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しおりを挟む軽く摘めるサンドイッチや、焼き菓子を差し入れし、劇団の一員になった気分を味わっていた僕は、現在、華やかなパーティー会場の壁の花になっていた──。
後援者の美しい女性と腕を絡めているエドワードを遠くから眺めること、早三時間。
僕のことを毎日のように好きだと言っているエドワードが、どうして僕にこんな仕打ちをするのだろうかと、心の底から理解出来なかった。
僕が恋人ではなく、幼馴染みとしてエドワードを応援していたのならば、話は別だったと思う。
でも今の僕は、僕のために変わろうと努力するエドワードを、恋人として支えたいと思う気持ちが強くなっていたから、胸が痛くて仕方がなかった。
……僕は、この場にいる意味があるのかな?
しかも、他の劇団の人たちから見たら、僕たちは理想のカップルで、僕は理解のある子らしいから、この状況を当たり前だと思っているみたいだ。
息が詰まる。
神経質なセルジオさんに怒られながら、喫茶店で働いていた方がまだマシだ。
雑用の僕がいなくなったところで誰も困らないと思うけど、一心不乱に仕事がしたくなっていた。
なにもしていないのに疲弊している僕は、気分転換したくてバルコニーに出る。
新鮮な空気を吸うはずが、前回のパーティーで嫌な思いをしたことが蘇って来た。
「はぁ……。帰りたい……」
後援者の人たちとの会話を楽しむエドワードは、遊んでいるわけじゃない。
でも、隣にいる女性の立派なお胸が、エドワードの腕にぴったりとくっついている光景が頭から離れない。
……僕にはないものだ。
どうすることもできない、平らな胸を見下ろす僕は、溜息が止まらなくなっていた。
この状況を理解しなければならない気持ちと、エドワードが舞台俳優を続ける以上、一生この気持ちを味わい続けなければならないのかという葛藤。
今は僕を好きだと言ってくれているけど、もし僕と喧嘩をしたら、後援者の人たちと一線を超えてしまうかもしれない。
あれだけ密着していれば、魔が差すこともあると思う。
僕はその時、理解のある恋人を演じられるのかな……?
悶々と考え込んでいるうちに、パーティーは終わりを迎えていた。
そして、ひとりぼっちの僕を迎えに来てくれたのは、赤髪の友人だった。
後援者を馬車に乗せて、すぐに僕の元へ駆けつけてくれたレオンさんは、髪型が乱れている。
「ノエルちゃん、遅くなってごめんね」
「……どうしてレオンさんが謝るんですか?」
「ずっと気になってたんだけど、俺も後援者を優先したから……」
「っ、当たり前のことですよ!」
「いや、本当ごめん。一緒に帰ろう、送るよ」
にっこりと笑顔を見せてくれたレオンさんが、僕に手を差し出した。
迷わずその手を取ると、少し汗を掻いていた。
きっと僕を心配して、全力疾走して来てくれたんだと思う。
今日のパーティーに参加している人の中で、僕のことを心配してくれる人は、誰もいなかったのに……。
レオンさんはちゃんと僕を見てくれていたんだ。
僕を見守ってくれている人が、また一人増えた。
そう考えると、元気を取り戻すことができた気がする。
今はいないけど、頼れるアルバートくんもいる。
衣装を取り扱っている商店の跡取り息子のアルバートくんは、実は忙しい人だったりするんだ。
それでも僕に会うために時間を作ってくれているアルバートくんが、僕は大好きだ。
本当なら一緒にパーティーに参加して欲しいって頼みたいけど、そんな図々しいことは言えない。
『変な虫がつかないように見張っててね!』って言われているんだ。
「アルバートくんに、良い報告ができそうです」
「え。やめて? なにを言うつもり? アイツを怒らせたら、俺の鼓膜が死ぬから」
「ふふふっ」
「っ、おーい、ノエルちゃーん??」
わざとらしくぶるりと体を震わせるレオンさんは、終始ふざけているのだけど、大丈夫だと言わんばかりに、僕の手を強く握ってくれていた。
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