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国王の後悔-4
しおりを挟むアリシアは治癒師の側で魔力を補充してもらいながら暗い目をしてぼんやりと天井を見つめていた。
「アリシア、具合はどうだい?」
「おとうさま…?」
私を見る、何の感情もないその瞳を見て、ダイアナの罪深さをもう一度思い知る。
「アリシア」
私は彼女を胸に抱き締め、そっと背中を撫でてやる。
「お父様…」
彼女は静かに泣いていた。
虚ろな瞳からポロポロと涙がこぼれる。
シルビアを殺してしまおうとした事に今さらながら恐怖を感じているのだろうか。
「アリシア、シルビアは無事に保護したから大丈夫だよ、君は何もやっていない。何もやっていないんだ、だから安心して…」
私の言葉に、ハッ!としたように顔を上げて私をじっと見る。
「シルビアが生きてる?」
「ああ、君は何も心配しなくていい、アリシアは何もしていない、だから大丈夫だから、さぁいつものように笑っておくれ」
そう言うと、抱きしめているアリシアの華奢な肩が小さく震えた。
「そんな…だってダイアナお母様が大丈夫だって言ったのに…私の目の前からあの子を消してあげるって言ったのに…」
怒りに顔を赤く染めてアリシアが呟く。
まさか、アリシアがここまで歪んでいたなんて…
「アリシア、お願いだ、ダイアナの言う事は全て嘘なんだ、君達姉妹を仲違いさせようとしているんだよ、頼むからシルビアに優しくしてあげてくれないか?」
「何を言っているの?あの子のせいでお母様が死んでしまったのに、どうしてそんな事を言うの?」
「アリシア、よく聞いて、お母様が死んだのはシルビアのせいじゃない、生まれたばかりのシルビアにその責任があるわけないんだ、お母様は病で亡くなったんだ、ダイアナの言う事は信じないで」
「でも皆言ってます、シルビアのせいでお母様の身体が弱くなったって」
「お母様の身体は元々弱かったんだ、お母様が死んでしまったのは私のせいだよ、だからそんな事を言わないでくれないか?」
私の懇願にまだ納得いかないようだが、アリシアはそのままキュッと口を結んで黙りこんでしまった。
今はまだ分からないかも知れないが、きっといつかこの子も分かってくれるはず…
アリシアの頭を撫で「今日はもう休みなさい」と声をかけて私は部屋を出た。
次はシルビアの部屋に向かった。
シルビアはまだ眠っていた。
「シルビアの様子はどうだ?」
「まだ目覚めておりません、この小さな身体で魔獣ごと およそ1km四方を凍らせたと聞きました、魔石で魔力を補充し少しばかりポーションも飲ませましたが、まだまだ魔力の回復が追いついていません、いつ目覚めるかもまだわかりません」
青白い顔をして眠るシルビアの頬に手を当てる。
「冷たいな…」
「このまましばらく様子を見ていてくれ、目が覚めたらすぐに私に知らせるように、夜中でも構わない」
「かしこまりました。」
あの様子ではまだまだアリシアはシルビアを敵視して色々やらかすかもしれない。
私の心配どおり、それからもアリシアはシルビアを虐げ続けた。
シルビアの悪い噂を流し、学園で孤立させていた。
なぜあれほど執拗にシルビアを貶めるのか、ダイアナの洗脳はいつまでもアリシアを支配していた。
帝国から来たシルビアの縁談は、私にはこの上ないチャンスに思えた。
シルビアが嫁いでこの国から出てしまえば、アリシアも落ち着いてくれるだろう。
だが、これまでに広がっているシルビアの評判を聞いて帝国の王太子はどんな反応をするだろう。
私の心配をよそに、王太子殿下はシルビアに関心を寄せ、帝国にこのまま連れて帰りたいと申し出てくれた。
有り難い。
あの様子なら、シルビアは王太子妃としてきっと帝国で幸せになれるだろう。
私は王太子に一も二もなく承諾の返事をした。
どうか、私が出来なかった分もあの子を幸せに…
それだけが私の願いだ。
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