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83 カーター
しおりを挟む「金髪でもない。エメラルドグリーンの瞳でもない。なにより、色気が足りない。そんなお前が、私の身代わりになんてなれるわけがないだろう」
「っ……」
「お前の中の私は、相当性悪らしいな?」
ふっと鼻で笑ったユージーンを見たエドワードは、今まで誤解していたことにようやく気付いたようだ。
「自分が逃げ出したいから、俺を……利用したんじゃ……」
「ああ。利用したといえばしたな? お前が、身代わりになれないと確信していたからだ。現にお前は、ユージーンと呼ばれていないだろう」
「っ、当たり前です! 俺はエドワードだ!」
「…………それはみんな知っている」
一から十まで話さなければならないのかと、顔に書いてあるユージーンは、説明することを諦めた。
「いつまでも底辺にいるお前が主役の座を掴むには、あの女の力が必要だった」
「は……? 今……俺を主役にしようとしていた、って聞こえたんですけど……」
「そうだが? 私は、お前に破滅してほしいわけじゃない。理由は単純に──」
「ノエルちゃんのため! ですよね?」
稽古の前に話し合う二人の間に突入したレオンが、ニカッと笑った。
ああ、と頷いたユージーンは、『恋敵がレオンではなくて本当によかった』と嫌味を放つ。
ユージーンに認められているレオンが、赤髪を掻いて照れた表情を見せる。
その顔を睨むエドワードは、駄々を捏ねる子供のようだ。
「ノエルのため……?」
「お前がどうしようもない男でも、ノエルにとっては大切な友人には変わりないのだからな? そんなこともわからないだなんて、」
「まあまあ、誤解が解けたんだからいいじゃないですかっ!」
納得していない様子のエドワードを見て、深い溜息を吐いたユージーン。
やはりお前にノエルは任せられない、と呟いた。
ノエル君のことは、事前に冒険者ギルドで保護するように依頼をしているそうだ。
今頃同じ魔法使いたちが、ノエル君を歓迎していることだろう。
だから稽古に集中しろと告げたユージーンを、エドワードが目をまん丸にさせていた。
本気を出したユージーンは抜かりない。
特にノエル君のことに関しては、エドワードは手も足も出ないだろう。
さっと台本を手にしたユージーンだが、まだ話し足りないエドワードがそれを奪い取る。
「最初から演技で勝負するつもりだったなら、どうして地方を走り回っていたんですか」
「ふっ。教える義理はない」
「っ、」
明らかに不貞腐れるエドワードに、やれやれと首を振るユージーン。
完全に子供扱いされているのだが、今のエドワードなら仕方がないだろう。
もう少し周りが見えるようになるまで成長してほしいものだ。
渋々台本を返したエドワードに、呆れたような視線を向けたユージーンだが、口を開いた。
「少し考えたらわかるだろう。ノエルのためだ。ついでに、お前の両親も舞台に招待しておいた」
「っはあ!?!?」
「無様な姿は見せられないな?」
挑発するように笑うユージーンは、いつまでもうじうじしているエドワードの尻を叩く。
ここでエドワードが挫折すれば、ヴァイオレットは彼を切り捨てる。
一生主役にはなれないだろう。
彼女のことを誰よりも理解しているユージーンは、ノエル君のためにエドワードに火をつける。
元々後輩の面倒を見ていたユージーンだが、それもヴァイオレットに強制されていた行動。
だか今は、自らの意思で動いている。
本当に頼もしい存在だからこそ、引退するには惜しいと思ってしまう。
それでも、ヴァイオレットの目を覚まさせるためには、ユージーンもここから飛び立つべきなのだ。
そのためにも、エドワードにはしっかりしてもらいたいのだが、本気のユージーンの演技に圧倒されて、台詞が飛んでいた……。
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