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メイストームのあとは飛行機雲
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昴希達はまず一年生の教室前に翼を案内した。その隣の階段へは、帰宅する生徒が次々と吸い込まれるように飛び込んでいく。
その軽快さを分けてほしいと思ってしまう程度には昴希の身体は重かった。常にヘビが首に巻きついているような、感覚的な息苦しさを翼の隣にいると感じてしまう。
だが、それはそれとして役目は終わらせたいと考えていた。それもできるだけ早く。
「俺たちがいるのが特別棟。四階はアルファクラスの教室で下は授業で使う特別教室があるんだ。」
それから昴希は腕を上げて窓越しに向かいの校舎を指す。顔はさすがに見えないが、大勢の生徒がいるのがシルエットでわかる。
「向かいはB組からD組の教室がある教室棟で、そこと繋がる渡り廊下みたいなのが教養棟。職員室は教養棟の二階だね。」
少し声の出づらさを感じながら穏やかな声で話すも、関心があるのかないのか翼は無反応だ。昴希の指を追うように顔を動かすが表情は全然変わらない。
「言われてもよくわかんないよな。ちょっと一周してみるか。」
その反応をどう解釈したのか、直人がとんでもない提案をする。さすがの昴希も思わずぎょっとした。言葉の説明だけでさっさと解散するつもりだっただけに、少しの時間とはいえ気が重い。
ゲストでもある翼が帰りたいと言ってくれればいいのに、という昴希の願いも虚しく、無情にも翼は頷いて快諾した。
二人に気づかれないようにため息をついてから教養棟へ向かおうと顔をあげれば、昴希は周囲のさざ波のような控えめな騒がしさに気がついた。
彼らの視線の先からよく見知った生徒が小走りでこちらに向かってくる。彼は昴希と目が合うと満面の笑みを浮かべ、背景に花が見えそうなそれによって周りが再び落ち着きをなくした。
「昴希くんッ。久しぶり。」
「久しぶりだね、千彰。そっちも終わった?」
弾む声は少年らしい甘さを残しているが、昴希達と同じ二年生で声変わりも終わったと言っていた。
大きな目が印象的な美少年、入梅 千彰の登場に、注目が集まったのは気のせいではないだろう。
少女のような可憐さとはまた違う、あどけなくも美しい千彰は一部から「姫」とあだ名されている。
本人がそれを聞いても何の反応も返さないため、定着してしまったところもあるのだが。
「春休み中にパパと出かけたからお土産買ってきたよ。」
「入梅、悪いんだけど……。」
「黙れゴリラ。……っていうかこのモジャモジャ何?」
翼に気を利かせて止めに入る直人をゴミのような目で見る千彰。
彼はその愛らしさで非常に有名なオメガではあるが、同時に大のアルファ嫌いで毒舌でも知られている。
昴希には分からないが、ややフェロモンが強いせいなのか、千彰は直感的にアルファが分かることがあるようだ。
そのセンサーは翼にも反応したらしく、初対面で言葉を交わす前から不審人物を見るようなじとっとした目つきで翼を睨みつける。
その視線を受けながらも翼はマイペースというか、特に怒ったり千彰をナンパしようとすることもなく、じっと彼を見るだけだった。
そして何故か昴希の方に尋ねてくる。
「このちっこいの何?」
初対面での悪口が気に入らなかったのか。やはり千彰のような美少年は気になるのか――。当たり前のように表情からは伺えない。
長い前髪の隙間から覗くどろりとした瞳からは感情は感じられず、それが不思議と昴希の背筋を寒くさせる。
千彰は正反対に心の動きを隠そうともせず、毛を逆立てた猫のように、警戒心を目からも引き結んだ口元からも露わにしている。
昴希に腕をぎゅうっと絡ませて、翼とわずかでも距離を置くかのように強く引いた。
「僕は昴希くんの恋人ですー。あんまり昴希くんに近づかないで。減ったり汚れたら困るから。」
胸の奥に慣れた小さな痛みが走る。
千彰は昴希の“秘密”を知らない。昴希がアルファだと思い込んだ上で並々ならぬ好意を寄せてくれていた。
良くも悪くも有名な彼との交際は、昴希がアルファであるという“嘘”に真実味を持たせてくれている。
なりゆきで打算がない始まりであったが、時を重ね関係が深まるごとに、昴希の心に罪悪感が寄せてくるようになった。そうかと言って知られるわけにもいかず、中途半端に漂うものを胸のうちに抱える日々が続いている。
僅かな心の揺れを勘付かれないよう、必死にしがみつく手に自分の手を優しく重ねる。意識せずとも自分の口元が微笑んでいることは分かったが、動揺を押し殺すようにさらに口角に意識を向ける。視線も指先も硬くなってはいないだろうか。
「転入生だよ。学校案内しないといけないから、あとで美術室に行ってもいい?」
美術部に所属している千彰は放課後は大抵そこにいる。
かつては彼を目当てに入部希望者が殺到したが、千彰の冷たい態度と視線に次々惨敗することになったらしい。
首を傾げてドラマに出てきそうな優しい恋人の声色で尋ねる昴希に千彰は何度も何度も頷いて応える。
「うん、待ってる。絶対、約束だよ。……っつーかクソゴリラ。今日智めっちゃ具合悪そうだったけど。」
安心出来たところで千彰はガラリと表情を変えて直人を睨む。しがみついた腕はそのままだった。
どうやら智と千彰は今年も同じクラスだったようだ。賑やかな千彰と極端に口数が少ない智は意外な組み合わせだが仲はいいらしい。一緒にいる姿はよく見かけるし、双方から相手の話題もよく聞かれた。
「え、やっぱ?あー……。」
そんな彼から恋人の体調不良を聞きつけあからさまに動揺する直人に、昴希はシッシッと手を振り行くように促した。
言い出しっぺの直人がいなくなることに恨みがましい気持ちがうっすらないわけではないが、智の体調が悪いのであれば直人が行かなくてはいけないだろう。
「こっちは大丈夫だから。」
オメガだと勘づいた翼と二人きりになることを心配しているのだろう。気にするように何度かこちらを見つつ「悪い。ごめんな。」と繰り返し小走りでその場を去っていった。
千彰も「あとでね。絶対だよ。」と念を押してから美術室へと戻っていく。
二人が遠くなると一気に静かになる。
昴希だけが一方的に感じているだけかもしれないが、微妙な空気が漂いだして少し気まずくなった。
どんよりとした曇り空のような気持ちを切り替えようとふっと息を吐き出す。
「なんだかバタバタしてごめん。」
「別に。っつかさぁ、こーちゃん本当にアレと付き合ってるの?」
アレという言い方ではあるが、やはり千彰に関心があるのだろうか。交際の中身はさておき、事実上恋人同士であることに違いはないのでひとまずは一つ頷いて答える。
千彰とは手をつないだことしかない。健全といえば健全だが、男子高校生が半年以上付き合っていてキスもしたことがないのは不自然かもしれない。
「普段はああだけど、可愛いんだよ。」
実際昴希も、千彰が甘く可愛らしく振る舞う様子にドキドキしたこともある。
それに直人を嫌いながらも、智に何かがあるとすぐに呼びにくる。わざわざアルファクラスまで。そんな優しさや情の深さを昴希も感じていて、友人としてすごく好ましいと感じていた。
自分で聞いておきながら興味を失ったのか、翼はふいっと顔の向きを変えて何も言わずに歩き出す。気まぐれな彼を追いかけるようにして昴希も学校案内を再開した。
その軽快さを分けてほしいと思ってしまう程度には昴希の身体は重かった。常にヘビが首に巻きついているような、感覚的な息苦しさを翼の隣にいると感じてしまう。
だが、それはそれとして役目は終わらせたいと考えていた。それもできるだけ早く。
「俺たちがいるのが特別棟。四階はアルファクラスの教室で下は授業で使う特別教室があるんだ。」
それから昴希は腕を上げて窓越しに向かいの校舎を指す。顔はさすがに見えないが、大勢の生徒がいるのがシルエットでわかる。
「向かいはB組からD組の教室がある教室棟で、そこと繋がる渡り廊下みたいなのが教養棟。職員室は教養棟の二階だね。」
少し声の出づらさを感じながら穏やかな声で話すも、関心があるのかないのか翼は無反応だ。昴希の指を追うように顔を動かすが表情は全然変わらない。
「言われてもよくわかんないよな。ちょっと一周してみるか。」
その反応をどう解釈したのか、直人がとんでもない提案をする。さすがの昴希も思わずぎょっとした。言葉の説明だけでさっさと解散するつもりだっただけに、少しの時間とはいえ気が重い。
ゲストでもある翼が帰りたいと言ってくれればいいのに、という昴希の願いも虚しく、無情にも翼は頷いて快諾した。
二人に気づかれないようにため息をついてから教養棟へ向かおうと顔をあげれば、昴希は周囲のさざ波のような控えめな騒がしさに気がついた。
彼らの視線の先からよく見知った生徒が小走りでこちらに向かってくる。彼は昴希と目が合うと満面の笑みを浮かべ、背景に花が見えそうなそれによって周りが再び落ち着きをなくした。
「昴希くんッ。久しぶり。」
「久しぶりだね、千彰。そっちも終わった?」
弾む声は少年らしい甘さを残しているが、昴希達と同じ二年生で声変わりも終わったと言っていた。
大きな目が印象的な美少年、入梅 千彰の登場に、注目が集まったのは気のせいではないだろう。
少女のような可憐さとはまた違う、あどけなくも美しい千彰は一部から「姫」とあだ名されている。
本人がそれを聞いても何の反応も返さないため、定着してしまったところもあるのだが。
「春休み中にパパと出かけたからお土産買ってきたよ。」
「入梅、悪いんだけど……。」
「黙れゴリラ。……っていうかこのモジャモジャ何?」
翼に気を利かせて止めに入る直人をゴミのような目で見る千彰。
彼はその愛らしさで非常に有名なオメガではあるが、同時に大のアルファ嫌いで毒舌でも知られている。
昴希には分からないが、ややフェロモンが強いせいなのか、千彰は直感的にアルファが分かることがあるようだ。
そのセンサーは翼にも反応したらしく、初対面で言葉を交わす前から不審人物を見るようなじとっとした目つきで翼を睨みつける。
その視線を受けながらも翼はマイペースというか、特に怒ったり千彰をナンパしようとすることもなく、じっと彼を見るだけだった。
そして何故か昴希の方に尋ねてくる。
「このちっこいの何?」
初対面での悪口が気に入らなかったのか。やはり千彰のような美少年は気になるのか――。当たり前のように表情からは伺えない。
長い前髪の隙間から覗くどろりとした瞳からは感情は感じられず、それが不思議と昴希の背筋を寒くさせる。
千彰は正反対に心の動きを隠そうともせず、毛を逆立てた猫のように、警戒心を目からも引き結んだ口元からも露わにしている。
昴希に腕をぎゅうっと絡ませて、翼とわずかでも距離を置くかのように強く引いた。
「僕は昴希くんの恋人ですー。あんまり昴希くんに近づかないで。減ったり汚れたら困るから。」
胸の奥に慣れた小さな痛みが走る。
千彰は昴希の“秘密”を知らない。昴希がアルファだと思い込んだ上で並々ならぬ好意を寄せてくれていた。
良くも悪くも有名な彼との交際は、昴希がアルファであるという“嘘”に真実味を持たせてくれている。
なりゆきで打算がない始まりであったが、時を重ね関係が深まるごとに、昴希の心に罪悪感が寄せてくるようになった。そうかと言って知られるわけにもいかず、中途半端に漂うものを胸のうちに抱える日々が続いている。
僅かな心の揺れを勘付かれないよう、必死にしがみつく手に自分の手を優しく重ねる。意識せずとも自分の口元が微笑んでいることは分かったが、動揺を押し殺すようにさらに口角に意識を向ける。視線も指先も硬くなってはいないだろうか。
「転入生だよ。学校案内しないといけないから、あとで美術室に行ってもいい?」
美術部に所属している千彰は放課後は大抵そこにいる。
かつては彼を目当てに入部希望者が殺到したが、千彰の冷たい態度と視線に次々惨敗することになったらしい。
首を傾げてドラマに出てきそうな優しい恋人の声色で尋ねる昴希に千彰は何度も何度も頷いて応える。
「うん、待ってる。絶対、約束だよ。……っつーかクソゴリラ。今日智めっちゃ具合悪そうだったけど。」
安心出来たところで千彰はガラリと表情を変えて直人を睨む。しがみついた腕はそのままだった。
どうやら智と千彰は今年も同じクラスだったようだ。賑やかな千彰と極端に口数が少ない智は意外な組み合わせだが仲はいいらしい。一緒にいる姿はよく見かけるし、双方から相手の話題もよく聞かれた。
「え、やっぱ?あー……。」
そんな彼から恋人の体調不良を聞きつけあからさまに動揺する直人に、昴希はシッシッと手を振り行くように促した。
言い出しっぺの直人がいなくなることに恨みがましい気持ちがうっすらないわけではないが、智の体調が悪いのであれば直人が行かなくてはいけないだろう。
「こっちは大丈夫だから。」
オメガだと勘づいた翼と二人きりになることを心配しているのだろう。気にするように何度かこちらを見つつ「悪い。ごめんな。」と繰り返し小走りでその場を去っていった。
千彰も「あとでね。絶対だよ。」と念を押してから美術室へと戻っていく。
二人が遠くなると一気に静かになる。
昴希だけが一方的に感じているだけかもしれないが、微妙な空気が漂いだして少し気まずくなった。
どんよりとした曇り空のような気持ちを切り替えようとふっと息を吐き出す。
「なんだかバタバタしてごめん。」
「別に。っつかさぁ、こーちゃん本当にアレと付き合ってるの?」
アレという言い方ではあるが、やはり千彰に関心があるのだろうか。交際の中身はさておき、事実上恋人同士であることに違いはないのでひとまずは一つ頷いて答える。
千彰とは手をつないだことしかない。健全といえば健全だが、男子高校生が半年以上付き合っていてキスもしたことがないのは不自然かもしれない。
「普段はああだけど、可愛いんだよ。」
実際昴希も、千彰が甘く可愛らしく振る舞う様子にドキドキしたこともある。
それに直人を嫌いながらも、智に何かがあるとすぐに呼びにくる。わざわざアルファクラスまで。そんな優しさや情の深さを昴希も感じていて、友人としてすごく好ましいと感じていた。
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