悲しい恋 【完結】

nao

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暗殺

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 クロノス王国、王宮の東の庭、その更に奥に、王女の離宮はひっそりと建っていた。
夜の帳が下りる中、寝台をギシギシと揺らして、2人の男女が獣のように睦み合っている。
事が済んで、男が寝台から出ようと身体を起こす。
「それでは、頼んだわよ。」
赤い唇が、孤を描く。
ニンマリと笑うその顔は、王女とは思えぬ程、醜く見える。
「かしこまりました。」
目を伏せ、彼女の目を見ないよう頭を下げた。
「失敗は許さないわ。必ず、あの女を仕留めてちょうだい。」
「·······それでは、行って参ります。」
わかりましたとは言わなかった。
私が凄腕の暗殺者だったとしても、今回の仕事はとても難しいものだから。
オルランド帝国。あの巨大な国の王宮に入り込み、王太子妃を暗殺する。
気の遠くなるような思いで、それでも、行ってきますと返事をした。
もう、この国へは、戻れないかもしれないな…そんな予感がした。


「まったく!2人めですって?!忌々しい」
ヴァレンティアは窓から夜の闇を見つめ、ギリギリと爪を噛む。
これまでに、何度も刺客を送ったのに、皆 返り討ちにされたのか、消息不明となっている。
私は、あの女のせいで、こんなに不幸なのに、腹立たしい。
殺してやりたい。
あの女は、レオ様の死後も、オルランド帝国で、王太子妃として、大切にされ、既に2人も、子供を産んだ。
それに引き換え、私はレオ様を失い、こんな離宮に閉じ込められて、夜会にも出れず、側にいる使用人を閨に引き入れる事しか出来ない。
どうして、私がこんな目に合わなければならないの?
みんなあの女のせいよ。
このままでおくものですか。
「殺してやる、絶対、あの女を殺してやるわ。」
暗い瞳をして、夜の闇に向って呟いた。


「これで何人目だ?」
「さぁ、そろそろ両手の指では足りなくなりそうですが…」
王の執務室、今日、捕らえた暗殺者の調書を読みながら、陛下が問う。
レミリアを狙った暗殺者が、王宮に紛れ込むようになったのは、レオナルドが死んで、すぐの頃からだった。
全て、王女ヴァレンティアの指図である事は、既に把握している。
暗殺者は全て捕らえ、死ねないように、魔導具で拘束している。
あの馬鹿な王女は、自分の行いが、自国の滅亡を加速させている事に気付いていない。
既に、証拠も揃い、こちらとしてはいつでもあの国を攻撃することが出来る。
3日もあれば、落とせるだろう。
後は、いつ仕掛けるか…
ゲームの開始が近付いて、ワクワクするような、高揚感がある。
私は自分でも、とても、好戦的な性格をしていると思う。
あの国を攻略し、支配下に置き、悔しがる王女の顔、処刑を前に、絶望する顔を想像すると、口元が自然と緩む。
あの、婚約白紙から随分たった。
私も、陛下も、コケにされて それに甘んじる性格ではない。
準備を整え、じっくりと反撃する機会を伺ってきた。
あまつさえ、あの王女は私のもの、レミリアに手を出したのだ。
自分のものに手を出されて、指を咥えて見ている程、わたしは甘くない。
婚約者の交換など、前代未聞の愚かな行為を、何の疑問も持たずに、推し進めた、あの馬鹿共に 思い知らせてやる機会がやっと巡ってきた。
私はレミリアを愛している。
賢く、聡明で、王太子妃として不足ない彼女は、子を2人も設けてくれたし、妃にしたのが彼女で良かったとも思っている。
彼女によく似た王子と、私によく似た王女。
我が子がこれ程可愛いものだとは嬉しい誤算だった。
元婚約者が死んでから、一時は彼女も、後を追って死んでしまうのではないかと心配したが、子が出来たことで、なんとか 持ち直す事が出来た。
王子が産まれた後も、一時でも元婚約者の事を忘れられるよう、私は夜毎、彼女を快楽に沈めた。
しばらくすると、彼女は2人めを身ごもり、彼女は又、生きなければならなくなった。
2人めを出産し、今又、3人めを身ごもっている。
次は、男でもいい、女でもいいから、私と彼女、両方の色を持った子が、生まれてほしい。
最近、そんな事を考えている自分がいることに少し、驚いている。
「狂犬」だ、「死神」だと呼ばれる自分の変化は、間違いなく、レミリアが私に与えた影響だ。
どうやら私は、自分が考えている以上に、彼女の事を愛しているらしい。
彼女が死ぬ事を、想像するだけで怒りが湧いてくる。
自殺も、暗殺も許さない。
彼女は、私のものだ。
私は一生、彼女を手放すことは無いだろう。
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