陵辱しようとする変態は初めてですので正当防衛が過剰防衛になっても仕方がないでしょう」

さすがに殿下も攻撃を避けるために離れたので、私も彼から距離を取れた。

「……本当だ。さっきまでの私は君を愛してはいなかったようだ。だって今はこんなにも胸が高鳴っている」
「私は只管に引いています」

王様、子育て間違ってますよ。さっさと再教育の為に引き取りに来て!

「味見もダメ?」
「論外です」
「仕方がないね。今日は諦め……あ!」

何?諦める気になったんじゃないの?

「コレをあげるよ」

そう言って、ご自分の耳に嵌っていたピアスを外して片耳分だけ渡してきた。美しいロイヤルブルーサファイアは彼の名前の由来であり、その瞳の色だ。
それをくれるって……ただの独占欲か。

「……私の耳は」
「うん。処女は諦めるから、耳に穴を開けさせてよ」

もうヤダ。何かしらの自分の証を付けたいの?

「……そうしたらそれ以上は何もせず、今すぐ家に帰らせて下さいますか」
「いいよ。待ってて、準備するから」

……変態だ。まごうことなき変態だ。ピアスホールで開放されるならば安いもの……なのかしら。もう何でもいい疲れた。

それから、殿下はいそいそと氷で耳朶を冷やし、ウキウキと耳に穴を開けた。

……痛い。地味に痛いわ。

「似合ってる。絶対に外さないで。外しているのを見つけたら1時間は耳朶を愛撫するから」
「絶っっつ対に外しませんっ」

何ならピアスキャッチを溶接しますよ!

何とか部屋から出してもらえた。
彼の瞳と同じ色のロイヤルブルーサフィアがとても重たく感じる。

「婚約破棄……絶対にしてやるんだからっ!」








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