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第七十二章 家族
家族会議? 其の一
しおりを挟むイシスさん、見たことのない空間へ運ばれました。
仄暗い空間に美子さんと、見ず知らずの男女が五人、たたずんでいました。
「茜姉さん、紹介するわね、こちらのお二人が、私と姉さんを生み出された、神産巣日神様と高御産巣日神様、つまり私たちの両親」
「そしてこちらが、神産巣日神様と高御産巣日神様をおつくりになった、天之御中主(あめのみなかぬし)様、つまり私たちのおじい様」
「そしてこの二人が後で説明するけど、お三方に使える侍女さん、まだ予定ですけどね」
……
茜さん、しばらく絶句していましたが、
「造化の神々様ですか……しかし、なぜ私が娘なのですか……」
神産巣日神が、
「美子は確かに私たちの一部を分けて生み出した娘、貴女とは血がつながってはいない」
「しかし茜さん、貴女も私たちが手塩にかけて、生み出したのは確かなの」
「貴女の昔の記憶は、全て私たちが仕込んだものなの、許してね」
「本当は遥かな古代に、ある人物の、魂の良質な部分を分離して作り上げたのが貴女」
「確かに私たちは、貴女の生みの親は間違いないのよ」
……
高御産巣日神が、
「都合のいいことと憤慨するだろうが、いま美子のお陰で、世界を根本で支配していた、利己特性を誘発する憎悪の波動は、幸せの波動というべきものに変えることが出来た」
「私たちの役目は終わった、そして神の神なる天之御中主様は三千世界を離脱された、私たちも従って去るつもりだった」
「しかし美子が引き止めてくれた、そして天之御中主様も美子の願いにより、体の一部を留め置かれることを了承された」
「私たちは話し合い、これからは美子と貴女の家族として、二人の活躍を見守りたいと決めた」
「いま私たちは貴女に謝り、私たちを家族として受け容れてほしいと願っている、どうだろうか?」
「……そんなの……決まっているわ!オフ・コースよ、オフ・コース!」
この後、さすがの茜さんも、声を上げて泣いたのです。
神産巣日神が優しく茜さんを抱きしめています。
「お母様!私はうらやましかった、美子がうらやましかった!」
「薄々きずいていたの、私は造られた女、そして美子には両親がいるけど、私にはいない、肉親と呼べるのは美子だけ、さびしかった……」
神産巣日神にひしと抱きつき、さらに泣き続けています。
「お父様、私は娘なのですね!」
今度は高御産巣日神に抱きついています。
「私たちの娘だよ、天津吉川の長女だよ」
「天津吉川?」
「私たち一家の姓と決めたのだ、貴女は天津吉川茜、天津吉川高御産巣日と天津吉川神産巣日の長女で、天津吉川美子の姉だ」
そして茜さんは、少しばかり照れくさそうに天之御中主に抱きついて聞きました。
「私のおじい様なのですか?」
「茜は私の可愛い孫娘、天津吉川天之御中主は、貴女の『じい』だ」
茜さん、この言葉に微笑みます。
茜さん、ここで美子さんの手をとり、
「ありがとう、まさかこんな日がやってくるなんて……本当にありがとう」
「姉さん、幼い頃の帰り道、二人で誓ったではないですか、手をつないで家に帰ろうと」
「いま私たちは、手をつないで家に帰ってきたのです」
「これからは家族として、この世界の人々を守り育て、天之御中主様の御本体に会いに行きましょう」
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