悪虐氷姫の幸せな結婚

nao

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毒-4

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【リオネル】


その知らせは朝早くからもたらされた。

「殿下!起きていらっしゃいますか?!大変です!シルビア王女様が毒に倒れました!!」

アンドレの知らせに私は寝台から飛び降りた。

「シルビアは?!無事なのか?容態は?!」

「幸い一命は取り留めたようです。ご自分で魔法を使って毒を排除されたそうですが今は王宮の医療室で傷ついた体内の治癒を受けているそうです。」

「行くぞ!シルビアに会わないと!!」

「既に先触れは出してあります。すぐに参りましょう!」

急いで王宮の医療室に向かった。

医療室の入り口には護衛が2人立っており、私の顔を見ると室内へ入るよう促してくれた。

白を基調にした清潔感ある室内の中央にある寝台に、青白い顔をして彼女は眠っていた。
寝台から少し離れた場所で国王と、医者が顔を寄せ合って話していた。
シルビアの眠る寝台の横で様子を見ていたもう1人の医者が、こちらに気づき小声で現状を教えてくれた。

「昨夜遅く、眠る前に喉が渇いたと水差しの水を飲まれ、毒に当たったようです。ご自分の魔法で、飲んだ毒入りの水を瞬時に凍らせ、毒を全て吐き出されたそうです。」

「命に別状はないのですね。」

「はい。それは大丈夫です。ですが、ずっと氷を吐き出していたせいで、内臓の一部が傷ついていますので、聖水と水魔法を使って癒しました。やっと先程すべての治療が終わって眠られた所です。」

「しばらくそばにいても?」

「はい。大丈夫ですよ。そばにいてあげて下さい。目覚めた時殿下がいらっしゃれば王女様も安心されるでしょう。何かあればお呼びください。」

そう言って医者は医療室を出て行った。

寝台で眠る彼女の顔にそっと触れる。

「冷たいな…」

彼女の額に触れ、熱を測る。
そのままその手を彼女の頬に滑らせる。
そして空を見つめ、アスランを呼んだ。

「アスラン」

『何だ?主』

「頼む、シルビアを癒してやってくれないか?」

『承知』

そう言ってアスランがふわりとシルビアの胸の上に降り立った。
アスランの身体から眩い金色の光が溢れ出て、ベッドに眠るシルビアの身体を包み込んだ。

するとシルビアの頬にほんのりと朱が差し、浅かった呼吸が落ち着いたものに変わる。

『もう大丈夫だ』

そう言ってアスランが私の肩に戻って来た。

『主、お前は大丈夫なのか?』

私の顔色をうかがい、心配してくれる。
優しい聖獣に「私は大丈夫だ」と優しくアスランの胸を撫でた。

「ありがとうアスラン。急に呼び出して悪かった。」

『お安い御用だ。また何かあれば呼ぶがいい。』

そう言ってアスランはスッと姿を消した。

「シルビア、無事で良かった。」



「リオネル殿」

一連の出来事に憔悴した様子の王が頭を下げた。

「朝早くからすまない。今、全力で犯人を捜している。既に離宮の者達は地下牢に捕らえている。」

王が現状の説明をしてくれる間も、私はシルビアから目が離せない。

「会えますか?その容疑者達に」

私は王に向き直り、容疑者に会わせてくれと要求した。

「会ってどうされるおつもりですか?」

不安に瞳を揺らしている王はどこか落ち着かない様子だ。

「犯人探しのお手伝いをさせてください。」

「どうされるおつもりですか?」

王は私がどうするつもりか心配そうに尋ねてきた。

「火の神の加護を利用するつもりです。神の前では誰も嘘をつけませんから。」

私は王に向かってにっこりと笑った。
そして、今もなお眠り続けるシルビアの髪をそっと撫でた。
絶対に犯人をあぶり出してやる。

私は早速容疑者に会いに行った。
まずはシルビアに一番近しい人間、専属侍女イレーネ夫人の頭の中を覗いてやる。

アンドレ達と共にイレーネが収監されている貴族牢に向かう。



イレーネ夫人はシルビアが離宮に入った時からずっと魔術師団長と共にシルビアの世話をしている、シルビアにとっては母の様な存在だ。
ただただ一心にシルビアに心を砕いて生きてきた。
彼女は貴族の令嬢としては珍しく全く魔力がなかった。その為魔力に対して鈍感だった為に、シルビアの側に仕える事が出来ていたらしい。

私は彼女の目をじっと見つめた。
私の中の火の神の加護を感じる。
私の瞳が魔力で煌めき、イレーネ夫人の心の中を見通していく。
そうして私は火の神の力を使って彼女を催眠状態にする。
今回の事件のせいでシルビアの命が脅かされて、彼女の心の中は後悔でいっぱいだった。
どうして、ずっとそばにいなかったのか。
どうして、水に毒が仕込まれた事に気付けなかったのか。
どうして、この事を予測していなかったのか。
シルビアの幸せを快く思わないあの二人の事を、もっとよく気を付けていれば良かった。
きっとあの正妃が何かしたに違いない。
アリシア王女殿下も無関係だとは思えない。
彼女の瞳からは涙が溢れていた。
彼女の心の中はシルビアへの心配でいっぱいだった。
そしてただひたすらにシルビアの無事を祈っていた。


次に料理長の頭を覗いた。
離宮の料理長もシルビアの事をとても可愛がっていてなぜ水差しに毒が入ったのか分からないと言った。
料理長のアシスタントの男も同じだ。
そもそも二人ともシルビアの部屋に近づく事も出来ない。
そして、この二人も正妃とアリシアを疑っていた。

それからも、離宮で働く使用人達の頭を覗いていった。
皆シルビアの事を心配していてそして正妃とアリシアの関与を疑っていた。


「シルビアは離宮の皆に愛されていたんだな…」

「そうですね、素晴らしい女性です。何としても殿下の妃になっていただかなくては。」

アンドレの言葉に私は強く頷いた。

「そうだな、とりあえずここに囚われている人間は全員無実だ。だが彼らにはもう少しの間ここにいてもらおうと思う。」

「何故です?」

「本当の犯人をあぶり出す為だよ。」

「どうするおつもりですか?」

「そうだな、まずアリシア王女に近づいてみるか…」

私は地下牢を後にした。

それから、国王に謁見を申し込み、取り調べの報告をした。
そして、今夜の晩餐を国王達と共にしたいと願い出た。

私がこの国に滞在出来るのも後少し、もうあまり時間がない。
シルビアの容態を見て少し帰国を遅らせたいが、あまり長くは出来ないだろう。
とにかく、今夜の晩餐でアリシア王女に会ってみるか…
私はどう攻めるか頭をフル回転させて今夜の晩餐に臨む事にした。






    
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