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断罪

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「いかがですか?」

「うん、とっても可愛い。ありがとう マーサ。」

そう言って、すっかり短くなった髪を、鏡を見ながら、チェックしていきます。

私の髪は、エレノア様に、怒りに任せて、短剣で、ザンバラに切られてしまった為、所々、芝生のように短くなっている部分もあったりして、前世にあった、超ベリーショートな髪型になっています。

女の子は、長い髪というのが当たり前のこの国では、この髪型は、とっても衝撃的で、とても、世間で受け入れられるものではないそうです。

私の髪が、整えられる度、どんどん短くなっていくのを、私の後ろで見ていた王様は、時折、涙ぐんで、

「そんなに短くしないとダメなのか?」

と、時々、マーサの邪魔をするので、

「髪なんてすぐに伸びますよ。ほら、王様が落ち込んでどうするんですか?元気出して下さい!」

そう言って、鏡越しに、時々王様を慰めてあげました。

まぁ一年もすれば、少しは見られるように髪も伸びるでしょう。
それまでは、まぁ
カツラとかで誤魔化すしかありませんね。
ありがたいことに、生まれ変わったこの顔は、お人形のようにとっても可愛いので、こんなベリーショートでも、とっても可愛らしく、似合っていると思うのですが、私が、

「可愛いから大丈夫!」

と、言えば言う程、周りは悲しそうな顔になってしまうので、ちょっと困ります。
私としては、こんなに可愛くしてもらって、大満足なんだけれど···

マーサの腕は確かだわ!!


◇ ◇ ◇


あれから一週間。

心配症の王様は、私を片時も側から離してくれません。

今、私は 自分の部屋ではなく、王と、王妃の部屋、所謂、夫婦の寝室という部屋で、一緒に寝起きし、食事を取り、毎日を、王様と過ごしています。
王様は、この部屋で私をずっと監視するかのように、側にベッタリとへばりつき、仕事をこの部屋に持ち込み、朝 昼 夜の食事もこの部屋の中、夜は同じベッドで一緒に眠っているのです。
そう、所謂、同衾と言うやつです!

でも、さすがにトイレやお風呂にまでついて来ようとするのは、断固!拒否しています。

王様は、私が見つかった最初の夜、私の事を、一晩中看病してくれました。
その時、私が悪夢にうなされて、泣き叫びながら 目を覚ますというのを目の当たりにして、私の怪我が 癒えたその後も、私と一緒に寝ると言って聞かなかったのです。
そのお陰か、私は悪夢に悩む事も無くなり、うなされ始めると、王様が、すかさず

「大丈夫、大丈夫。」

と、言って私を抱き締め、背中を撫でてくれるから、正直、ありがたいと思います。

最近では、もう、王様と眠るのが当たり前になっていて、もしかして ずっと このまま私は、王様に抱き締められて寝るのだろうか?
ちょっと、怖い事を考えてしまいます。
イヤイヤ、やっぱり、ずっとはダメでしょう。
いつかは、別々に眠らないとね。
今だけだよね。
そうたよね。
誰か、今だけだよって言って下さい!

と、言うわけで、今、現在、私は、24時間毎日ずっと、王様に張り付かれているのでした。

そして、更に1ヶ月が経ちました。

エレノア様の処刑が終わったと、噂を聞きました。
王様は、私が、辛い思いをするのが嫌だからと言って、徹底的に、1言の噂も、私の耳に入らないよう気を付けていたようですけれど、王様の側近が、【王の番】を害そうとしたなんて、しかも、筆頭侯爵家の令嬢だなんて、とんでもないスキャンダルを、世間が黙っているわけがありません。

『人の口に戸は立てられない』

悪い噂ほど広く、遠く、早く、長く広まるのです。

王宮、王都、辺境、そして遠く隣国までも。
今回の事件の噂は、尾ひれ、背びれを付けて、広がって行きました。

エレノア様は、王様が宣言した通り、魔力封じを付けられたまま、魔物の巣に放り込まれ、生きたまま、そのエサとなり、絶叫を上げながらやがて、事切れたそうです。

彼女の家族も、連座となり、侯爵家は取り潰され、3親等までの家族は、断頭台に送られ、首を落とされました。
そして、侯爵家に連なるその他の親族は、身分を1階級落とされ、平民落ちになった者もいると言います。

カーシル様に、厳し過ぎるのでは?と聞いてみましたが、甘い処罰だと、又、私を狙うものが現れるかもしれないからと言われれば、それ以上は何も言えませんでした。

カーシル様と話した夜、王様が私に、

「私の事が怖いか?」

瞳を不安気に揺らして、王様が聞いてきました。

あぁ、こんな顔を私がさせているんだ。
最近の王様は、いつもこんな顔をしているような気がします。
こんな顔をさせたい訳じゃ無いのに。
王様には、いつも穏やかに笑っていて欲しいのに···

「ぜんぜん、ぜんぜん怖くないよ。王様、私の為にありがとう。」

そう言って、私は、王様の首に腕を回し、しっかりと抱き締めて、王様の耳元で、そう答えました。
王様の私を抱き締める腕に力が入るのがわかりました。
やっぱり、私にとっても、あの事件はとっても怖かったし、二度とあんな目に合いたくないから···

牢の中で、エレノア様は最後まで、

「陛下を一番に愛しているのは私だ!私が、陛下に一番相応しい!」

そう言い続けていたそうです。

獣人や、竜人の愛の重さに、知らず恐れを抱いてしまいます。
将来、私は王様の【番】として、あれ程の愛を、王様に感じる事が出来るようになるのかな?
今はまだ想像出来ません。
でも、王様の献身的な愛情を毎日、たっぷりとこの身に受けて、私は王様と毎日を過ごす事が、当たり前になっています。
むしろ、離れる事が信じられないように感じる日だってあるくらいです。
どうやら、私は、すっかり王様に心を掴まれてしまったようです。

前世、浮気者の社長のとばっちりで、奥様に刺し殺されてしまい、男性不信に磨きがかかっていた気持ちは、見事に上書きされました。

大人になったら、この人と結婚するんだなぁ···

そう素直に、王様の愛を受け止めるようになりました。
でも、時々、大人の愛情表現を私に仕掛けて来るのは、勘弁して欲しいです。
言っても私、まだ、たった5才の幼女だからね!
今度、ベロチューなんてしてきたら、その舌噛んじゃいますよ!

今夜も、貞操の危機を感じながら、私は王様とベッドに2人、しっかりと、王様の腕に抱き込まれて、眠りに着くのでした。

好きだよ、王様。

おやすみなさい。


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