好きになれない

木原あざみ

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好きになれない3

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 カレーの匂いがする。三週間の教育実習を終え、疲弊した身体に鞭打って階段を上っていた足が止まった。

 ――なんか、帰って来たって感じ、するなぁ。

 実家どころか、一人暮らしをしているアパートですらないけれど。重くなった足を持ち上げて階段を上り切る。顔を上げれば、目的の部屋の明かりが見えた。

「た、ただいま……帰りました」
「お帰り」

 ドアノブを捻ると、間仕切りのない室内は奥まで見通すことができる。ローテーブルの上でパソコンを開いている見慣れた姿に、自然と力が抜けた。

「なんでそんなに敬語?」
「そういえば、いつも『こんばんは』とか『お邪魔します』だったなと思って。でも、今日は『ただいま』が言いたい気分だったんですけど、途中で負けました」
「なにに負けたの」
「なんだろう……俺?」

 要領を得ない答えに真木が小さく笑って、パソコンを机の脇に退けた。珍しい。いつも俺が来ようが来るまいが、そのままなのに。

「日和。晩飯は? もう外で食べてきた?」
「あ、……いえ、まだですけど」

 帰ってきたい一心だったので思い付きもしなかった。駅に着いたのが八時前だったので、八時十五分くらいだろうか。わからないが、時間を確認するためにスマートフォンを取り出すのも億劫だ。日和は荷物を置くなりローテーブルに突っ伏した。

「お疲れだな。飯、食うか?」
「あるんですか?」

 ぱっと日和は顔を上げた。かち合った瞳が和らぐ。

「カレー」
「カレー……」
「食べたいって言ってなかった? おまえ」
「真木さん」
「なに」
「好きです」
「あ、そう。なら、なにより」

 いや、カレーじゃなくて。なんて、べたなことを言い繕うとは思わない程度には、嬉しかった。



「おまえ、実家でおふくろの味を堪能してきたんじゃなかったのか?」

 日和の食べ終わった食器を洗いながら、真木がさも不思議そうに問いかける。片付けくらいはすると言ったのだが、真木に座ってろと一蹴されてしまった。

 ――とは言え、さすがにこの状態は落ち着かないのだけれど。

「あー……、それはそれ、というか」
「こっちが懐かしくなったって? 重症だよ、おまえ、それ」

 水の音が止まる。やっぱり、立ち姿、きれいだなぁ。背中をぼんやりと見つめながら、そんなことを思った。

「紅茶、飲む?」
「飲みます。すみません、なにからなにまで」
「甘えられるときは、甘えておけばいいよ」

 なんでもないことのように真木は言う。この人は本当に、人を甘やかすのがうまい。

 ――これに慣れたら、いつか痛い目見そうだな。

 俗に言う、幸せ過ぎて怖いというやつなのかもしれない。今まで年上と付き合ったことがない所為かもしれないが、こういった経験はあまりなかったのだ。

「それで、どうだった? 実習は」

 紅茶に口を付けて、一息。日和は目まぐるしかった三週間に思いを馳せた。

「疲れましたけど。最後に、担当してたクラスの子たちから寄せ書きももらって。手紙とかくれた子もいて。ちょっと嬉しかったです。じーんと来ました。たった三週間だったのに」
「それだけ日和がちゃんと頑張ったからだろ」
「授業がうまくできた自信はないんですけどね」

 つい卑下してしまうのは、褒め慣れていないからだ。この一年、真木から折を見て褒めてもらっている自覚はあるが、それはそれだ。

「でも、頑張ったは頑張りました」
「だろうな」
「あとは、そうだな」

 生徒たちからの連絡先を教えてください攻撃も全て交わし切った、とか。実習生仲間だった女子からの「飲みましょうよ」というお誘いが止まない、だとか。結局、俺は顔だけか、だとか。
 つぼみの比じゃない人数の子どもをひとりで見るのは恐ろしいな、とか。恵麻たちはもちろんかわいいけれど、三週間で母校の生徒たちもかわいく見えてきたこと、とか。
 流されるがままに選んだ教育学部だったけれど、自分の意志で教職を選びたいと思えるようになってきた、だとか。

「俺じゃないんですけど。事前にきつく言われてたのに、SNSでやらかしたやつがいて。俺らも説教食らいました」

 ツイッターに先生の実名付きで愚痴を書いたやつがいたんですよ、と日和が言えば、真木も笑った。

「まだ生徒の名前じゃなくてよかったな」
「本当にそう思います」

 どちらにせよ、信じられない話だ。教育実習に来る大学生の全てが教師の道を目指しているわけではないことは承知している。けれど、校内にいる間は「そう」でなければならないはずだ。

「あの、つぼみは」
「ん?」
「みんなの様子はどうですか?」
「凛音は、ここ一週間ほど来てないかな」

 真木の口調は淡々としていたが、予想外だった内容に日和は瞳を瞬かせた。

「大丈夫なんですか」
「どうだろうな」

 言葉を止めた真木の視線が上向いて、手元に落ちる。

「紺は頑張って通ってるみたいなんだけどな」
「それは……なによりですけど」
「うん。でも、凛音にとったら、大きな変化だろ。今まで――小二のころからずっと、兄貴と一緒にうちに通っていて。それが当たり前だったんだから」
「小二か。長い、ですよね」
「こういう言い方はあんまり好きじゃないけど、なんとなく不登校は、根が深いな。香穂子ちゃんみたいにいじめで頓挫した子は、新学期とか、転校とか、受験とか、そういう転換期にうまく乗れば、早くに復帰できたりもするんだけど」

 それも、わからなくもない。日和はそっと溜息を押し隠した。

「でも、避けて通れないものだし。乗り越えられたら、また変わるだろうけど、乗り越えられなくても大丈夫だよ」

 首を傾げた日和に、気負いもなく真木が言う。

「俺や優海さんは、ずっと同じところにいるし。つぼみはあの場所にあるし。だから」

 安心したらいい、と。続いた言葉に、鼻の奥がツンとした。疲れてるのかもな。そう思うことにして、小さく頭を振る。その動きをどう取ったのか、真木がさらりと話を変えた。

「そういや、雪がさ」
「雪ちゃん。どうかしたんですか」
「どうかしたっていうわけじゃないけど。なにを思ったのかいきなり、ぴよちゃんといい小山内さんといい、火曜日に男の子を入れるのはまきちゃんの趣味なの、とか言い出して」
「はは」

 乾いた笑いが出てしまった。
 小山内というのは、つい先月から火曜日にボランティアスタッフとして入ってくれている大学二年生の青年だ。

「日和の前は塩見さんだっただろうが、と思ったんだけど。そのころ、あいつはあんまり来てなかったから記憶に薄いんだろうな。まぁ、それはそれでいいんだけど。小山内くんがさ。その発言を聞いて固まるから。こっちもなんか悪いことした気分になるし。おまけに、まずいと思ったのか、今度はすげぇ罪悪感たっぷりな顔で見てくるし」
「それは……」

 なんともコメントを残しがたい。同じ場所にいなくてよかったと日和は思った。うっかり動揺を顔に出そうものなら目も当てらない。

「あの子はあの子で素直だよな。犬みたい」
「はぁ、まぁ。俺はまだ二回くらいしか会ってないんで、よく知らないですけど」
「かわいいよ。まだちょっと肩に力は入ってるけど、頑張ろうっていう意思は伝わってくるから」
「へぇ」
「そう思うと、日和はわりと最初から、あんまり肩に力が入ってなかったんだよな。良くも悪くも、無理に好かれようともしていなかったというか」

 それはたぶん、俺に主体的なやる気がなかったから、なんだろうな。よく見られたい、とか。好きになってほしい、とか。

「子どもって、そういう匂いをかぎ分けるから。自然体な相手のほうが落ち着くんだろ。まぁ、小山内くんも徐々に抜けていくだろうけど」
「へぇ」

 連続した気のない相槌に、真木が言葉を止めて笑った。

「なに。妬いたの、おまえ」
「……悪いですか」
「そりゃ、おまえより、まだ慣れてない子を気に掛けるに決まってるだろ」

 いや、そうじゃない。そうじゃなくて。言い募りたい欲求を日和は呑み込んだ。わざと明後日な方向を示されているのではないかとの疑惑が湧いたからだ。

「日和が来た当初も優しかっただろ、俺」
「そういえば、そうでした。時岡さんも言ってたっけ」

 真木さんはぴよちゃんさんには特別に優しいらしいって聞きましたよ、とかなんとか。

「辞められたら、困った?」
「まぁ、それもあるな。連絡もなしにいきなり来なくなられたら、予定も狂うし、なにより生徒に説明しにくい」
「ですよね」

 わかり切っていたはずなのに、期待した自分が浅はかだった。

「それに、おまえ。初日の朝に入って来たとき、あからさまに面倒臭そうだったし。塩見さんに半ば無理やり押し付けられたんだろうなって想像も付いたし、どうかなと思ってたんだけど」

 気が付かれていたのか。いまさらながらの新事実に、日和は居た堪れない心地を味わった。なんだ、それ。恥ずかしい。

「中に入ってみると、案外、真摯というか。生徒相手には面倒臭そうな顔は一回も見せなかったし。要領悪く押し付けられたのも事実なんだろうけど、根が真面目ないい子なんだろうなって思ったよ」
「あ、ありがとう、ございます」
「あきが珍しくすぐに懐いてたし、これは二回目で来なくなったら、あきがしょぼくれるなと思って。必要以上に丁寧に接した自覚はある」
「あれで?」
「あれで」

 なんて雑な対応だと思ったのは一度や二度ではなかったのだが、違ったらしい。

 ――もしかして、塩見さんたちが口を揃えて、ぱっと見は怖いでしょ、って言っていたのって。本来だったら、もっと口数が少ない人だから、だったのかもしれない。

「なんか、一年と少し前のことの話なのに」
「ん?」
「懐かしい、というか、もっとずっと昔のことみたいにも思えて、不思議」

 一年前の今頃、なにをしていただろうか、と記憶を辿って。ちょうどあの頃だったと思い至った。キャンプの前。はじめて真木以外のスタッフと顔を合わせて、初めてふたりで夜の道を歩いた。

「――俺は」

 ふ、と真木の視線が逸れたように思った。日中は蒸し暑く感じることも増えたが、夜になると涼しい風が入り込んでくる。その風が重たいカーテンを持ち上げようとしていた。

「つい昨日みたいにも感じるけどな」
「真木さん」

 意識していなかったはずなのに、物欲しそうな声になっていた。こちらを見てほしい。ずっと、自分を見ていてほしい。ずっと。過たず、その瞳が日和を捉える。仕方ないな、と。すべてを許すように光彩が緩む。その瞬間が好きだった。

「入ってきな、先に」

 胸の真ん中が熱くなる。表情のつくり方がわからず俯いたまま日和に、「寂しかったんだ?」と揶揄うように真木が言う。いつだったか、壁の向こう側を気にしながら、電話越しに囁いた台詞。

「寂しかったですよ」

 たった、一年のことなのに。あなたとすぐに会えない距離はたまらなく寂しい。それが俺だけでなければいいのにとも思うけれど。

「寂しかった」

 俯いたまま紡ぐ。隠し切れない熱が帯びていた。頭が上下に揺れる。真木の手だと気が付いたときには、離れていったあとだった。子ども扱いされているとわかっているのに、嫌だと言えない。

「お風呂、お借りします」

 前髪を手櫛で押さえて、立ち上がる。緊張しているのも自分だけみたいで、それが少しだけ癪だった。



 はじめての夜が、――はじめてこの部屋で受け止めてもらったときが嘘のように、この人とのセックスは、清く正しく、静かだ。
 そんなことを言えば、この人に「男同士で清くも正しくもあるか」と一笑されるだろうから言わないけれど、でも、そうだと思う。例えば、後にも先にもシャワーを浴びることだとか。例えば、そのときに絶対に一緒に入らせてくれないこと。例えば、事前の準備だとか、そういったことも全部、ひとりでしてしまうこと。ベッドに入る前に、電気を必ず消すところ。
 前戯もなにも、必要ないと言うところ。

「真木さん、あの」

 日和は、キスが好きだ。ということを、真木とこういったことをするようになってはじめて知った。唇や首筋や目じりや指先。本当は身体のいたるところに口付けたい衝動に駆られることもあるのだけれど、制止されて終わる。
 ほら、今日もだと思う。日和が求めていることをわかっていて、それでいて、やんわりと押し流すのだ、いつも。

「いいよ。そんなに気を使わなくて」

 そういう、ことじゃなくて。言いたい言葉は喉で消える。伝わらないことを知ったからだ。俺がしたいだけなんです、と訴えたのは、二回目のときだった。そのときも「キス、好きなんだ」と静かに笑って、それだけだった。ひたひたと這い上がってくる不安と孤独を押しやって、眼を閉じた。手のひらから伝わってくる体温に縋るように。

「女の子じゃないんだから、好きにしたらいい」

 日和だって、誰かと肌を合わせることがはじめてなわけではない。慣れていると豪語できるほどの経験数はないけれど、人並みにはあると思う。男と女とは違うということも、わかる。でも、それは表面的な、皮一枚の問題ではないかとも思うのだ。優しくすることに、大事にすることに、性別なんて関係ない。
 それなのに、真木は聞く耳を持たない。真面目だな。あるいは、いい子だな。そんな一言で受け流す。

「そういうのが、多いの」

 たまらなくなって絞り出した問いに、肩が揺れる。

「おまえ、それをここで聞くのはマナー違反だろ」

 そして、こんなときにばかり、キスをしてくるのだから、やってられないと思う。本当に、そう思う。なのに、それ以上を問えない。
 これは、本当に「恋」が成就したものなのだろうか。そんな簡単なはずのことすら、わからなくなる。

「っ、真木さん」

 だから、必死になって囁くのかもしれない。

「好き」

 いつか、届くと思って。あるいは、届いていることを確信したくて。

「好きです」

 宥めるように、その指先が肩を掴む。抱きしめられる体温に、溺れてしまいたかった。
 最中に、この人の声を聞いたことはない。押し殺した吐息や、快楽にあえいでいるのか苦痛を訴えているのか、判別の効かないような短い声がときおり漏れる程度だ。早く終われと思っているのか、セックスを義務だと思って付き合ってくれているのか、それとも、行為自体は嫌いではないから相手をしてくれているのか。日和にはわからない。わからないけれど、ただ、ふと思うのだ。それでも、と。
 この人のセックスは、清く正しく静かで、そして、いびつだ。
 叶うわけのない一時の夢に溺れているような、そんな気分になることがある。満たされているはずなのに、泣きそうになる。まるで、明示されていた終わりに気が付いたみたいに。

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