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国王の後悔-5
しおりを挟む「どうしてこんな事をしたのだ?」
私は王妃宮にあるダイアナの自室で全ての使用人を遠ざけ、2人きりになった。
「どうして?本当に分からないの?」
目の覚めるような真っ赤なドレスに身を包み、手に持っていた赤いワインをグッと飲み干す彼女は毒々しく、怪しく、そしてとても美しかった。
「ダイアナ」
「あなたのせいよ。一生私一人を大切にすると言ったのに、『愛するのはお前だけ』?たった3年で私を裏切ったクセに!」
「また、それか… 前にも言ったはずだ。私は国王だ。この国の王なのだ。そなたの事は今も愛している。だが、そなたは王妃の器ではなかった。そなたとの愛に溺れて目が眩み、私は最初の一手を間違えてしまった。」
そう、間違えてしまったのだ。
私は1人の男としてよりもまず、国王になる男だったのだから…
「私の事を間違いだったと言うの?」
「そうだ。初めからそなたを側妃として愛だけを与えるべきだった。そうすれば、そなたをこれほど苦しめる事はなかっただろう。」
「今更もう遅いわ。次々と妃を迎えるあなたを見て、私がどんな気持ちだったかわかる?どんなに惨めで、苦しくて、情けなくて、それでもいつかはまた私だけを見つめてくれる。私とあなたの間にはキースもいるもの。だからきっとまたあなたは前のように私を求めてくれる、そう信じていたのに…あなたはキースを差し置いて、あの女の子供を王太子に選んだのよ!なぜ?どうして?私とあなたの初めての子供なのに…」
私の目の前でダイアナはその美しいピンクブロンドの髪を振り乱し、泣き崩れた。
「ダイアナ、ギャラハン伯爵家では後ろ盾としては弱い。キースが王太子になればきっと他が黙ってはいなかっただろう。魔力の少ないキースでは暗殺されてしまったかも知れない。私はキースが可愛い。そなたと私の子供だ。危険な目に遭わせたくなかった。」
床に座り込み私を憎々しげに見上げるダイアナ。
「今更言い訳なんて聞きたくないわ。私ねもうあなたに期待するのは止めたの。私とキースの幸せは、自分で作り上げるものだって理解したから。だからまず、アリシアを私の人形にしてやったの。何も知らない無垢な少女を人形にするなんて簡単だったわ。そしてあの女に瓜二つのシルビアをまんまと王宮から追い出してやったわ。あの魔力は脅威だもの。私やキースを攻撃されたら大変ですものね。」
「もう止めるんだ、ダイアナ。」
「そして、第二王子を殺してやるつもりだったのに…私聞いたのよ?第二王子が死んでもキースは王太子になれない。王位継承権2位は第三王子のハビエルだって…あなたは一体どれほど私をバカにすれば気が済むのかしら?」
「キースに王位を継がせるつもりは無い。あの子が王位を継ぐと決まった瞬間あの子は命を狙われるようになるだろう。そのくらいキースは危うい立場にあるのだ。私が生きているうちはまだいい。だが私がいなくなればギャラハン伯爵家ではあの子を守れない。」
「詭弁よ。そんな先の事どうなるか分からないじゃない。あなたは、たかが男爵家の妾腹の娘が生んだ王子が王位を継ぐのが嫌だったのよ!どこまで私をバカにすれば気が済むのよ!」
「そうではない。私はそなたの事も、キースの事も愛してる。私が王位を退いたら3人で離宮に移り、平穏に暮らすつもりだったのだ。」
「違う!違う!違う!私はそんな事ちっとも望んでない!少女だった頃から私のたった1つの望みはあなただけだった。あなたさえいればそれで良かったのに…王だから?だったら王になんてならなければ良かったのよ!」
「私は王家の人間だ。生まれた時から王族として王になるべき者として生きてきた。私はこの国に責任がある。そなたとの愛に目が眩み、そなたを無理矢理王妃にした私の責任だ。私が愚かだった。そして私は王として、そなたの罪を裁かねばならない。」
私は部屋の外に声をかけ、王妃を地下監獄に連れて行くように指示を出した。
「衛兵、正妃を地下牢へ。」
「あなたはまた、そうやって私をないがしろにするのね…」
衛兵がダイアナを取り囲み、彼女の腕を掴んだ。
「何をするの?!離しなさい!離せ!私は正妃よ!離して!はなせーーーーっ!!」
部屋の中に1人佇み、ダイアナの怨嗟の声が遠くに聞こえなくなるまで、私はその場から動けなかった。
どうしてこんな風になってしまったのだ…
私が、愛も、王位も全てを手に入れようとしたから…
あの時、ダイアナの為に幼い頃から婚約していた令嬢を捨てたから、私は今もまだこんなに苦しい思いをしているのか…
いっそあの時から全てをやり直せたら私はもっと違う幸せを見つけられたのだろうか…
私はダイアナを一生出られない地下監獄に幽閉した。
地下に閉じ込められてもダイアナは変わらなかった。ずっと私を恨む言葉を繰り返し、呪いのように恨み辛みを吐き続け、私を怨みながら首をくくって自殺した。
自ら首をくくったというのに苦しさに耐えられなかったのか、何重にも巻いたシーツの切れ端を掻き毟るように首に多くの傷を残していたそうだ。
もがき苦しみ、苦悩する表情はとても恐ろしい姿をしていたと報告を受けた。
私は恐ろしくて、ダイアナの最後を見届ける事が出来なかった。
正妃は恐ろしい病に罹り、見るも無惨な恐ろしい姿になったと、ピッタリと柩の蓋を閉め、誰にも開けさせなかった。
ダイアナが一番美しかった頃の肖像画を祭壇に掲げ、美しかったダイアナだけを皆の心に留めていて欲しいと国民に向けて公示した。
ダイアナの葬儀は国をあげて大々的に執り行われ、全ての国民が1ヶ月の喪に服した。
ダイアナの真実は永遠に闇に葬られたのだ。
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