28 / 64
旅立ち-1
しおりを挟む事件から1週間が経ちました。
離宮の皆の手厚い看護のおかげで、私の身体もすっかり元通りになりました。
あれから正妃様とアリシアお姉様がどうなったのかを聞きましたが、私は知らない方がいいと言われて、お父様もリオネル様も誰も教えてくれませんでした。
表向きは、正妃様は東の離宮で病気療養中、お姉様は正妃様の看護の為、一緒に付き添って王宮を出たと言われています。
そうして、事件の真相は闇に葬られたのです。
離宮に戻る前一度お父様にお会いしましたが、まるで10歳も年を重ねたようにすっかりやつれて老け込んでおられました。
私がたくさん心配をかけてしまったから…
本当に申し訳ないと思っています。
リオネル様はずっと私の側にいてくださいました。
3日後には、私はリオネル様とトルティア帝国に向かいます。
リオネル様は、今日も朝早くから甲斐甲斐しく私のお世話をしてくださっています。
隣に座ってお皿に乗った肉やらサラダやらを小さくカットして、私の口に運んでくださいます。
スープなんてフーフーしてくださいます。
「さぁ!シルビア、こちらも美味しそうだよ。はい、あ~ん」
「あ…あの…私、もう自分で食べられますから…」
「ん??」
リオネル様…
その手は下ろしてくださらないのですね…
真っ赤になって素直に「あ~ん」と口を開けます。
うん、とっても美味しい。
「あの…リオネル様もちゃんと召し上がってくださいね」
「食べさせてはもらえないんですか?」
「はへっ?」
なんか変な声出ました…
クスクス笑いながら私の反応を見て楽しむリオネル様。
もう、毎日こんな感じなのにまだまだなれません。
食後は庭へ散歩です。
ゆっくりといつもの倍の時間をかけて歩きます。
「シルビア、うさぎ」
リオネル様のリクエストに応えて掌に小さな氷のうさぎを作ります。
「可愛いね、次は小鳥。」
「はい」
私は水の小鳥を掌の少し上に浮かべます。
そして、リオネル様の差し出す人差し指にそっと小鳥を…
止まらせます。
「うん、よく出来ている」
リオネル様が私の作った小鳥を人差し指に乗せて、じっくりと検証しています。
「もう魔法を使う事も、制御も随分慣れてきたね」
「リオネル様のおかげです。とっても教えるのが上手だから…」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
ニコニコしていたリオネル様のお顔が急に真面目なものになったかと思うと、ふんわりと私の頬に手を添えられました。
「リオネル様?」
「毒のせいでシルビアは魔力を枯渇させるほど使い切ったんだ、そのせいで器が大きくなって、また魔力量が以前より増えると思う、制御が出来るうちは良いが、どのくらい魔力が増えるか分からないうちは、毎日細かい魔法を使って、完璧に制御出来るように練習しよう。大丈夫。私が付いているから。そんな心配そうな顔しないで。君には私も火の神もアスランも付いているから」
そう言って、安心させるように私の頭をポンポンとしてくださいました。
「はい、ありがとうございます リオネル様」
「そうだ、丁度良い。アスランを紹介しよう。」
そう言いながらリオネル様は少し上を見上げて
「アスラン」
と、聖獣様を呼びました。
すると、空間が歪み、中から眩い光に包まれて、鷹によく似た大きな火の鳥が現れました。
あまりの神々しさに私は思わず低く頭を下げました。
「聖獣様、はじめてご挨拶申し上げます。この度は私を助けて下さりありがとうございました。」
『お前は我が主の番だ、気にする事はない』
「アスラン、私からも礼を言うよ。シルビアを助けてくれてありがとう」
『礼には及ばない。用が無ければ私はこれで…』
そう言って、スーッと消えていきました。
「私、聖獣様なんて初めて見ました。」
「今日はまだ力を抑えていたからね、本性はもっと大きくてこの部屋には収まらないかな?」
「すごいです。オーラが物凄く神々しくて、私…鳥肌が…」
思わず両腕で自分を抱きしめました。
「これからは何度だって会えるよ。シルビアは私の妃になるんだから」
「はい」
リオネル様とじっと見つめ合います。
彼の顔がスーッと近づいたかと思うと、唇にふわっと何かが当たりました。
それがリオネル様の唇だと分かって、私はびっくりして、ドキドキして、もう、どう反応するのが正解なのか、とにかく頭の中が真っ白になって、次に来たのは物凄い恥ずかしさでした。
「ごめんね、あんまりにも君が可愛くて、我慢出来なかった」
確信犯ですね。
絶対そうですよね。
私の反応見て楽しんでますよね。
「お手柔らかにお願いします…」
恥ずかしさにうつむきながら、そうお願いしました。
もうすぐ私はこの国を離れます。
いろんな事がありました。
嬉しい事も、悲しい事も。
イレーネ達と別れるのは寂しいですが、私の胸は、これから始まるリオネル様との生活にワクワクしています。
きっと、私は大丈夫。
大好きなリオネル様と一緒だから…
出発の日、イレーネ達は王宮の正面門まで見送りに出てくれました。
笑顔でお別れしようと思っていたのに涙が後から後から溢れて止まりません。
「イレーネ、団長、今まで育ててくれてありがとう。あなた達のおかげで私はとても幸せだったわ。イレーネ、元気でね、手紙を書くわ。私、頑張るから、きっと幸せになるから私の育てのお母様」
イレーネを抱きしめました。
「姫様、勿体ない…どうか、お元気で、お幸せに、リオネル殿下、どうぞ姫様をよろしくお願いいたします。」
「わかりました、お任せください。」
馬車に乗り込み最後のお別れをして、私達は名残を惜しむようにゆっくりと出発しました。
王都の街道からもたくさんの領民が私達を見送ってくれます。
「おめでとうございます!」
「お幸せに!」
「姫様、お元気で!」
みんなの笑顔が私達を見送ってくれます。
「ありがとう!」
「ありがとう!」
私とリオネル様は、見送ってくれる人々に力強く手を振り返しました。
16
あなたにおすすめの小説
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?
ねーさん
恋愛
アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。
何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。
何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。
「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…
【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです
果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。
幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。
ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。
月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。
パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。
これでは、結婚した後は別居かしら。
お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。
だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
魔力なしの役立たずだと婚約破棄されました
編端みどり
恋愛
魔力の高い家系で、当然魔力が高いと思われていたエルザは、魔力測定でまさかの魔力無しになってしまう。
即、婚約破棄され、家からも勘当された。
だが、エルザを捨てた奴らは知らなかった。
魔力無しに備わる特殊能力によって、自分達が助けられていた事を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる