転生したら竜王様の番になりました

nao

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救出

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私は、小さな彼女の身体を、大事に抱きかかえて、医者の元へ飛んだ。

医務室の扉を勢いよく開けて、医師アルバを呼ぶ。

「アルバ!頼む 助けてくれ!」

「陛下!見つかったのですね。さぁ早く寝台へ!」

清潔なシーツのかけられた寝台にそっと彼女を横たえる。

彼女の小さな身体は傷だらけだった。
首、手、足に魔力封じの拘束具が嵌められ、引き摺られたのか、くっきりと赤く痣になり、血が滲んでいる。
彼女の美しかった銀紫の髪は短くばらばらに切られて、ザンバラになっていた。

髪にも魔力がこもっている、彼女の髪が切られて身体から放れた事で、魔導具の拘束から逃れ、彼女の魔力を追跡出来たのだから、不幸中の幸いとも言うべきか···

それにしても 酷い、あの女、絶対に許さない!
その身体を千々に引き裂いて、魔獣の餌にしてやる。
私の【番】に手を出す事がどういう事か思い知らせてやる!

アルバは彼女の様子を一通り診察し、助手に手当ての手配を告げ、準備してゆく。

魔力封じを外さなければ、治癒魔法が使えないからと、魔導具を外す為に魔導具師を呼ぶよう手配した。

「わざわざ呼ぶ必要は無い!今すぐ私が外してやる!」
私はそう言ったが、
「こういう物は手順を踏んで、正しく外さなければ、拘束されている者を傷付けるかもしれません。専門家が来るまで、お待ち下さい。」
と、アルバに叱られた。

アルバは更に教会に、上級聖魔法を使える者に来てもらうように助手に告げる。

取り敢えず、今は、彼女の血で汚れた顔や、首、手足を清潔な布地で拭い、消毒して行く。
しばらくすると、魔導具師がやって来た。

彼女を見た魔導具師は
「これは酷い、急ぎましょう。」
そう言って、彼女を戒める枷を1つづつ丁寧に外して行く。
魔導具そのものは複雑な物ではなかったようで、魔導具師が魔法陣を転回させ、魔力を流すと、それは簡単に外れていった。

仕事を終えた彼が、
「無理やり外していたら、小さな子供の首なんて、翔んでいたかもしれませんよ。陛下、よく我慢なさいましたね。」
そう言った。
魔導具師の言葉にゾッとした。
アルバの言う事を聞いて無理やり外さなくて良かった。
他ならぬ私が彼女を殺してしまう所だった。

魔力封じの輪の跡は、擦れて血が滲み、首輪のように赤く跡になっていた。
手にも足にも同じような跡が付いていて、それを見て、又、怒りが湧いて来る。

「陛下!魔力が漏れています!威圧しないで下さい!」

「すまん·····」

アルバに魔力を押さえろと怒られてしまった。

魔力封じが外れた所で、彼女の衣服を脱がすから退出するように言われたが、私は彼女から離れまいと、その場から動かなかった。 

アルバは
「しょうが無い。」
と、言って、ため息を付き、
「邪魔したら、すぐに出ていってもらいますからね、何を見ても決して動揺しないように。威圧は無しです。良いですか?」
私は黙って頷き、彼女をそのまま見守った。

裸になった彼女の身体は、殴られ、蹴られした痣がいくつもあった。
内蔵が傷つけられ、腹部に大きな内出血があった。
息をするのも辛そうで、彼女の手を握り、
「ミラ、ミラ。」
と声を掛けるが、彼女の瞼が開く事は無かった。

アルバは、大きな傷から治癒魔法を施してゆく。
やがて、少しだけ彼女の呼吸が楽になったような気がした。

「私の魔力では、ここまでが限界です。取り敢えず命の危機は脱しましたが、まだまだ油断は出来ません。後は教会から聖魔法が使える者が来るのを待ちましょう。」

そう言って、アルバは彼女の身体を丁寧にシーツで包んだ。

使いをやって30分程で教会から聖魔法師がやって来た。
「聖女様!」
そこには、水の国一の聖魔法の使い手、この国唯一『聖女』と呼ばれているマリアが立っていた。

「マリア!頼む。ミラを助けてくれ!」

マリアはミラの横たわるベッドの傍らに来るなり、すぐに聖魔法を発動した。ミラの身体が柔らかい金の光に包まれる。

「これは 酷い。」

眉間にくっきりとしたシワを刻み、その顔に怒りを滲ませながら、マリアはミラを癒やしていく。

やがて、金の光が空気の中にとろけるように消え、マリアが

「もう、大丈夫です。」
そう言って、こちらを向いた。

「マリア、ありがとう。感謝する。」
そう言って、私はマリアに頭を下げた。

「おやめください陛下。とにかく間に合って良かったです。やっと見つけた【番】様を失う事になったらと思うと、血の気が引く思いでしたわ。ご無事で何よりです。」
そう言って、聖女マリアはニッコリと微笑んだ。

「聖女様、ありがとうございました。私だけの力では【番】様をお助けする事は出来ませんでした。私からも御礼を言わせて下さい。」
そう言って、アルバもマリアに頭を下げる。
「いいえ、アルバの手当てが的確だったから【番】様の命を繋ぐ事が出来たのですよ。本当に間に合って良かったです。ですが、このような幼子になんと無体なマネを···陛下、犯人はもう既に捕縛されたのでしょう?恐れ多くも陛下の【番】様に手をかけるなど、どこの命知らずなのですか?」

「エレノアだ。」

「「えっ?!」」

マリアとアルバの驚きの声が重なる。

「陛下、まさかエレノア-ペールジェントですか?陛下の側近の?」

アルバの驚愕に満ちた声が部屋に響く。

「あぁ、そうだ。」

「そんな···彼女はなぜ そのような愚かなマネを···」

マリアも 信じられないと首を振る。

「だが事実だ。私自ら、彼女の屋敷にある地下牢から、ミラを救い出した。エレノアは、自分の魔力が我等に感知出来ぬよう、自分の首にも、魔力封じの魔導具を着けていた。」

「そんな···」

マリアも、アルバも、それ以上言葉が出なかった。

治療を終えたミラは、新しい寝間着を着せられ、落ち着いた息を繰り返していた。
その様子を見て、やっと私は、安心する事が出来た。

ミラが、見つかったと聞いてやって来たロベルトとハンナは、私の魔力の圧に耐えられず、部屋の外で待っていたが、やっとミラが落ち着き、私の魔力も落ち着いた所で、助手に案内され、部屋の中に入って来た。

ミラの枕元に膝まづき、彼女の手を取って、無事な姿に安心し、涙を流して喜んでいた。

(ミラ、皆がお前の無事を喜んでいる。早く目を覚ませ。起きて、私達を安心させてくれ。)

そう、祈るように、彼女の頬を撫で、頭を撫で、その小さな手の甲に口付けた。
すると、ミラの瞼がピクピクと震え、ゆっくりと、彼女が目を覚ました。


◇ ◇ ◇


「·····ㇻ、 ミ···ㇻ ミラ·····」

誰かが 私を呼んでる····
この声は、王様?
それとも 父様?  母様?
私はゆっくりと、覚醒してゆく·····
瞼が重い···
目を開けたいのに、力が入らない···
閉じていた瞼を、少しずつ、少しずつ、開いて行きます。
目の前には、心配そうに私を見つめる王様がいました。
そして、父様と母様が代わる代わる私の名を呼んでいます。

王様···泣いてるの?

「おぅ····さま?」
声がかすれて、上手く話せません。
私は、まだ、上手く動かない手を伸ばして、王様の頬に触れました。

「泣かないで·····」

王様の瞳からポロポロと涙が溢れます。

「ミラ···良かった。 ミラ·····」

そう言って、王様は、私の伸ばした手を、しっかりと握りしめました。

あぁ、私、王様の所に帰って来れたんだ·····


私は安心して、王様に手を握られ、もう一度目を閉じて、そのまま眠ってしまいました。


長かった一日が、やっと終わりました。


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