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20.幸せの代償
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「はじめまして。ご挨拶が遅くなって申し訳ありません。セレスティーヌさんと結婚致しましたトリスタン・エクトルと申します。陛下の護衛騎士をさせていただいております」
建国記念日前日。セレスティーヌのご家族が到着した。とりあえず心臓がバックバクだ。
陛下からの無茶振りは本当に良くないと思う。
だってね、本当に突然だったんだよ。
「トリスタン、今から3時間程護衛は交代だったよね」
「はい?」
「ほら、セレスティーヌのご家族が到着する頃だろう?」
「はい?!」
絶対に此の間の仕返しだ。確かにご家族がいらっしゃるのは知ってたさ。でも、正確な日時なんて知らされてないから!ついでに言えば、護衛を抜けるのも知らんかったぞ。
心の準備が……俺の立ち位置ってどんな感じなんだろうね。
セレスティーヌは母親似なのかな。亡くなったとしか聞いていないけど、父親似では無い。弟君は父親似で妹さんはセレスティーヌに似てる。陛下に会わせたら危険案件?嘘ですごめんなさい。
「え?!あ、いや、その!セ、セレスティーヌが大変お世話になっております」
あー、めっちゃ慌てていらっしゃる。仮夫が案内人として来るとは思っていなかったようだ。
「セレスティーヌは離宮で暮らしております。ご案内しますね」
弟妹も固まり気味だし、話を聞ける雰囲気ではない。とりあえず、案内人の仕事をしよう。
歩きながらチラリと皆さんの様子を見る。
陛下からは十分にお金を貰えてるみたいだ。3人とも控えめだけど、王宮に来るのに見合った服装だ。デビュタントの時のセレスティーヌとは違う。
「あの!あなたが姉様の旦那様なんですか?」
旦那様!素敵な響き………
「うん、そうだよ」
え、いいよね。嘘じゃないよね。
「じゃあ、お義兄様って呼んでもいいですか?」
お義兄様だなんて!ちょっ、認めて貰えちゃったよ?!
「私はエルミニアです。10歳です。エルって呼んでください!」
「おい」
「あ、こっちが兄のレジェスで14歳。レジェスでもレジーでもお好きに呼んでいいですよ!」
ハキハキと元気で可愛いな。エルのおかげで少し皆の緊張が和らいだ。
「ありがとう、エル。レジェスもよろしくな」
「……はい」
駄目か。よかった、愛称で呼ばなくて。
それでも、部屋に着くまでエルがたくさん話してくれたから、気まずい空気にはならずに済んだ。感謝!
「セレスティーヌ、入ってもいいか?」
返事より先に扉が開く。ずっと待っていたのだろう。
「お父様、レジーにエルもっ!」
「セレスティーヌ!」
「「姉様~~っ!」」
だよなぁ。元気に振る舞ってたけど、ずっとセレスティーヌのことが心配だったのだろう。俺は外で待っていた方がいいかな。
「トリスタン、ありがとう。まさか貴方が案内してくれるとは思わなかったわ」
ソッと出ようと思ったのに、あっさりとセレスティーヌに捕まった。
「陛下から3時間程休憩を頂けたんだ」
15分前連絡だったけどね!
「…………そう」
あ、怒ってる。セレスティーヌも聞いていなかったようだ。
「姉様、お姫様みたい!すっごく綺麗!ね、父様」
「……そうだね。大切にして頂けているようで安心したよ」
「姉様!あのさ、あの……姉様は、今、幸せ?」
レジェスからの質問は皆が思っていることなのだろう。
頑張って明るく話すエル。安心と諦めの混ざったお義父上の笑顔。どこか辛そうなレジェス。
皆セレスティーヌを心配しているのだ。
「俺さ、学園に通えるようになった。服や学用品も新品が届いて、だから寮での生活も全然困らなくって。週末に家に帰ると、屋敷の修繕が始まってて、帰るたびにどんどん綺麗になってるんだ……正直嬉しいよ。でも、心から喜べない。学園で姉様のことを聞いたんだ」
「……なんて言われているの?」
「大丈夫、悪口じゃないよ。あの陛下に愛されているなんて、素敵なお姉様なのねって。その子もお城で勤めてるご両親に聞いたみたい。陛下がとても大切にしてるって」
「……そう」
「でも、本当に?姉様は他の縁談の話が来てたよね?それなのにいつの間にかその人と結婚してるし、王宮で暮らすっていうし、陛下の……えと、アレだし」
「レジェス、止めなさい。その話はもう終わっただろう」
「嫌だよ。姉様から聞かないと納得できない!」
そうだよな。納得出来るはずがない。でも。
「レジェス、落ち着いて。エルが怖かってるよ」
「あっ、ごめんエル」
優しい子だなぁ。家族をとても大切にしているのだろう。だから、裕福な暮らしを手放しで喜べない。
「ほら、せっかくのお茶が冷めてしまう。このお菓子も美味しいよ。セレスティーヌが好きなやつなんだ」
「……はい、ありがとうございます」
「エルもおいで。一緒に食べよう」
「……ありがと、義兄様……」
ようやく全員座り、お茶で心を落ち着かせる。
でも無言。そうだよね、勇気を出して聞いたのに、一度止められたらもう一度聞くのは難しいよね。
ここは止めた俺が頑張るべきだよな。
「あの、セレスティーヌは婚約していたのですか?」
ごめん、これが一番気になったんだ!先に聞かせてくれ!!
建国記念日前日。セレスティーヌのご家族が到着した。とりあえず心臓がバックバクだ。
陛下からの無茶振りは本当に良くないと思う。
だってね、本当に突然だったんだよ。
「トリスタン、今から3時間程護衛は交代だったよね」
「はい?」
「ほら、セレスティーヌのご家族が到着する頃だろう?」
「はい?!」
絶対に此の間の仕返しだ。確かにご家族がいらっしゃるのは知ってたさ。でも、正確な日時なんて知らされてないから!ついでに言えば、護衛を抜けるのも知らんかったぞ。
心の準備が……俺の立ち位置ってどんな感じなんだろうね。
セレスティーヌは母親似なのかな。亡くなったとしか聞いていないけど、父親似では無い。弟君は父親似で妹さんはセレスティーヌに似てる。陛下に会わせたら危険案件?嘘ですごめんなさい。
「え?!あ、いや、その!セ、セレスティーヌが大変お世話になっております」
あー、めっちゃ慌てていらっしゃる。仮夫が案内人として来るとは思っていなかったようだ。
「セレスティーヌは離宮で暮らしております。ご案内しますね」
弟妹も固まり気味だし、話を聞ける雰囲気ではない。とりあえず、案内人の仕事をしよう。
歩きながらチラリと皆さんの様子を見る。
陛下からは十分にお金を貰えてるみたいだ。3人とも控えめだけど、王宮に来るのに見合った服装だ。デビュタントの時のセレスティーヌとは違う。
「あの!あなたが姉様の旦那様なんですか?」
旦那様!素敵な響き………
「うん、そうだよ」
え、いいよね。嘘じゃないよね。
「じゃあ、お義兄様って呼んでもいいですか?」
お義兄様だなんて!ちょっ、認めて貰えちゃったよ?!
「私はエルミニアです。10歳です。エルって呼んでください!」
「おい」
「あ、こっちが兄のレジェスで14歳。レジェスでもレジーでもお好きに呼んでいいですよ!」
ハキハキと元気で可愛いな。エルのおかげで少し皆の緊張が和らいだ。
「ありがとう、エル。レジェスもよろしくな」
「……はい」
駄目か。よかった、愛称で呼ばなくて。
それでも、部屋に着くまでエルがたくさん話してくれたから、気まずい空気にはならずに済んだ。感謝!
「セレスティーヌ、入ってもいいか?」
返事より先に扉が開く。ずっと待っていたのだろう。
「お父様、レジーにエルもっ!」
「セレスティーヌ!」
「「姉様~~っ!」」
だよなぁ。元気に振る舞ってたけど、ずっとセレスティーヌのことが心配だったのだろう。俺は外で待っていた方がいいかな。
「トリスタン、ありがとう。まさか貴方が案内してくれるとは思わなかったわ」
ソッと出ようと思ったのに、あっさりとセレスティーヌに捕まった。
「陛下から3時間程休憩を頂けたんだ」
15分前連絡だったけどね!
「…………そう」
あ、怒ってる。セレスティーヌも聞いていなかったようだ。
「姉様、お姫様みたい!すっごく綺麗!ね、父様」
「……そうだね。大切にして頂けているようで安心したよ」
「姉様!あのさ、あの……姉様は、今、幸せ?」
レジェスからの質問は皆が思っていることなのだろう。
頑張って明るく話すエル。安心と諦めの混ざったお義父上の笑顔。どこか辛そうなレジェス。
皆セレスティーヌを心配しているのだ。
「俺さ、学園に通えるようになった。服や学用品も新品が届いて、だから寮での生活も全然困らなくって。週末に家に帰ると、屋敷の修繕が始まってて、帰るたびにどんどん綺麗になってるんだ……正直嬉しいよ。でも、心から喜べない。学園で姉様のことを聞いたんだ」
「……なんて言われているの?」
「大丈夫、悪口じゃないよ。あの陛下に愛されているなんて、素敵なお姉様なのねって。その子もお城で勤めてるご両親に聞いたみたい。陛下がとても大切にしてるって」
「……そう」
「でも、本当に?姉様は他の縁談の話が来てたよね?それなのにいつの間にかその人と結婚してるし、王宮で暮らすっていうし、陛下の……えと、アレだし」
「レジェス、止めなさい。その話はもう終わっただろう」
「嫌だよ。姉様から聞かないと納得できない!」
そうだよな。納得出来るはずがない。でも。
「レジェス、落ち着いて。エルが怖かってるよ」
「あっ、ごめんエル」
優しい子だなぁ。家族をとても大切にしているのだろう。だから、裕福な暮らしを手放しで喜べない。
「ほら、せっかくのお茶が冷めてしまう。このお菓子も美味しいよ。セレスティーヌが好きなやつなんだ」
「……はい、ありがとうございます」
「エルもおいで。一緒に食べよう」
「……ありがと、義兄様……」
ようやく全員座り、お茶で心を落ち着かせる。
でも無言。そうだよね、勇気を出して聞いたのに、一度止められたらもう一度聞くのは難しいよね。
ここは止めた俺が頑張るべきだよな。
「あの、セレスティーヌは婚約していたのですか?」
ごめん、これが一番気になったんだ!先に聞かせてくれ!!
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