上 下
7 / 20

ミラの1日

しおりを挟む
王宮で暮らすようになって10日、そろそろ、ここの生活にも慣れてきました。
私達一家は、王様が ちょっとでも私と離れると不安になると言って、王族扱いとして、王族のプライベートエリアで一緒に暮らすことになりました。
私達家族にも、広々とした部屋が与えられました。
両親の寝室、リビング、父様の書斎、客室が3つ、この内2つはユーリと生まれてくる弟の為の部屋になります。
部屋にはそれぞれ、バス、トイレ、クローゼットが付いていて、一部屋、一部屋がとっても広く、とっても豪華でした。
そして、私の部屋は、王様との続き部屋である王妃の間が与えられました。
王様の部屋に繋がる扉は、勿論、今は しっかりと、鍵が掛けられています。
私達も、一応 裕福な貴族家ではありますが、たかが伯爵家、王族とのレベルの差は大きく、月とスッポン、こんな贅沢な生活、バチが当たりそうで怖いです。
私の1日は、午前中は自分の勉強、午後は、王様の仕事のお手伝い。
そして、朝、昼、夜の食事を王様と一緒に頂く事になっています。
前世の記憶があるせいか、私は、スケジュールどうりに生活しないと、気持ちが悪くて、何だか落ち着かないのです。
あと、効率良く、生活を整える事がとっても大切なのです。
自分で言うのもおこがましいですが、私は前世、大企業の社長秘書でした。それも、結構 優秀な人間だったので、王様の仕事の段取りの悪さに、少々辟易しているのです。
二度手間だったり、ダブルブッキングしてたり、予定に大きな穴が空いていたり、緊急の書類が後回しにされていたり、よくこれで、あの大量の書類を捌けていたものだと、呆れてしまいます。
いや、逆に、夜中まで仕事をやっている彼等は、超真面目な人達なのでしょうか?
とにかく、私は、少しずつ王様の仕事を手伝う事にしました。
王様の膝の上で、私も一緒に、書類に目を通します。
ここ、間違っていると言って、誤字 脱字を見つけたり、ここの計算合ってないよと言って、計算間違いを、見つけたり、この書類かぶってる、さっきのと同じ内容じゃないのかなと言って、既に終わっている書類を指摘したり、一緒にいるカーシル様が、ビックリして、私をみています。
「ミラ様は天才ですか?」
そう言って、さり気なくこちらの書類を増やしてくる。
アレ?ちょっとやり過ぎちゃったかな?
でも、このままじゃ王様達、毎日 寝不足だよね。
お手伝い出来るのならしたいんだけどな···
心の中でそう思っていたら、
「ミラ」
王様が私を呼ぶ。
そして、私と視線を合わせるように、私の身体の向きを変えました。
何かな?
私の目をじっと見つめる王様。
見つめ返す私。
何だか、恥ずかしくなってくる。
「どうしたの?王様。」
「ミラ。君は天才だな♡」
ガクン···何ですかそれ···
真面目に見つめるから何かと思うじゃないですか。
天才だ、天才だと、皆にチヤホヤされたその日の夕食後、私は王様に夜のお散歩に誘われました。
何でも、温室に夜しか咲かない素敵な花があるそうです。
何それ、『月下美人』みたいなやつかしら?見たい♡
「行く!」
そう言って、王様と手を繋いで 温室に向います。
王様は、抱っこしようとしましたが、それでは散歩にならないと、お断りしました。

外の空気は少しひんやりとしてたけど、寒いと言う程ではありません。
ランプで灯された遊歩道を温室に向かって歩いて行きます。
10分程歩くと、月明かりに照らされた、二階建てくらいの高さの温室が見えて来ました。
温室の中は、暖かくて、緑の濃い匂いがしました。
奥に行く程、甘い匂いが強くなります。
「あの花をミラに見せたかったんだ。」
そう言って、王様が案内してくれたそこは、甘い匂いを強く放つ、大きな白い花が咲いていました。

その形は、前世で見たことのある(図鑑でね)ラフレシアみたいな形だけれど、その色はぜんぜん違っていて、薄い水色の肉厚な葉っぱの上に、真っ白な大きな花が美しく咲き誇り、淡く光を放っています。
まるで、繊細なガラス細工のようで、キラキラと輝いて、とっても綺麗です。
「すごい、キレイ···」
「気に入ったか?」
「うん、とってもキレイ。教えてくれてありがとう、王様。」
あれ?何か物凄く見られてる?
「王様?」
何だろう?コテンと首を傾けて、王様を見ました。

「ーーーーミラはただの子供じゃないよね。」
ギクッ!!心臓が跳ねる。
「前世持ちか?」
バレた?!
「あの·····」
冷や汗が流れます。
なんて答えればいいのかわからない。
「あぁ···心配しなくていい。どんなミラでも私の【番】である事に変わりはない。私は一生君を愛するよ。」
「王様、何でわかったの?」
「私は【番】だから、君の事なら全てわかるよ、というのは冗談だけれど···」
このタイミングの冗談なんて、笑えないから···
私は警戒レベルを1つ上げました。
王様はそんな私を見て、
「あぁ 安心して欲しい。問い詰めたい訳じゃ無いから。」
「私はね、神から王に選ばれた時、『賢者の目』を与えられたんだ。だから、君の瞳を見れば、君の本質が見えるんだ。君の心はもう大人だよね。」
そう言って、王様はじっと私の目を覗き込んだ。
「『賢者の目』?じゃあ 王様は目を見た人の考えも全部わかっちゃうの?」
「さすがにそこまでは見えないよ。
ただ自分に対して悪意を持っているのか、好意を持っているのかくらいはわかるかな。」
「すごい、便利だね。」
「はは···確かに便利だな。」
そう言って、王様は私から視線を外して笑った。

「この事はカーシル達は知らないから、内緒にしてくれるかな?」
「え?!皆 知らないの?私、聞いちゃって良かったの?」
「ミラには知っていて欲しいかな?君には私の全てを教えたいよ。それにミラは言いふらしたりしないだろう?」
「それは、まぁ、人様の秘密をそう簡単にバクロしたりしないけど···」
「それに、私だけが ミラの秘密を知っているのは、不公平だろう?」
「別に気にしないのに、王様だって、そんなに簡単におしゃべりしないでしょ?」
「あぁ そうだな。でも、二人の秘密を共有出来て、私は嬉しいよ。」
そう言って、王様はとろけるような笑顔を私に向けた。
何その笑顔。
なんだか ドキドキするんですけど···

「さぁ、そろそろ戻ろうか、遅くなるとロベルト達が心配するから···」
「はい。」
そう返事をして、王様に両手を伸ばしました。
抱っこのおねだりです。
「ミラ···」
嬉しそうに私の名前を呟いて、ふんわりと私を抱き上げてくれました。
「王様、私の事 内緒にしてくれて、ありがとう。」
「私の方こそ、内緒にしてくれて、ありがとう。」
そう言って、2人ニッコリと微笑み合いました。
「明日から又、お仕事 頑張ろうね、王様。」
「あぁ、ミラがいてくれるだけで、頑張れるよ。」
そう言って、私のほっぺたに頬ずりする王様。

近い!近いです!

まぁ···今日はいいか···

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

遥かな星のアドルフ

SF / 連載中 24h.ポイント:200pt お気に入り:1

短い物語P&D『starting over』

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,991pt お気に入り:3,015

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,932pt お気に入り:17

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:447pt お気に入り:584

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

BL / 完結 24h.ポイント:3,282pt お気に入り:2,626

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,051pt お気に入り:309

漫才の小説

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:9,656pt お気に入り:1

処理中です...