悪虐氷姫の幸せな結婚

nao

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旅立ち-1

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事件から1週間が経ちました。

離宮の皆の手厚い看護のおかげで、私の身体もすっかり元通りになりました。

あれから正妃様とアリシアお姉様がどうなったのかを聞きましたが、私は知らない方がいいと言われて、お父様もリオネル様も誰も教えてくれませんでした。

表向きは、正妃様は東の離宮で病気療養中、お姉様は正妃様の看護の為、一緒に付き添って王宮を出たと言われています。

そうして、事件の真相は闇に葬られたのです。

離宮に戻る前一度お父様にお会いしましたが、まるで10歳も年を重ねたようにすっかりやつれて老け込んでおられました。
私がたくさん心配をかけてしまったから…
本当に申し訳ないと思っています。

リオネル様はずっと私の側にいてくださいました。
3日後には、私はリオネル様とトルティア帝国に向かいます。
リオネル様は、今日も朝早くから甲斐甲斐しく私のお世話をしてくださっています。
隣に座ってお皿に乗った肉やらサラダやらを小さくカットして、私の口に運んでくださいます。
スープなんてフーフーしてくださいます。

「さぁ!シルビア、こちらも美味しそうだよ。はい、あ~ん」

「あ…あの…私、もう自分で食べられますから…」

「ん??」

リオネル様…
その手は下ろしてくださらないのですね…
真っ赤になって素直に「あ~ん」と口を開けます。

うん、とっても美味しい。

「あの…リオネル様もちゃんと召し上がってくださいね」

「食べさせてはもらえないんですか?」

「はへっ?」

なんか変な声出ました…

クスクス笑いながら私の反応を見て楽しむリオネル様。
もう、毎日こんな感じなのにまだまだなれません。


食後は庭へ散歩です。

ゆっくりといつもの倍の時間をかけて歩きます。

「シルビア、うさぎ」

リオネル様のリクエストに応えて掌に小さな氷のうさぎを作ります。

「可愛いね、次は小鳥。」

「はい」

私は水の小鳥を掌の少し上に浮かべます。
そして、リオネル様の差し出す人差し指にそっと小鳥を… 
止まらせます。

「うん、よく出来ている」

リオネル様が私の作った小鳥を人差し指に乗せて、じっくりと検証しています。

「もう魔法を使う事も、制御も随分慣れてきたね」

「リオネル様のおかげです。とっても教えるのが上手だから…」

「そう言ってもらえると嬉しいな」

ニコニコしていたリオネル様のお顔が急に真面目なものになったかと思うと、ふんわりと私の頬に手を添えられました。

「リオネル様?」

「毒のせいでシルビアは魔力を枯渇させるほど使い切ったんだ、そのせいで器が大きくなって、また魔力量が以前より増えると思う、制御が出来るうちは良いが、どのくらい魔力が増えるか分からないうちは、毎日細かい魔法を使って、完璧に制御出来るように練習しよう。大丈夫。私が付いているから。そんな心配そうな顔しないで。君には私も火の神もアスランも付いているから」

そう言って、安心させるように私の頭をポンポンとしてくださいました。

「はい、ありがとうございます リオネル様」

「そうだ、丁度良い。アスランを紹介しよう。」

そう言いながらリオネル様は少し上を見上げて

「アスラン」

と、聖獣様を呼びました。

すると、空間が歪み、中から眩い光に包まれて、鷹によく似た大きな火の鳥が現れました。
あまりの神々しさに私は思わず低く頭を下げました。

「聖獣様、はじめてご挨拶申し上げます。この度は私を助けて下さりありがとうございました。」

『お前は我が主の番だ、気にする事はない』

「アスラン、私からも礼を言うよ。シルビアを助けてくれてありがとう」

『礼には及ばない。用が無ければ私はこれで…』

そう言って、スーッと消えていきました。

「私、聖獣様なんて初めて見ました。」

「今日はまだ力を抑えていたからね、本性はもっと大きくてこの部屋には収まらないかな?」

「すごいです。オーラが物凄く神々しくて、私…鳥肌が…」

思わず両腕で自分を抱きしめました。

「これからは何度だって会えるよ。シルビアは私の妃になるんだから」

「はい」

リオネル様とじっと見つめ合います。

彼の顔がスーッと近づいたかと思うと、唇にふわっと何かが当たりました。
それがリオネル様の唇だと分かって、私はびっくりして、ドキドキして、もう、どう反応するのが正解なのか、とにかく頭の中が真っ白になって、次に来たのは物凄い恥ずかしさでした。

「ごめんね、あんまりにも君が可愛くて、我慢出来なかった」

確信犯ですね。
絶対そうですよね。
私の反応見て楽しんでますよね。

「お手柔らかにお願いします…」

恥ずかしさにうつむきながら、そうお願いしました。


もうすぐ私はこの国を離れます。


いろんな事がありました。
嬉しい事も、悲しい事も。
イレーネ達と別れるのは寂しいですが、私の胸は、これから始まるリオネル様との生活にワクワクしています。
きっと、私は大丈夫。
大好きなリオネル様と一緒だから…

出発の日、イレーネ達は王宮の正面門まで見送りに出てくれました。
笑顔でお別れしようと思っていたのに涙が後から後から溢れて止まりません。

「イレーネ、団長、今まで育ててくれてありがとう。あなた達のおかげで私はとても幸せだったわ。イレーネ、元気でね、手紙を書くわ。私、頑張るから、きっと幸せになるから私の育てのお母様」

イレーネを抱きしめました。

「姫様、勿体ない…どうか、お元気で、お幸せに、リオネル殿下、どうぞ姫様をよろしくお願いいたします。」

「わかりました、お任せください。」

馬車に乗り込み最後のお別れをして、私達は名残を惜しむようにゆっくりと出発しました。

王都の街道からもたくさんの領民が私達を見送ってくれます。

「おめでとうございます!」

「お幸せに!」

「姫様、お元気で!」

みんなの笑顔が私達を見送ってくれます。

「ありがとう!」

「ありがとう!」

私とリオネル様は、見送ってくれる人々に力強く手を振り返しました。






















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