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しおりを挟むレオンさんとの約束をして一ヶ月が経ち、季節は春を迎えていた。
結局、僕の夕飯を食べてくれる人はレオンさんだけだった……。
エドワードときちんと話し合いたかった僕は、レオンさんに僕が必ず家にいる日時を伝えてもらっていた。
何度か手紙でやり取りをしたのだけど、どうしてもやらなければならないことがあるらしく、会えずじまい。
明らかに避けられていることに気付いた僕は、レオンさんにお願いして、エドワードのところへ連れて行ってもらうことにした。
僕が行けば迷惑になるってわかっているけど、もう別れたいのなら、ハッキリ言って欲しい。
幼馴染みに戻って、傍にいられなくなったとしても、僕は遠くからエドワードを応援するつもり。
でも、エドワードと別れるなんて一度も考えたことがなかった僕は、いざ別れたいって言われたら、受け入れられるのかな……?
今まではエドワードの気持ちを優先して来たけど、別れ話をされた時は、ちょっとだけ我儘を言ってみたいと思う。
◆
今日は劇団の人たちが集まるパーティーがあるから、そこに突撃する予定だ。
というより、なぜかエドワードに怒っているレオンさんがそう決定していた。
夜会だと聞いたから、夜から始まるパーティーなのだと思っていたのだけど、どうしてか一日空けて欲しいと言われた僕は、朝からレオンさんを待っていた。
そうしてやってきたのは、お花の妖精のような儚い容姿の男の子だった。
「わあっ! 本物のノエルちゃんッ! ようやく会えたっ! はじめまして。レオンの友人のアルバートだよ、よろしくね! アルって呼んで? で。さっそくだけど、今日の夜会に着ていく衣装は、グリーンでいいかな? 僕と同じ体型だから、直しをしなくてもピッタリだと思うッ!」
ひょろい僕と同じような体型なのに、元気溌剌な男の子──アルバートくんの圧に、僕は口をはくはくとさせていた。
ラベンダー色の髪と瞳がすごく綺麗で、男の子なんだけど、お金持ちのお嬢様みたいだ。
「おい、アル。ノエルちゃんが困ってるだろ? しかも、なんでわざわざ緑なんだよ……」
「ふふふふふっ。あの馬鹿を正気に戻すためにそ決まってるじゃないっ! 恋人が心変わりしそうになってるってわかれば、きっと飛んでくるはず!」
「えっ。ノ、ノエルちゃんが、俺を……?」
「は? なんで照れてるの? 略奪以前に、想いも伝えてないくせにっ。気持ち悪っ。レオンのためじゃないからね? ノエルちゃんのためだからッ! それに、今回はきっとスペシャルゲストもいるしね? ムフフ……。残念ながら、レオンは蚊帳の外かもよ? 誰がノエルちゃんを幸せにしてくれるんだろうね~?」
なにやら含み笑いをするアルバートくんに、ドン引きしている様子のレオンさん。
頭を抱えているけど、仲が良いことが伝わって来ていた。
そんな彼らの後ろからは、スーツ姿の大人が続々と荷物を運んで来た。
箱の中からは派手な衣装や装飾品が出てきて、僕の小さな家が荷物でぎゅうぎゅうになった。
「さて、始めますか!」
「あ、あの、僕はどれを着たら……」
「なに言ってるの? まずは髪の毛からだよ!」
「……へ?」
蜂蜜のような液体の入った、透明な瓶を手に取るアルバートくんに詰め寄られる僕は、あれよあれよという間に素っ裸にされて浴室に放り込まれていた。
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