悪虐氷姫の幸せな結婚

nao

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魔術学園-8

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【アリアン=アメリー ②】


どこの馬の骨とも知れない小国の王女を婚約者にしたと聞いて私がどれほど絶望したか分かる?
目の前が真っ暗になって倒れそうになったわ。

しかも15歳

私と同じ歳

学園にやって来た彼女を見て憎しみが湧いたわ。

王女を毎朝送って来るリオネル様。
馬車から降りるのをエスコートし、彼女を引き寄せ彼女の頭にキスをしている。
周りからは二人の姿にキャーキャーと奇声が上がっているわ。
私の隣にいるキリエがギリギリと音がしそうなくらい歯を噛み締め、握りしめた拳はブルブルと怒りに震えていたわ。

その気持ちはとてもよく分かるわ。
でも、淑女としてその顔はどうなのかしら?
ドン引きよ。

私は涼しい顔をしてその光景を毎日見ていたわ。
心の中は嵐のようだったけれど…

シルビア王女には殺意しか湧かない。

キリエを上手く誘導してシルビア王女に嫌がらせを始めたわ。
シルビア王女の表情が陰ると少し溜飲が下がったわ。
けれど毎朝毎朝イチャイチャする二人を見て怒りがどんどん膨れ上がっていったわ。

嫌がらせも失敗
キリエをけしかけても失敗
毒を仕込んでも失敗

なんとかしてシルビア王女を痛い目に遭わせてやりたい。

男に襲わせる?

彼女の強さに返り討ちにされそうよね。

キリエに命令されたフリをしてもう一度襲ってみる?

か弱いフリをして涙の1つでも流したら同情してやられてくれないかしら?
あの顔に傷の1つでも付けられたらいい気味なんだけれど…

シルビア王女にか弱いフリをして手紙を渡し、人気のない奥庭の噴水の側で彼女を待ったわ。

青白い顔色に(もちろんメイクよ)悲しげに伏せたまつ毛が哀愁を漂わせているわ。
私の演技は完璧よ。

「私に会いたいなんてどういったご用件でしょう?アメリー子爵令嬢」

私は彼女に背を向けたまま肩を震わせたわ。

ぐす…ぐす…

泣きながら肩を震わせうつ向く少女を見て同情しない人間なんていないわよね。

「アメリー子爵令嬢、泣いていては分かりませんわ。お話とは一体何でしょう?」

ぐす…ぐす…

「シルビア王女殿下、申し訳…ありま…せん…私…もう…これ以上は耐えられなくて…キリエ様に命令されて、今まで…王女殿下に酷い事を…本当にごめんなさい…」

「アメリー子爵令嬢?」

彼女が一歩また一歩と少しずつ近づいて来るわ。
私は両手の中に握り込んでいる毒入りの小瓶の蓋をそっと開けて、彼女の顔に振りまいてやる準備をしたわ。

「酷い事って何でしょう?悪意ある噂を吹聴した事ですか?それともコソコソと泥棒のようなマネをした事ですか?毒入りケーキも貴女がやった事ですか?」

「いいえ、いいえ、私は何も…確かに王女殿下の持ち物を隠したりはしましたけれど、悪戯の範囲ですわ。それだってキリエ様に命令されて仕方なく…でも本当の事を言う勇気も無くて、私…本当にやりたくなかったんです。でもキリエ様の命令がどんどんエスカレートしてきて、私もう耐えられなくて…」

うつ向いて涙を流す私の肩に王女が手をかけた瞬間に私は振り向きざま王女の顔を目がけて小瓶の中身をかけてやったわ。

それなのに、突然私と王女の間に氷の壁が現れて、その壁に弾かれた毒入りの小瓶が私に向かって降りかかって来たのよ。
私は慌てて避けたけれど小瓶の毒が私の首の後ろから背中、そして左肩に掛かってしまったの。

「ギャーーーッ!!痛い!痛い!」

私は毒を洗おうと噴水の中に飛び込んだわ。
でもあまりの痛さに水の中で必死にもがくけれど痛みは少しも収まってくれない…

涙が溢れ、毒の触れた部分を手で押さえるけれど、痛みが増すだけだったわ。

誰か助けて、誰か…

その時力強い腕が私を水から引き上げてくれたの。
王女の護衛騎士だったわ。
エリオだったかしら…

シルビアは私の側に慌ててやって来て私の傷を冷やしてくれたわ。
眉間にシワを作り、痛みに耐えるような悲しそうな瞳をして、私の傷を癒してくれた…

悔しい
悲しい
痛い
辛い

シルビアに助けられた事に腹が立った。

誰のせいでこんな事になったと思っているのよ!

色んな感情が押し寄せてきて涙が止まらない。

この騒ぎを聞きつけた先生達がやって来て、保健医が私の傷を癒してくれたけれど傷が完全に治る事は無かったわ。
それでもやっと痛みが引いて落ち着いてくると私はそのまま意識を手放したわ。

気がついたら私は自宅の自分の部屋だった。
あれから3日も経っていたなんて…

お父様が部屋へやって来て、私の今後の話をしてくれたわ。私と婚約者のジャックは王族毒殺未遂で極刑が決まったそうよ。
あのバカな男は少しの拷問で私がしてきた事を洗いざらい全て話してしまったのよ。
毒の入手経路からロビーナを嵌めて罪を被せた事まで全部。
なんて口の軽い男なの。

私は、私が目覚めるのを待っている警備隊にこのまま連行されて、事情を聞かれるそうよ。
そして、おそらくジャックと共に極刑に処され、数日後にはギロチンにかけられるそうよ。

はは… 笑ってしまうわね…

お父様は私の起こした事件を聞いてまるで老人のようになってしまったわ。
お母様も倒れてしまったそうよ。

家は没落、両親は平民に落とされて強制労働に行かされるそうよ。

あ~あ  失敗しちゃったわ…
上手くやっているつもりだったのに…
何処で間違っちゃったのかしら?

シルビアに傷の1つもつけられなかった事が悔やまれるわね。

キリエはクロス侯爵の嘆願で修道院送りで済んだそうよ。

元はと言えばあの女に同調してあんな事件を起こしてしまっただけなのに…

皆キリエが悪いのよ!
私は悪くないわ。
シルビアだって私達の前で必要以上にイチャついて私達を刺激するからいけないのよ。

なんて酷い女なの!
次々とライバルを消していくなんてとんでもない悪女だわ。

私はただリオネル様が好きだっただけなのに…

私は悪くない
私は悪くない
私は悪くない


私が目覚めて10日
王都中央広場で私とジャックの処刑が執行された。

処刑場に現れたリオネル様が真っ直ぐ私を見つめている。

あぁ リオネル様
私の最後を見届けに来てくださったのですね。
私はあなたの心に一生残る事が出来るのだわ。
リオネル様 愛しています。
どうか私を忘れないで。
アリアン=アメリーというこの名を一生あなたの心に刻んでいて。
たとえこの命を落とそうとも私の心はいつまでもあなたのもとに…
あぁ 最後に私の姿をあなたの瞳に映すことが出来るなんて、幸せだわ…


とても幸せよ…



















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