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毒-3
しおりを挟む【シルビア】
「リオネル様、今日は本当に色々ありがとうございました」
お茶会が終わり、私はリオネル様に離宮まで送っていただきました。
「いえ、無事に終わって一安心です これですぐにでもシルビアを国に連れて帰れます」
そう言って私の手を取り、離宮のエントランスホールまで私をエスコートして下さいました。
「リオネル様、お茶でもいかがですか?」
「嬉しいお誘いですが今日はあなたも疲れたでしょう ゆっくり休んで下さい あなたさえ良ければ、明日お伺いしたいのですが、お昼をご一緒していただけますか?」
「ええ、もちろん喜んで 明日お待ちしておりますね」
「では、今日はこれで失礼します」
そう言って、私を引き寄せ頬にキスを1つ下さいました。
突然の出来事に私は恥ずかしさで頭が爆発しそうです。
クスリと笑って
「では、また明日」
と言ってリオネル様は帰ってゆかれました。
部屋に戻り、イレーネに手伝ってもらってドレスを脱ぎます。
「湯浴みの準備も出来ておりますよ 今日はたくさんの王族の方に囲まれてお疲れでしょう」
「大丈夫よ、リオネル様がずっとそばにいてくれたから」
「良かったですね、シルビア様 さぁ、今日はゆっくり湯浴みをして疲れを癒しましょう 腕によりをかけてマッサージしますからね」
「ありがとう、イレーネ」
それから私はゆったりと湯につかり、髪を洗ってもらい、たっぷりとバラのオイルを付けて、全身をマッサージしてもらいました。
オレンジの香る果実水で喉を潤し、ゆったりしたワンピースに着換えました。
夕方、晩餐室のテーブルの上には私の好きな物がたくさん並んだ食事が用意されていました。
離宮の皆の心遣いに感謝して、食事を堪能しました。
リオネル様に出会ってから、嬉しい事がいっぱいです。
「こんなに幸せでいいのかしら…」
つい、口から言葉がこぼれます。
「何をおっしゃるのですか?シルビア様 これまでの生活がおかしかったのですよ シルビア様は愛されるべきこの国の第二王女であらせられるのに…アリシア様のせいで、あんな根も葉もない悪評を流すなんて…」
水差しを持つイレーネの手が少し怒りに震えている。
「それ以上はダメよイレーネ 不敬になるわ」
「申し訳ございません」
俯くイレーネはとても悲しそうな顔をしていた。
「イレーネには感謝しているわ こんな悪い噂ばかりの私の面倒をずっと見てくれて、いつだって私の味方をしてくれたわ 本当にありがとう」
私はニッコリと笑顔でイレーネを見つめた。
「シルビア様、もったいないお言葉です、どうかもっともっとお幸せになって下さい。リオネル様ならきっとシルビア様を大切にしてくださいます」
「ええ、私もそう思うわ ありがとうイレーネ」
夕食を終え部屋に戻り、バルコニーに出て夜風に当たり、火照った頬を冷まします。
夜空にはキラキラと星が瞬き、私はお母様の事を思います。
部屋に飾られたお母様の肖像画はお母様の顔を知らない私の為にお父様が下さったものです。
私と同じフワフワの青味がかった銀の髪。
銀色の混じる澄んだ藍色の瞳。
私とそっくり同じ顔。
年を取るごとにお母様そっくりになってゆく私を見つめるお父様の瞳はいつも切なく、そして優しいものでした。
私の魔力のせいで、お母様の命が削られてしまった事を思うと、罪悪感で胸が痛みます。
でも、この魔力のおかげで、リオネル様に選んでいただけたのだと思うと、私を生んでくださったお母様に感謝しかありません。
物思いにふけっている間に火照っていた頬も冷えた様です。
寝台横の小テーブルに用意された水を飲んで寝ようとグラスに注いで一口、二口と飲みました。
ごほっ……
せり上がる咳に血が混じります。
「なんで…?」
ごほっ……
ボタボタと口から血がこぼれ落ちます。
「毒?」
私は慌てて身体の中、食道から胃に至る今、飲み込んだ水を凍らせ溢れる血と共に出来るだけ吐き出しました。
なんとか寝台横のベルを鳴らします。
ベルを聞きつけて、イレーネが部屋にやって来ました。
「シルビア様、どうなさいま……きゃーーーーーっ!!」
血まみれの私を見て、叫ぶイレーネの悲鳴を聞いた他の使用人も部屋に駆け付けました。
急いで医者が呼ばれ、私は大量の水を飲んでは凍らせて吐き出すという事を繰り返しました。
何度も氷を吐き出し、ようやく毒が身体から全て吐き出されたのは、夜明け前でした。
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