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しおりを挟む療養して三ヶ月。
幼い頃から宿屋の仕事を手伝っていた僕は、働くことが当たり前だったのに、今は仕事もせず、時間に追われることのない日常を送っていた。
生活魔法も使わないし、睡眠をたっぷり取っているからか、顔色も良くなっている。
料理長のバートさんのご飯は美味しいし、おやつも食べているから、少しずつ体重も増えていた。
それなのに、体はとても軽い気がするんだ。
療養した当初は、どうしても堕落した生活に思えてしまったけど、僕の人生の中で、最も心に余裕のある生活を送っていることには違いなかった。
まったりと過ごすことが、今の僕の仕事なんだ。
そう教えてくれたのが、いつも僕と一緒にいてくれるユージーン様だ。
母親の話をしてくれた時は、ユージーン様が孤独な気持ちを抱えていることがひしひしと伝わってきて、ただ話を聞いていただけなのに、僕も胸が痛くなっていた。
誰彼構わず優しく接して、笑顔を振りまく偽者の王子を演じることに疲れてしまったそうだ。
舞台俳優にも未練はないと話していたけど、今は疲れているからそう思うだけで、本当は好きな仕事なんじゃないかと僕は思っている。
僕が初めて観た舞台に立っていた王子様は、その場にいた誰よりも輝いて見えた。
観客を一人残らず魅了するユージーン様を、もちろん僕もすごいと思ったし、役者に向いていると思うんだ。
だから今は、僕と一緒にお休みをしましょうと提案したんだ。
それから僕とユージーン様は、時間を気にせず、好きなことをして過ごしている。
一緒に料理もしたし、この前なんて、みんなで変装をしてお出かけもしたんだ。
スキンヘッドのバートさんに、僕と同じ桃色の髪のウィッグをかぶせて、大盛り上がり。
みんなに揶揄われて仏頂面になるバートさんを、僕がふざけて『お兄ちゃん』と呼んでみたら、みんな大爆笑だった。
この時僕は、ユージーン様が腹を抱えて笑っているところを初めて見たんだ。
ユージーン様の屈託のない笑顔を見た僕は、今の穏やかな時間が、いつまでも続くといいなあと思っていた。
この場に恋人のエドワードがいないのに、そう思ってしまったんだ……。
エドワードと恋人になってからは、毎日のようにエドワードのことを考えていたのに、今の僕は、ユージーン様のことで頭がいっぱいになっている。
もっとユージーン様のことを知りたい。
これからも、いろんな表情を見せて欲しい。
そして、もう悲しい顔を見たくない……。
恋人がいるのに、他の人のことを気にかけてしまっている僕は、もうエドワードの隣にいることは出来ないと思う。
エドワードに失礼だ。
だから僕は、エドワードに手紙を書いた。
エドワードを応援している気持ちは変わらないけど、冷静に二人のことを振り返ることが出来て、自分なりに思うことがたくさんあった。
うまく伝えられるかはわからないけど、今の僕の素直な気持ちを伝えたい。
そして僕は、エドワードと三ヶ月ぶりに再会することになった。
エドワードの稽古後、夕方に会えることになり、僕はバートさんたちと一緒に、エドワードの好きな甘さ控えめのクッキーを用意していた。
談話室でみんなとお喋りをしながらエドワードを待っていると、約束の時間より一時間も早くエドワードがやって来た。
久々に見たエドワードが、使用人のみんなを睨みつけている姿に、僕は驚きすぎて言葉を失った。
「ノエルッ!!」
「うぶっ」
青色の瞳が僕を認識した瞬間──。
僕は、エドワードに飛びつかれていた。
すごい衝撃でおかしな声が出てしまったけど、エドワードはお構いなしに僕をぎゅうぎゅうと抱きしめ続ける。
人前でも声を我慢することなく泣いているエドワードは、どうしてか僕に謝罪し続けていた。
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