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毒-1
しおりを挟む私が国を出るまであと4日。
今日は王宮の庭園で王族を集めて、私とリオネル様の結婚を報告するお茶会が開かれています。
明日の婚約発表の夜会の前に、王族に婚約と私の出国の報告をするそうです。
お父様と王太子アリステアカークお兄様、第一王女アリシアローズお姉様、ダイアナレティ正妃様と第一王子キースロイドお兄様、第二妃ユリアーナレイン様と義弟の第三王子ハビエルジャン王子、側妃リリルアイビー様と義妹で双子の第三王女マリナリン王女と第四王女アンナリン王女。
ごくごく内輪のお茶会です。
私はいつも離宮にいて、この様な場に出席するのは初めてです。
お父様が私とリオネル様の婚約、そしてリオネル様と共に、私もトルティア帝国に向う事が発表されました。
「まぁ 随分急な事なのね。」
正妃様がそう言って、冷たい目をして私を見ました。
「陛下、あまりに急なお話で準備が整いませんわ。」
第二妃様が、私を気遣う様に言ってくださいます。
「お姉様、お嫁に行くの?」
末の妹姫アンナリンがキョトンとした瞳を私に向けます。
「急な事で驚かれたでしょうが、大切な姫君を奪っていく私を許していただきたい。もう一日も離れていたくはないのです。」
リオネル様はそう言いながら私の手を取り、その指先にキスをしました。
リオネル様の瞳が優しく私を見つめていて、私は顔が真っ赤になるのを止められませんでした。
「まぁ、お熱い事ですわね。」
側妃様は何だかとても楽しそうです。
お茶会はつつがなく進み、私は少し火照った顔を冷ますため、化粧室にやって来ました。
「いい気なものね」
聞き慣れたお姉様の声が私の心を一気に凍らせました。
「お姉様…」
お姉様は私の事がお嫌いです。
私のせいで愛するお母様が死んでしまったから。
私を母親殺しと、小さな頃から会う度に責められました。
学園でも社交界でも私の悪い噂をばら撒き、私を孤独に落とした張本人です。
「お前が幸せになるなんて、絶対に許さないわ。」
「許さなかったらどうするおつもりですか?」
「リオネル様!」
突然、私とお姉様の間に入って会話を遮ったのは、リオネル様でした。
「シルビア、こちらへ…」
優しい眼差しが私を捉え、同仕様もなく冷えてしまった私の気持ちを、温めてくれます。
私はリオネル様に呼ばれるまま彼の側に寄り添います。
「リオネル殿下、本当にその女と結婚するおつもりですか?悪い事は言いませんわ、おやめになった方がよろしいですわよ。その女は生まれた時から我が国に不幸をまき散らす張本人ですもの。あなたもきっと不幸になりますわよ。」
憎々しげに私を指差して、お姉様がリオネル様に訴えます。
「あなたは本当にシルビアの同腹の姉なのですか?妹をそこまで貶める言葉を吐くなんて、私にはあなたの方が不幸の種を蒔き散らしている様に見えますが?」
リオネル様の言葉にお姉様の顔は、怒りで真っ赤です。
「その女のせいで私の敬愛するお母様が亡くなりました。」
「そもそも身体の弱かった第二妃様を孕ませた国王にこそ問題があったのでは?王太子を生んだ時 既にあなたの母君の身体は限界だったのではありませんか?」
「魔力を暴走させて魔物の森を凍土に変えましたわ。」
「たった5歳の子供が突然魔物の中に放り込まれたのです。自衛するのは当然の事でしょう。私なら焼け野原に変えていますよ。」
「この女のせいで流行り病が蔓延し、多くの国民が死にましたわ。」
「むしろシルビアは遺体を凍らせる事で流行り病の蔓延を防いだ方でしょう。遺体をそのままにしていては更に流行り病は広がった事でしょう。」
「学園での噂をご存知ないのですか?この女は騎士科で男漁りをしていますのよ。純血かどうかも怪しいものですわ。」
「その噂もあなたの取り巻きがあなたに言われて噂を広めたと調べはついています。ああ、一言お礼を言わせて下さい。あなたの姑息な嫌がらせのおかげでシルビアに近付く男は1人もいませんでした。その事だけはお礼申し上げます。」
「くっ…」
お姉様は次々とリオネル様に看破され、とうとう黙り込んでしまいました。
「言いたいことはそれだけですか?ないなら私達はこれで失礼します。行こうシルビア。」
さっきまで、お姉様に向けていた冷たい瞳は消えて、リオネル様が、優しい瞳で私を見つめ、エスコートして下さいま
す。
私は悔しそうにうつ向くお姉様を横目で見ながらリオネル様と共にその場を去りました。
「リオネル様、助けていただきありがとうございました。」
「いや、それより私はあなたに謝らなければいけません。」
何の事かわからず私はキョトンとリオネル様を見上げました。
「シルビアの事を調べていた事。今の会話で気づいたでしょう?」
「それは、いずれ王妃となる者の素性を調べるのは当たり前ですから…」
「それに、シルビアを1人にするべきではありませんでした。又、あなたに嫌な思いをさせてしまいました。」
気まずそうにリオネル様が「本当にすみません」と謝って下さいました。
「そんな事リオネル様が謝られる事ではありません。どうぞ謝らないで下さい。それよりも私は調べた上で私を選んで下さって、その事が、とても嬉しいのです。今まで、私の事を選んで下さる方はいませんでしたから…」
そう言ってうつ向く私の背に手を回して優しく撫でながら、リオネル様は…
「まったく、この国の男達は見る目がありませんね。こんなに可愛らしいあなたの何処が悪虐氷姫なんでしょうね?」
私の不名誉な二つ名までご存知だなんて…
恥ずかしくて穴があったら入りたいです。
ニコニコ笑いながらリオネル様が私の顔を覗き込みます。
私の顔は今、真っ赤になっているのでは?
その後私達はお茶会場に戻りましたが、お姉様が戻って来る事はありませんでした。
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