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お茶会〜子供にヤキモチ焼かないでください〜

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今日は、王宮に出入りを許されている、貴族の子供達を集めての お茶会です。

集められた子供は、学園へ上がる前の5才から9才までの子供達で、これも、社交のお勉強なのだそうです。

年が上の子供達は、今までに、何度もお茶会を経験しているので、もう、既に派閥(仲良しグループ)が出来上がっているようで、私や他の5才になったばかりの子供達は、所在無く、なんとなく不安な様子でいました。

殆どの子供は母親と一緒に来ているようで、お母様方は、お母様方で、お話に花を咲かせているようです。

しかし、今日のお茶会の目玉は 私!
王様が【番】を見つけた事は、既に王宮に広まっており、それが まだ たった5才の幼女だと言う事も、皆の話題になっているようです。

そんな【番】の私が、今日のお茶会に参加すると言う事で、子供達だけでなく、その親も多くやって来て、いつもの倍くらいの人数になっているようです。

私、まるで見世物のようですね。
父様と2人、会場に入った時から、こちらに向く視線が痛いくらいです。
母様は、お腹が大きいので、今回は父様に付いて来てもらいました。
友達出来るかな?
大丈夫かな?
チョット、ドキドキしています。

「あなたが、竜王様の【番】?」
突然 後ろから声をかけられて、振り向くとそこには、私より2~3才年上の、クルクル巻いたピンクの髪をハーフアップにした、金の瞳の女の子が、私に向かって、ふん!と鼻を鳴らしました。
頭の上で、可愛い三角の耳がピクピクしています。
猫獣人さんでしょうか?
金色の瞳は、獣目で、縦に細くなっています。

あーーー  これ、あきらかに マウント取りに来てますよね、面倒臭いなーーー。
そう思いながら、父様にチラリと、視線を向けると、ニコニコと愛想笑いを顔に貼り付けて、ガンバッテ!と、声を出さず、口をパクパクさせて応援されました。

父様、助けてくれないんですね···
これも、社交の一貫、しょうが無い。
私は、彼女に向き合って、ニッコリ笑って、挨拶をしました。
「はい、お初にお目にかかります。ミラ-スミスと申します。どうぞ、宜しくお願い致します。」
そう言って、とっておきのカーテシーをしました。

私の完璧な挨拶に、周りの大人が感心したように、
「まだ、小さいのに···」
「しっかりしたお嬢様ね···」
とか、褒めてくれる言葉が聞こえてきます。
ピンク頭の女の子は、私の完璧な挨拶に嫌そうな顔をして、
「私は、ジュリア-ロクウェル、ロクウェル公爵家の長女よ。」
そう言って、ふんぞり返りました。
身分を自慢されているのでしょうか?
困惑しかありません。
この後、私はどうすればいいのかしら?

嫌な間があいて、どうしようかな?と、頭を悩ませていたら、向こうの方が、急にざわついて、何だか黄色い悲鳴まで聞こえてきます。
何だろう?と思って、そちらに目を剝けると、王様がこちらに向かって歩いて来るのが見えました。
「へ?!王様?」
「ミラ、会いたかった。」
そう言って、あっという間に王様は私を抱き上げて、そっと、私の頬を撫で、額にキスをしました。
それを見た周辺から、またしても、
「キャーーーー!!!」
と、悲鳴が上がります。

いや、いや、いや、さっき、一緒にお昼ご飯食べましたよね。あれから、まだ、2時間くらいしかたってないですよね。
そうしているうちに、私と王様は、周りを子供達や、その母親に囲まれてしまいました。
皆様、まるで、アイドルに群がるファンのようです。
しばらく、キャアキャア 騒いでいた皆様も やっと淑女としての落ち着きを取り戻し、それぞれ テーブルに着いて、お茶会が始まりました。
私は、安定の王様の膝の上です。
恥ずかしい。

あーーー、私の淑女教育の成果が台無しになってゆきます···

取り敢えず、同じテーブルに着いた子供達と挨拶を交わし、取り留めのない会話を交わしていきます。
私のテーブルには、私と王様の他に、女の子が3人、男の子が4人。
それぞれ、年齢もばらばらでしたが、私は5才で、一番年下になるので、皆、お兄様、お姉様です。
少し、会話もして、場が和んでくると、皆 興味津々で私と王様に質問するようになって来ました。

「まぁ、では、陛下との出会いは王宮でしたの?」
さっき、私にマウントを取りに来た、ロクウェル公爵令嬢様が質問されました。
「ええ、そうですの。父の執務室に来ていて、偶然知り合いましたの。」
「まぁ、運命の出会いですのね。陛下はすぐにミラ様の事が【番】だと、わかったのですか?」

今度はキラキラとその金の瞳を輝かせて、王様に質問しています。
「ミラはとても甘い匂いがするからな。すぐにわかったとも。」
チョット、王様!匂いで認定なんてやめてーーー!恥ずかしすぎる!
「1日も離れていられないと言うのは、本当ですか?」
「もちろんだ、本当なら1日中一緒にいたいくらいだ。離れている時間は、心を引き裂かれる程辛いものだ。」
「まぁーーー♡」
「ミラ様は、人間ですよね?ミラ様は···」
そう言って、私に質問しようとした男の子が急に真っ青な顔をして、ガタガタと震えだしました。

「チョット!王様、威圧しないで下さい!びっくりしてるじゃ無いですか!」
「あぁ···いや、すまない。子供相手に大人気なかったな···」
これ、ぜんぜん悪いと思ってないよね。
「王様がごめんなさい。イエルド様、大丈夫ですか?」
「は···はひ·····」
息も絶え絶えに返事をするイエルド様。

「だから王様!やめて下さいってば!」
王様、顔が怖いです。

こんな調子で、私に話しかけて来る子供達(特に男の子)に片っ端から威圧を向けるので、とうとう私に話しかけてくれる子は1人も いなくなってしまいました。
王様、ひどい!
こんなんじゃ、友達なんて出来ないよ。
私に近づく男の子に威圧を飛ばしまくり。
私に話しかけてくる女の子にキャッキャ、ウフフ、と 羨ましがられて、ご満悦の王様。
散々 私との事をのろけ倒した王様は、大満足な様子で、そのまま、私をお茶会の会場から、抱き上げて、連れ出しました。

「もう、これくらいで良いだろう。ミラは返してもらう。」
そう言って、会場から去ってゆく王様に、女性陣は、「キャーーーッ!」と淑女らしからぬ叫び声を上げていました。

びっくりした父様は、唖然として、はっ!と、我に帰って、慌てて私達を追って会場を後にしました。
王様に抱っこされて、王宮廊下を王様の執務室に向かう私達。
「王様酷い、せっかく、お友達を作るチャンスだったのに。」
「私が、ミラに他の男が近づくのを許す訳が無いだろう。次は、男抜きのお茶会にして欲しい。」
そんな、ウルウルした目で、見ないでください。
「男って···まだ、子供ですよ。」
私もだけど···
「そんな事は関係無い、小さくても男には変わりない。」
そう言って、王様は、どんどん歩いて行きます。
後ろから、早足で付いて来た父様が、やれやれと 呆れた様子で私達2人の会話を聞いています。

「はぁーーー 次は女の子だけのお茶会にします。」
パァッと笑顔になる王様。
とっても嬉しそうです。
「女の子ばっかりなんですから、王様の参加も駄目ですからね。」
ここは、きっちり釘を刺しておきます。
たちまち、悲しそうな表情になる王様。

「そんな悲しそうな顔されても、駄目ですからね。女子だけです!」
そう言って、王様の返事を待ちます。
すると、蚊の鳴くような小さな声で、
「わかった···」
そう聞こえました。

後ろで父様がくすくす笑っています。
初めての子供のお茶会は、王様の登場によって、気力と、体力をごっそり持って行かれて、何の交流も出来ないまま、終了しました。

ーーー もう、やだ···
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