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国王の後悔-1
しおりを挟むリオネル殿下が庭園から戻ってきたのは二人が散歩に出て1時間ほど経ってからだった。
アリシアの姿は見えない。
私はリオネル殿下とその側近達を伴い執務室へ向かった。
侍女にお茶の用意をさせて人払いをした。
「こちらが今回の事件の犯人と証言が記録された魔導具です。」
リオネル殿下はそう言って記録の魔導具を机上に置いた。
そこにはリオネル殿下をうっとりと見上げて今回の事件の真相を語るアリシアの姿がはっきりと映し出されていた。
そして、正妃が毒を用意した事もハッキリと証言していた。
「なんてことだ…」
私は頭を抱え言葉を発する事が出来なかった。
「陛下、今回の始末をどうつけるおつもりですか?」
リオネル殿下の冷たい視線が突き刺さる。
「リオネル殿下、我が妃と娘が愚かなマネをしてしまい誠に申し訳ない。2人にはそれ相応の罰を与える事を約束します。ですが王族として今回の事を公にする事は出来ません。どうかご配慮いただきたい。」
「陛下、シルビアはこの国の王女であり、あなたの娘です。ですが彼女は私の妃になる娘です。先日トルティア帝国にも私の婚約者としてシルビア王女を迎える事を知らせています。彼女は既にトルティア帝国の準王族扱いとなっています。それゆえに甘い対応は私も納得出来ません。」
「リオネル殿下のおっしゃる事はもっともです。私の娘を殺そうとした事は、王家に対する謀反でもあります。正妃もアリシアもシルビアの事を世間に出せない無能な王女と侮っているようですが、それは彼女達の思い違いです。シルビアの魔力は、我が国を狙う隣国を抑えるための抑止力になっており、魔物の森からの魔物の流出を防いでもいます。街で流行り病が蔓延した時は、病にかかって亡くなった遺体を凍らせる事でそれ以上の感染拡大を防ぎました。シルビアはアリシアよりよほど国民の支持を集めているのですよ。正妃もアリシアもシルビアがこの国に存在する意味を一つも分かっていない。あの子が我が国の為にどれほどの貢献をしているか、自分の利益しか考えられないあの二人には想像も出来ないでしょう。」
「では、どのようになさるおつもりですか?返答次第では私も黙ってはいられません。」
そう言って鋭い視線を向ける殿下の目を真っ直ぐ見据えて私は今回の沙汰を伝えた。
「正妃は、離宮で病気療養後死亡するでしょう。アリシアは、クライフト侯爵家の後継者を生む為の道具となってもらいます。侯爵の第一夫人には子供がいません。先の事を心配していましたが、これで不安も無くなるでしょう。後継者を生んだ後は、王女の地位を剥奪し、北の修道院へ生涯幽閉とします。」
私をじっと見据えて話を聞いていたリオネル殿下は私の決意を聞いてそっと目を伏せた。
「わかりました。陛下のご英断に感謝します。それでは、私はこれで。」
静かに執務室を出ていくリオネル殿下の背中を見送った。
「はぁ…」
思わずため息が漏れる。
ソファの背もたれに身体を預け天井を見上げる。
ダイアナ…
アリシア…
なんて馬鹿な事をしたんだ。
リオネル殿下がいる以上この事件を無かった事には出来ない。
どうしてこんな事になってしまったのか。
学生時代に犯した過ちが後になってじわじわと私の首を絞めていく。
あの時私がダイアナを選ばなければ私は今これほど苦しむ事は無かったのだろうか…
彼女と結婚してから平穏だった私の人生は狂いっぱなしだ。
あの時、悪役令嬢と蔑み断罪した公爵令嬢(元婚約者)は良識ある普通の令嬢だった。
私が婚約を破棄した事で王家に捨てられた傷物となってしまった。
今思えば令嬢の意見は至極真っ当なものだった。
王族には敬称を付けて呼ぶように。
無闇に婚約者のいる男性と2人きりになってはいけない。
王族に先に話しかけてはいけない。
王族に勝手に触れてはいけない。
そんな当たり前の事を言っていただけなのに。
ダイアナが言っていた令嬢からの嫌がらせも、ダイアナの証言だけで、実際に現場を目撃した人間はいなかった。
今ならダイアナの自作自演だったとわかる。
なんと私は愚かだったのか…
正妃とアリシアの処分。
シルビアの結婚。
妃達と子供達のこれからの事。
全ての問題が片付いたら私は王太子に譲位して、王座を退こう。
愚かだった私を反面教師にして王太子はとても優秀な後継者として育った。王位を譲る事に誰も反対はしないだろう。
これからの事を考えて、私はもう一度目を閉じた。
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