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しおりを挟む棒立ちになっている僕を抱きしめるエドワードは、すごくご機嫌だった。
美味しいステーキを頬張る僕を眺め、終始にまにましている。
大物の後援者を獲得したことが、嬉しくてたまらないみたいだ。
最近胃が痛くて、ステーキはしんどいのだけど、エドワードの心遣いが嬉しかった僕は、なんとか完食した。
湯浴みを終えて寝室に行けば、寝台を囲むように、キャンドルがたくさん並べられていた。
部屋が橙色に包まれて、あたたかい。
ほっこりしていると、寝台に腰掛けていたエドワードが、僕の両手を握った。
「ノエルの誕生日をやり直しさせて欲しい」
「……エディー」
エドワードの海のような瞳は、僕を求めている時の目。
正直、疲れているし、痩せた体を見られるのが嫌で、僕はぎこちない笑みになってしまう。
僕の複雑な気持ちに気付いたのかはわからないけど、エドワードはくしゃりと顔を歪めた。
「俺が不甲斐ないばっかりに、今年も誕生日を一緒に過ごせなくてごめんな……」
「ううん」
「でも、もう安心してくれ。ノエルを必ず幸せにするから。俺の夢が叶ったら、次はノエルの夢を叶えよう」
「…………僕の、夢?」
なんの話だろうと、僕は首を傾げる。
僕の夢は、エドワードが主役を務める舞台を観ること。
だから、二人の夢は同じようなものなんだ。
いつまでもぼーっとしている僕に、エドワードが小さく笑って立ち上がった。
「結婚して、田舎に帰って、両親と仲直りをして……。ノエルの実家の宿屋を継ごう」
「っ…………うんッ!!」
ぱあっと笑顔になった僕は、今でも両親に会いたいと願っていることに気付いてくれていたエドワードに抱きついた。
僕の夢が叶う日は、いつになるかはわからない。
それでも、僕がおじいちゃんになった時に隣にいるのは、やっぱりエドワードがいい。
久々にエドワードに甘える僕は、田舎町の小さな宿屋で、家族みんなで笑って過ごす夢を見た。
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