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トルティア帝国-1
しおりを挟むトルティア帝国の国境にやって来ました。
どこまでも続く国境の壁は右も左も切れ目が見えないほど続いています。
近づくほどに城門の大きさが目の前に迫って来ます。
向こうからもこちらの一行が見えたのでしょう、城門の上に見える人影が慌ただしく動き出すのが見えました。
城門前に着くと簡単なチェックが行われ、大きな門がゆっくりと開かれました。
1人の騎士が走って来てリオと私が乗る馬車にやって来ました。
「おかえりなさい、殿下!」
「レオ!迎えに来てくれたのか?」
「はい!殿下がお相手を見つけられたと聞いて、居ても立ってもいられなくて!」
「はは…分かった分かった、とりあえず中に入らせてくれ、シルビアを休ませてやりたい、話はそれからだ。」
「了解です!」
「お~い!殿下が休憩される!用意してくれ!」
大きな城門をくぐり国境警備隊が使っている大きな建物にやって来ました。
ここには千人単位の騎士が全員入れるような隊員達の宿舎や食堂、百頭以上の軍馬を世話出来る厩舎や訓練場などが入っているそうです。
それ以外にも城壁の中にも少人数向けの食堂や仮眠室、移動の為の通路など、その大きさや設備の充実具合にトルティア帝国の財力をまざまざと見せつけられました。
騎士が使っている大食堂に案内され、さっきの騎士が自己紹介してくれました。
「はじめまして、シルビア王女殿下。リオネル殿下の側近をしております、レオニード=マーシャルと申します。どうぞレオとお呼びください。以後お見知りおきを。」
物凄く大きな男の人が、きっちり直角に腰を折って、大きな声で挨拶して下さいました、近くで見ると本当に大きいです。
「はじめまして、シルビアリリィ=ノースウッドです、これからもよろしくお願いいたします。」
私が挨拶を返すとレオ様はリオにクルッと振り返って、
「殿下~ 良かったですねぇ、こんなに可愛らしいお嬢さんがお嫁に来てくれるなんて~ 」
と言いながらリオに抱きつきました。
「あー 分かったから 懐くな。」
まるで人懐っこい大型犬の様です。
今にもリオが潰れてしまいそうです。
「レオ、いい加減にしなさい。殿下が潰れてしまいます。」
アンドレ様がレオ様を引き剥がします。
「アンドレ~久しぶりだなぁ…」
そう言って今度はアンドレ様に抱き着こうとして避けられています。
「レオは平民からの叩き上げで土魔法が得意なんです。街で土木作業をやってたレオを召し上げて護衛にしたのが殿下なんです、その為か殿下に並々ならない恩を感じていて、いつもあんな感じなんで気にしないで下さい。」
そうエリオ様が教えて下さいました。
「二人ともとても楽しそうです。皆さんとても仲が良いのですね。」
エリオ様と話しているとレオ様を引き剥がしたリオがこちらにやって来ました。
「シルビア、疲れただろう食事の時間まで部屋で休もう。」
リオの差し出した手を取り、私達は用意された部屋に向かいました。
日当たりの良い温かい部屋に通され、部屋の真ん中にあるソファセットのソファに二人並んで座りました。
きょ…距離が近い…
「シルビア、時間まで少し眠ると良いよ、私にもたれるといい」
そう言って私の頭をこてんとリオの肩に引き寄せてくれます。
恥ずかしくて、とても眠れそうにありません!
とか、言いながらなんだかウトウトしてしっかり眠ってしまいました…
晩餐の準備が整ったと迎えが来て慌てて起きると、リオの顔がアップで…
心臓が痛い…
「あの…リオ、ありがとうございました。重く無かったですか?」
「全然、羽根のように軽いよ」
そう言ってニッコリ笑って私の手の甲にチュッとキスをしました。
「殿下、いい加減にしてください。シルビア様が倒れそうですよ」
「アンドレ、邪魔しないで」
「ほらほら、冗談言ってないで行きますよ。シルビア様もお腹が空いたでしょう?」
そうして私達は晩餐の用意された食堂に向かいました。
その夜の晩餐では多くの騎士に囲まれて皆でワイワイと食事をしました。
あちこちから話しかけられて目が回りそうです。
リオも次々とカップにお酒を注いでくる騎士を相手に大盛り上がりです。
「おめでとうございます!」
「殿下をよろしく!」
たくさんの人に声をかけてもらいました。
こんな事初めてで嬉しくて私もすっかり舞い上がってしまいました。
「姫様の氷魔法は凄いんだ!エアウルフの集団を瞬殺だよ!瞬殺!」
エリオ様、大げさです
「そりゃすげー!」
お願いです、真に受けないでください
「姫様も騎士団に入りませんか?」
いや、無理ですからね
「姫様の魔法が見たいですー!」
ここではマズイでしょう
心の声が止まりません
「はい はい はい みんなシルビアが困ってるから、ほら散れ散れ!」
リオが私の隣にやって来ました。
「シルビア、ゴメンね みんな酒が入って舞い上がってるんだ」
「いえ、楽しいです。」
「シルビアは優しいなぁ~」
リオも少し酔っているのかな?
私の隣に座ってからずっとわしゃわしゃと私の頭を撫でています。
私の頭、鳥の巣みたいになっていそうです。
皆に二人の婚約を祝福されて、私はとても幸せでした。
次の日の朝、私達は予定通り王都に向けて出発しました。
途中の街でもう一泊、そして王都の手前の街でもう一泊して王都に入ってから私とリオは屋根の無いオープンな馬車に乗り換えました。
城までのメインストリートをパレードしながら入城するそうです。
城から呼んだメイドが私をこれでもかというくらい着飾ってくれます。
リオとお揃いの衣装を着て、リオとお揃いの組紐で髪を飾ってもらい、馬車は色とりどりの薔薇の花で飾られ、馬車をひく4頭の馬は全て美しい白馬です。
今日のこの日を待っていたようにメインストリートは花で飾られ、両脇には私達を一目見ようと多くの人が詰めかけていました。
「おめでとうございまーす!」
「お幸せにー!」
「リオネル様ー!」
「おかえりなさーい!」
両脇の建物からは花びらが蒔かれ、風に乗って舞い上がる様子はまるで雪のようです。
「シルビア様ー!」
「ようこそトルティアへー!」
どの顔も皆な笑顔で私にも祝福をくれます。
嬉しくて、嬉しくて、じんわりと涙が浮かびます。
いまにも零れそうになる涙をリオがスッとハンカチで拭って下さいました。
「きやーーー!!」
仲睦まじい様子の私達二人を見て、沿道から悲鳴が上がります。
「ありがとうございます、私、こんなにお祝いしてもらえるなんて凄く幸せです。リオ、本当にありがとうございます。」
王城までの道は、花吹雪と歓声がいつまでも続いていました。
王城に着くと私達は休む間もなく帝王陛下との謁見に臨みました。
こんなヨレヨレの姿で陛下の前に出るなんてとても恐縮ですが私の隣でリオがしっかりと手を繋いでくれたので、私はその手をしっかりと握り返して「大丈夫だ」と言うように力強くうなずきました。
「陛下、リオネル王太子殿下と婚約者のシルビアリリィ=ノースウッド王女殿下が到着なさいました。」
「入れ」
大きな両開きの扉が左右に開きました。玉座までは赤いカーペットが敷かれ、両脇には少なくない貴族の皆様が並んでいました。
玉座の前まで進み、二人で頭を下げました。
「父上、ただいま戻りました。」
「無事に戻って良かった。そちらがノースウッド王国の姫か、顔を見せてくれるか?」
「さぁ、シルビア」
「初めてお目にかかります。ノースウッド王国 第二王女シルビアリリィ=ノースウッドでございます」
そう言って、私はゆっくりと顔を上げました。帝王陛下はリオにとても良く似ていらっしゃいました。
赤い髪、赤い瞳の美丈夫で、リオが加護の力で金色を帯びている為その色こそ少し違いますが、お顔立ちはリオそっくりです。
「遠い所よく参られた。帰ってすぐに呼び出して悪かった。どうしても明日まで待ちきれなくてな」
「本当ですよ父上、まだパレードの疲れもそのままにすぐに呼ばれるなんて思いませんでしたよ。おかげで二人ともこんなにヨレヨレです。」
「まぁそう言うな、それほど待ちかねていたのだよ。アスランから知らせを聞いてわしがどれ程喜んだ事か、なかなか戻らぬから振られていないかヤキモキしておったのだぞ。」
「それは、ご心配をおかけしました。でもこの通りしっかり嫁を掴まえて帰って参りました。どうぞ思う存分褒めてください。」
「そうだな、良くやったリオネル。今日はもう疲れたであろう、続きはまた明日ゆっくりと聞かせてもらおう。明日は晩餐の準備をしておくから一緒に食べよう。それまでゆっくりすると良い。」
「わかりました。ありがとうございます。では、また明日。」
「行こう、シルビア」
「はい、失礼いたします陛下。」
そう言って、私達は『玉座の間』を後にしました。
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