悲しい恋 【完結】

nao

文字の大きさ
14 / 29

クロノス王国の最後

しおりを挟む
 その知らせが届いたのは、3人めの子がお腹にいることがわかって、ノアール様に報告している時だった。
「開戦?!クロノスとですか?」
「あぁ、お前には黙っていたが、今、クロノスはヴィトゲンシュタイン家の謀反で、国が大きく変わろうとしている。王族は捕らえられ、政権は王家に反旗を翻した貴族達が握っている。」
「父は…私の父と兄達はどうしているのですか?」
「オースティン家は、ヴィトゲンシュタインの元に付いた。貴族側に立っている。次の王は、ライノルド-ヴィトゲンシュタイン。元婚約者レオナルドの兄だ。王族は幽閉、又は処刑となるだろう。実は、オルランドは前からこの謀反を後押ししている。」
「そうなのですか?」
私は驚いて、夫であるノアール様の顔を見つめた。
「父と敵対しなくて安心いたしましたが、どうして?」
「身勝手な婚約者の入れ替え、こんな侮辱をされて、私達が黙っているはず無いだろう。あの国を潰すタイミングを見極めていたんだ。あの王族共では、いつかは こうなっていたさ。」
そう言って、悪い顔をして笑っている。
「そうだったんですか…」
おじ様はきっと、王女にレオを殺されたことが、許せなかったんだろう。
謀反を起こすほどに、愛する息子を王家に取られ、殺されたのだ。
その怒りはいか程のものか…
「レミリア、お前はどうしたい?」
「どうしたい?とは?」
意味がわからなくてノアール様の瞳を見つめる。
「レオナルドは王女に殺された。王女の生命は、今、貴族側が握っている。彼等を支持してきた我々にも断罪する権利はある。レミリア、お前はあの王女をどうしたい?」
ノアール様が私の本心を伺うようにじっと見つめる。
王女を私が断罪してもいいの?
レオを殺したあの王女を、私は許す事が出来ない。
八つ裂きにしてやりたい。
殺してやりたい。
ドス黒い思いが胸の内から湧き上がる。
気が付いたら私は
「殺してください。」
そんな言葉が、私の口をついて出た。
「わかった。」
そう言ってノアール様が、手を伸ばし、私の頬を親指で拭った。
私は知らず、涙を流していた。
それからの私は、いつもどうり、公務をこなしながら、王妃様や、降嫁されたアリス様を呼んで、お茶会をしたり、お腹の子の為に散歩したり、2人の子供達と遊んだりして過ごしていた。
そろそろ、産み月も近づき、出産の準備をしていた頃、本格的な冬が来る前に、その知らせは届いた。
主だった王族が、処刑されたと。
その中には、王女の名もあった。
何の感情も湧かなかった。
「そう…」
私の口から出た言葉はその一言だけだった。
それからしばらくして、この国では珍しく、雪の降る寒い日、私は3人めの子を出産した。
外にはうっすらと雪が積もり、白い白い世界が広がっていた。
何もかもが浄化されたような美しい世界。
その日、私はノアール様と同じ黒髪に、私よりも少し濃い目のピンクの瞳をした、男の子を出産した。
2人の色を持った男の子の誕生に、ノアール様はとても嬉しそうだった。
名前を「ブラン」と名付けた。
オルランドで「白」を意味する。
目の前に広がる、白い世界のように、清廉で、ノアール様のように優しい人になって欲しいと、想いを込めた。
クロノス王家は滅亡し、クロノス王国は消えた。
ライ兄様が新しく王となり、ヴィトゲンシュタイン国が誕生した。
新しい国との関係を、良好なものにするため、ノアール様は、とても忙しそうだったが、私や子供達との時間を、とても大切にして下さった。
どんなに忙しくても、私達の為に、時間を作り、一緒に過ごして下さった。
ノアール様が30才の時、王位を継いだ。
私は、王妃となり、国の為、ノアール様の為、力の限りを尽くした。
相変わらず、ノアール様は私を愛して下さり、大切にして下さった。
とても幸せだった。
気づけば、この国に来て、20年がたっていた。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

禁断の関係かもしれないが、それが?

しゃーりん
恋愛
王太子カインロットにはラフィティという婚約者がいる。 公爵令嬢であるラフィティは可愛くて人気もあるのだが少し頭が悪く、カインロットはこのままラフィティと結婚していいものか、悩んでいた。 そんな時、ラフィティが自分の代わりに王太子妃の仕事をしてくれる人として連れて来たのが伯爵令嬢マリージュ。 カインロットはマリージュが自分の異母妹かもしれない令嬢だということを思い出す。 しかも初恋の女の子でもあり、マリージュを手に入れたいと思ったカインロットは自分の欲望のためにラフィティの頼みを受け入れる。 兄妹かもしれないが子供を生ませなければ問題ないだろう?というお話です。

僕の婚約者は今日も麗しい

蒼あかり
恋愛
公爵家嫡男のクラウスは王命により、隣国の王女と婚約を結ぶことになった。王家の血を引く者として、政略結婚も厭わないと覚悟を決めていたのに、それなのに。まさか相手が子供だとは......。 婚約相手の王女ローザもまた、国の安定のためにその身を使う事を使命としていたが、早い婚約に戸惑っていた。 そんなふたりが色々あって、少しづつ関係を深めていく。そんなお話。 変わり者の作者が、頑張ってハッピーエンドを目指します。 たぶん。きっと。幸せにしたい、です。 ※予想外に多くの皆様に読んでいただき、驚いております。 心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。 ご覧いただいた皆様に幸せの光が降り注ぎますように。 ありがとうございました。

泣きたいくらい幸せよ アインリヒside

仏白目
恋愛
泣きたいくらい幸せよ アインリヒside 婚約者の妹、彼女に初めて会った日は季節外れの雪の降る寒い日だった  国と国の繋がりを作る為に、前王の私の父が結んだ婚約、その父が2年前に崩御して今では私が国王になっている その婚約者が、私に会いに我が国にやってくる  *作者ご都合主義の世界観でのフィクションです

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

【完結済】ラーレの初恋

こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた! 死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし! けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──? 転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。 他サイトにも掲載しております。

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

処理中です...