悪虐氷姫の幸せな結婚

nao

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旅立ち-3

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ノースウッド王国を出て1週間。
もうすぐメルク皇国を抜けるという所までやって来ました。

トルティア帝国まではドース国、ベリアル王国と、まだ2カ国を通らなければなりません。

「止まれーーーー!」

先頭を行く騎士の号令で一行全体が一斉に停止します。

今日は初めての夜営です。
騎士達が、兵士と共にきびきびと夜営の準備をしていきます。

テントを立て、火を起こし、夕食の準備をします。
その間、手持ち無沙汰の私は馬の世話を手伝う事にしました。
念入りにブラッシングした後、水をやって飼い葉をあげます。
目が合うと鼻をすり寄せて甘えてきます。

「可愛い…」

「シルビア、ここにいたのか」

「リオネル様!」

私は、軽く手を上げ、こちらに歩いてくるリオネル様の元へ駆けていきました。

「疲れていませんか?」

「はい全然。皆さんに気を使っていただいて、本当にありがたいです。」

「もうすぐ夕食だ、行こう」

「はい」

リオネル様と手をつないで歩いていきます。

この頃リオネル様と一緒に歩く時はいつもこうして手を繋いで歩きます。
嬉しい、恥ずかしい、ドキドキする。
リオネル様と一緒にいる時はいつも温かい気持ちが溢れてきます。

広場には簡易の椅子が並べられ、リオネル様の横に座るようにいわれました。
テーブルはありません。

大きな焚き火の上には見たこともないような大きな鍋がかけられ、たくさんの野菜とお肉が入ったスープがぐつぐつと鍋の中で踊っています。

「そろそろ良さそうですね。」

そう言って鍋を混ぜていた兵士が大きめのお椀にたっぷりとスープをついでトレーに置き、その横に固めのビスケットを添えてくれました。
一匙すくってフーフーと冷まし、ゆっくりと口に運びます。

「美味しい…」

「よかった、夜営の料理は凝ったものが出来ないから大丈夫か心配だったんだ。」

「すごく美味しいです。」

「そのビスケットは硬いからスープに浸しながら食べるんだ。」

カリッ!

「本当にすごく硬いです!」

スープに浸す前に少しかじってみたら本当にすごく硬くてびっくりしました。

「あはは…こんな夜営食でも楽しそうに食べてくれて良かったよ。」

「はい!すごく楽しいです!」

夕食もお腹一杯食べて、片付けが終わると、それぞれのテントに入って休む事になりました。

眠りについてしばらくした頃、外が何だかざわついていて、騎士達のバタバタと走る音で目が覚めました。

「シルビア王女様、起きていらっしゃいますか?」

メイドが声をかけてきます。

「起きてるわ、何かあったの?」

「それが、魔獣が出たようです。」

「魔獣が?リオネル様は?」

「今、他の者が知らせに行っております。間もなくこちらにいらっしゃるかと…」

メイドと話しているとすぐにリオネル様がいらっしゃいました。

「シルビア」

「リオネル様、魔獣が出たと聞きました。」

「ああ、シルバーウルフの集団らしい。20~30頭はいるようだ。」

「結構大きな群れですね。今はどの辺に?」

「ここから5分程の所だ。もうすぐ先頭が見えるだろう。」

「対応はどのように?」

「私が出る。なに、討伐に5分もかからないだろう、すぐ終わる。シルビアはここで待っていてくれ。」

「私も行ってはダメですか?」

「シルビアも?」

「はい、魔獣の討伐は国でもやっていましたし、ご迷惑はかけません。」

リオネル様は少しの間思案して、討伐の同行を許可してくださいました。

「じゃあ、一緒に来てもらおうかな?」

「殿下!?危険です!ご令嬢を討伐に同行するなど!!」

傍で私達の話を聞いていたアンドレ様が慌てて止めに入りました。

「シルビア、君に任せてもいいかな?」

「はい」

「殿下!!」

アンドレ様の口調が厳しくなります。

「大丈夫だよアンドレ、俺がそばでずっと付いているから。」

「ですが…」

「あの、アンドレ様、お願いします。私もリオネル様とご一緒させて下さい。」

「はぁ…絶対にリオネル殿下から離れない事。約束出来ますか?」

「はい、約束します。」

アンドレ様は渋々といった様子で了承してくださいました。

「リオネル殿下、しっかりと奥方をお守りするように!」

「勿論だ。」

「お…お…おお…おくが た…」

「はは、シルビア、真っ赤だ」

そんな事言われても…
奥方だなんて…奥方だなんて…

「殿下、お急ぎください。間もなく囲まれます!」

オスカー様の言葉に周囲に緊張が走ります。

「急ごう、シルビア!」

「はい!」

私はリオネル様と手を繋いでシルバーウルフの元へ向かいました。
    
シルバーウルフは、私達の野営地を囲むように左右に広がり、木々の間に身を隠し、少しずつ迫ってきていました。

「前方はシルビア、頼めるか?」

「はい」

リオネル様が私の隣にピッタリと寄り添って言いました。

「後方はオスカー、エリオ、頼んだぞ」

「承知!」

「了解です!」

前方にリオネル様と私、騎士が10人。
後方にオスカー様とエリオ様、そして同じように騎士が10人背中合わせになって、シルバーウルフに向き合います。

「シルビア、いけるか?」

「はい」

私はシルバーウルフに向かって氷魔法を展開しました。
暗闇に潜むシルバーウルフ達を一気に凍らせます。

「えっ?シルビア、詠唱無し?」

前方のシルバーウルフを全て凍りつけ、リオネル様の驚く様子に構わず、そのまま後方のシルバーウルフに向き合います。

そして、ゴトリゴトリと飛びかかってこようとするシルバーウルフが、氷の塊になって次々と地面に落ちていきます。

「あっという間だったな…」

リオネル様が、ぐるっと周りを見回してそう言いました。

後方で構えていたエリオ様が、氷の塊になったシルバーウルフを、ツンツンとつつきながら

「姫様!この氷ってどのくらいで溶けるんですか?」

と聞いて来ました。

「たぶん1週間は溶けないと思います」

「姫様すごいです。本当にすごいですよ!殿下だったら全部消し炭でしたよ!」

テンションを上げたエリオ様がすごく嬉しそうに言ってくださいます。

「確かに、シルビア王女殿下の魔法でしたら、素材も綺麗に回収出来ますし、あのまま国境警備隊に引き渡せば、きっと喜んでもらえますよ。」

ニコニコ笑いながらオスカー様が言ってくださいます。
オスカー様の笑顔なんて初めて見ました。

「本当ですか?何だかお役に立てたようで、私も嬉しいです。」

今までこんな風に皆で笑って討伐を終えた事なんてなかったので何だかとっても嬉しくて

「今ならどんな魔獣が来ても、秒で討伐出来そうです!」

そうリオネル様に言うと、リオネル様はニカッと笑って、

「さすが、私の婚約者だ」

そう言って、大きな手で、私の頭をわしゃわしゃと撫でてくださいました。

これが仲間というものなのでしょうか。
今までにない皆の笑顔に私も笑顔になります。
皆の笑顔の為ならどんな事でも出来る。
心の中が温かい想いでいっぱいになった一日でした。


















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