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第3部 邪神乱舞

【8章】93話 冥界からのヘルプ

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「アルラトゥ、お茶しに来たわ♪」
「あら、ネフティス、久しいわね、嬉しいわ♪」

「で、そちらの女は新しい死人?」
「違うわ、現世での私のお茶飲み友達、ラマシュトゥとセクメト」

「『残忍に幼子を亡き者する天の娘ラマシュトゥ』と『病の風を吐く女神』、珍しい組み合わせね」
「現世でいつも夫の悪口を云っている仲なのよ」

「聞いているわ、パズズの件、残念だったわね」
「私はせいせいしたのよ、セクメトとネフティスにお祝いの言葉をもらったのよ♪」

「そう、なら私もお仲間かもしれないわね、ネルガルにはうんざりしていたのよ!だいたいなんで私が、泣いて妻にしてほしいと頼んだのよ!」
「あいつ、私の湯あみをのぞき見して、口説いてきたのよ、しつこかったのよ、根負けして夫にしたら、あることない事言いふらし、いつか殺してやろうと思っていたの!」

 そのあと、出るわ出るわ、アルラトゥの愚痴、そして隠しおおせぬ殺意。

「ところで聞くけど、ネルガルが死んだらどうするの?」
「……せいせいして、あとはどうなってもいいわ……」

 ネフティスが、
「近頃、『負の気』が少ないのは知っている?」
「知っているわ、でも理由は知らない、私は冥界から出られないのは知っているでしょう?」

「実はね……」

「そうなの……なら、どう転んでもネルガルは死ぬのね!」

「でね……」

「えっ、皆で女奴隷に?正気なの?」

「ラーフが……」

「タラネが気絶?ほんとなの?ホムンクルスよ、彼女たち、タフなのよ」

「アンドリューが?アンドリューって、大昔、私たちと戦うために生み出された兵器じゃないの!私たちの一部を取り込んでいるのよ!タラネは不完全だったけど、アンドリューはそうじゃないわよ……」

「そのアンドリューが、『遣わされた一人の者』のベッドでよろしくやっているのよ」

「……でも……わかったけど、私はどうなるのよ……出れないのよ、この牢獄のような冥界から……」

「一つ手はあるわ、タラネはタローマティの『負の気』に芯まで染まっていた、いわばタローマティの『呪い』、『遣わされた一人の者』が、『解呪』したとしか考えられない……」

「……わかったわ、その話、乗るわ!」

 冥界で四人が話し込んでいる時、聖天様と帝釈天様が、ニヤニヤしながらこの会話を聞いていました。
「面白いことになってきたな、邪神ども、根絶やしにできそうではないか?」
「『白い秘薬』、『赤い霊薬』、『聖水』か……聖天よ、汝の案を聞いたときは、ここまで想像できなかったぞ」

「『名をはばかる方』は、救えるものは救いたいとお考えなのだ、しかし色々やらかしてはいるので、まぁあの者の女奴隷として、エーリュシオンで楽しく暮らせば良しとすべきだろう」
「確かにな、まことに『名をはばかる方』のお考えは正しい、少しばかり我も力を貸してやるか?」

「どうするのか?」
「『遣わされた一人の者』に嘆願できるように、通信手段をやるのさ、あの者、たしか『トランシーバー』なるものを、女たちに取り寄せさせられていただろう?それにヒントを得たのだ」
「よく分からんが?」
「あの者に追加の神通力を授け、天耳(てんに)通だ、他心(たしん)通もあればいいが、あの者には少しばかり荷が重いだろう」
「そのトランシーバーをだな、今話ししている邪神どもに授けるのだ、そして一心に念じれば、あの者のトランシーバーにつながるというわけだ、あとは邪神どもの心がけ次第ということになる」

「なるほど」
「一応、あの者に知らせてくれないか、我はこの邪神どもに天啓と『トランシーバー』を授ける」

「帝釈天、えらく肩入れするのだな」
「成り行きが面白くてな」
「見ていてわくわくするのだ、我も少しばかり舞台に上がるのもいいだろう?」

 冥界では四人の話が続いている。
 そこへ……

「えっ」
 
 ラマシュトゥ、セクメト、ネフティス、アルラトゥの四人は同時に叫んだ。
 そして『トランシーバー』が四人の手にあった。

「阿修羅の上位神……」

「これ……通じるの?」

「私が試してみるわ!」
 アルラトゥが『トランシーバー』に念を込めた。

 その頃……
 
「あら、メールが来ているわ?えっ『聖天様』から?」

 この後、直ぐに『トランシーバー』に綺麗な邪神から通信が入る……
 善処をお願いする、あとで褒美も考慮する。

 べつに『ご褒美』なんて、気を遣わなくても……

「イルマタル・ロイスターよ、私に何か用かしら、邪神さん」
 
「つながった……私はアッカドのアルラトゥ」
「冥界の女王アルラトゥさんですか」 

「助けて欲しい」
「いいわよ、神様から『善処』を、お願いされていますからね」

「その前に教えていただきたい、『神の呪い』は『解呪』出来るのか?」
「邪神の呪いなら、問題は無いはずよ、『聖水』ならね」

「誰か取りに来れば?一瓶差し上げるわよ」
「……」

「私の腹心であるベーレット・セリなら、冥界の入口までは何とか出てこれる、そこまで来ていただくわけにはいかぬだろうか?」
「構わないわよ、その入り口はどこにあるの?」
「人を食う河(フブル川)の地下水脈は魔物が生息する川のさらに下を流れている、それは西方の地にも幾つかある、そのうちの一つは『魔物平原』を流れている」

「魔物平原?あそこを流れる川って一つしかないけど、その川のどこに行けばいいの?」
 話を聞いてみると、アーヴェさんの件でカノーヴァ子爵領まで行ったときにの、川を渡った場所なら、一番『負の気』が多く、腹心さんなら、真夜中、短時間この世に出てこれるようです。

 ただ私の前には立てないので、タラネさんを指定してきました。
 魔物除けをつけずに、魔物平原をうろつけるのは、ホムンクルスさんか、私の戦闘侍女頭さんだけですからね。
 私は500メートルほど離れる必要があるそうです。
 でも、タラネさんを私は『手を付けて』いるわけで……意味が無いと思われるけど……

 そういうわけで、久しぶりの SHERP ATV の出番です。
 私、イルマタルと、オーレリーさん、タラネさん、そして筆頭戦闘侍女頭のヴェーパチッティさんの四人で出かけます。 

 えっ、邪神ぐらいになると、魔物除け位は何とか耐えられる……
 同行した筆頭戦闘侍女頭のヴェーパチッティさんが、車中で教えてくれました。
 さらに、『聖水』の瓶、というより、私の三種のお薬の容器は、邪神といえど触れるそうです……
 なぜなら、『負の気』に染まった者が、自らを浄化しようとしたとき、容器を触れなくてはね……
 良く出来ているようです……
 
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