54 / 64
討伐依頼-3
しおりを挟む【リオネル】
今年も南の砂漠に竜討伐にやって来た。毎年砂漠に発生する火の季節の主、火竜の討伐は我が国の最重要案件の1つでもある。
火の季節は火竜の繁殖期。
ここで討伐しておかないと火竜が増えすぎて砂漠の国を超え、他領や王都までもが危険に晒される事になる。
10年前から私が父に代わり毎年火竜の討伐にやって来ているのだが、私の身を狙っているのは火竜だけではなかった。
16歳で初めて竜討伐にやって来たその夜私の寝所に女が入り込んできた。
私は暗殺者だと思いその女を瞬殺した。
女は筆頭族長カーンの娘だった。
私の妻の座を狙ってカーンが送り込んできたのだ。
その頃の私は女性に対し、非常に冷めていたので近づく女をことごとく排除していたのだ。
カーンの娘もその例に漏れず、私の手によって殺された。
私は
「死にたくなければ二度とこのような事はするな。次は無いと思え」
そう言って釘を刺したが族長達がそれに懲りることは無かった。
次の年は堂々と私に女をあてがって来た。
私の寝所で待っていた女が4人。
全て族長からの貢物だそうだ。
私は寝台に寝転がり、女の好きにさせたがピクリとも反応する事は無かった。
「用が済んだならさっさと出ていけ邪魔だ」
次の日、王子は不能だと噂が回った。
全く碌でもない女達だ。
好きでもない女に反応するわけがないだろう。
それから今まで毎年毎年、手を変え品を変え私を籠絡しようと頑張っていたみたいだが、私は族長達の罠に嵌ることはなかった。
気に入らない女に直接手を下した事もある。
魅了を使おうとした女は極刑に処した。
あれは第三族長の娘だったか…
私は彼らに恨みを買うような非道な事をした自覚はある。
だが、この街の男は女を道具のように思っている節がある。
女はアクセサリーであったり、奴隷であったり、都合良く使える物なのだ。
だから、失敗したと思う事はあっても、使えない女だったと思うだけで何の感情も湧かないようだった。
女達には気の毒だと思うが私にも感情がある。族長達の思い通りになる気はない。
今年はシルビアを連れてきた。
私の最愛、強く美しく正義感あふれる私の妃。
まだ婚約者だが…
もしも族長達がシルビアに手を出すようなら容赦はしない。
まぁ、シルビアは負けないだろうが…
「シルビア、族長達の魔の手から私を助けてほしい」
私はシルビアを自分の寝室に呼び、同衾する事に成功した。
「シルビア、そろそろ寝ようか」
「は…はい…」
「リオ、本当に来るんでしょうか?」
「ああ、間違いなく来るね。毎年毎年、彼らは懲りると言う事を知らないんだ」
暗闇の中、リオの腕の中でもぞもぞと緊張した様子のシルビア
可愛い…
すると、コトリと音がした。
腕の中のシルビアの身体が緊張して硬くなるのが分かる。
そして、衣擦れの音。
私達の横たわる寝台の天蓋がそっとめくられ、
「リオネル殿下…」
男を誘惑する艶めかしい声がした。
「誰だ?」
私は火魔法で火を灯す。
腕の中に愛しいシルビアを囲い、女を睨みつける。
「夫婦の寝室に夜這いとは随分厚かましい女だな」
「え?ウソ…!」
私の腕の中で顔を真っ赤に染めたシルビアを見て、女の顔が青ざめた。
「お前は第二族長シリカの娘か…命が惜しければ今すぐここから出ていけ!」
絶対零度の低い声が響く
「も…申し訳ありません…」
そう言うと女は慌てふためいて部屋から出て行った。
「あはは…シルビア、ありがとう。君のお陰で今日からゆっくり眠れそうだ」
「リオのお役に立てて良かったです。では、私も部屋に戻りますね」
そう言って寝台から出ようとしたシルビアの腕を掴み、私の胸の中に再び抱き寄せた。
「リ、リオ…」
「シルビア、帰らないで、何も不埒な事はしないと誓うから、だからどうかこのままで朝まで君と一緒にいたい」
そう言って、シルビアを寝台に押し倒し上掛けを被ってそのままシルビアを抱き締め、その唇に貪るようなキスをした。
ああ、このまま彼女を抱いてしまいたい。
そんな欲望を笑顔で隠して
「さぁ、もう何もしないからゆっくりお休み」
そう言ってもう一度シルビアの唇を奪った。
「何もしないって言ったのに…」
拗ねたような彼女の言葉に理性が飛びそうになるが、私は耐えた。
こんなに可愛いシルビアを前にして私は自分の忍耐の限界に挑戦した。
「ゴメンゴメン、さぁ眠って。もう本当に何もしないから」
そう言いながら、シルビアの髪を撫で、前髪を避けて彼女の額にお休みのキスをした。
しばらくすると、シルビアの規則正しい寝息が聞こえてきた。
私の腕の中で眠るシルビアをそっと窺うと、スリスリとまるで猫のように私の胸に身体を寄せて来る。
なんて可愛いんだ。
ここにいる間は、毎日一緒に眠ろう。
私は心の中でそう決めて、シルビアを抱きしめて眠りについたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?
ねーさん
恋愛
アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。
何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。
何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。
「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…
【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです
果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。
幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。
ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。
月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。
パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。
これでは、結婚した後は別居かしら。
お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。
だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
魔力なしの役立たずだと婚約破棄されました
編端みどり
恋愛
魔力の高い家系で、当然魔力が高いと思われていたエルザは、魔力測定でまさかの魔力無しになってしまう。
即、婚約破棄され、家からも勘当された。
だが、エルザを捨てた奴らは知らなかった。
魔力無しに備わる特殊能力によって、自分達が助けられていた事を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる