尽くすことに疲れた結果

ぽんちゃん

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 ──ノエルの誕生日前日。

 冒険者ギルドにいた俺は、護衛担当者の顔を見てげんなりしていた。


 「やっぱり姫の恋人じゃなかったんじゃない」
 「……君さ。顔を合わせる度に、胸を抉るようなことを言わないでくれないか?」


 ノエルをこよなく愛しているがゆえに、俺がノエルの職場を調査依頼した時に、辛辣な言葉を吐いた少女──マリン。
 今日も大きな菫色の瞳を怒らせている。


 「ヘタレなパパは、バツイチ子持ちじゃ無理だあ~って部屋にこもって泣いてるしっ。姫は、マリンのお母様になる予定だったのにぃ~!!」


 俺の目には、自信に満ち溢れて見えたギルド長が、実は四年前からノエルに片想いしていることをさらっと聞いてしまった俺は、頭を抱えたくなっていた。

 マリンと共にギルドを出て、目的地に向かう。
 まだ雪は降っていないが、冷え込んでいる。
 夜空を見上げる俺は、ノエルがちゃんと防寒具を着てくれているのかを心配していた。
 もし、俺のプレゼントした防寒具を装備していてくれたなら──。
 そこまで考えた俺は、誰になにを言われても、やっぱりノエルを諦めきれていない。


 未練たらたらでダサい俺だが、今日はかっこいいところを見せるつもりだ。


 「それで、ユージーンさんはちゃんと呼んでくれたんだろうな?」
 「イグニスが行ってるよ? でも、あのデカブツも姫の信者だから……どうだろう? ちょっと不安になってきたッ」
 「っ、オイ。ちゃんと依頼したんだから、任務を遂行してくれよな?」
 「わかってるよっ! 姫のために頑張るなら、アンタが屑でも協力するに決まってるじゃないっ!」
 「……一言余計なんだよ。友達いないだろ」
 「い~ま~すぅぅ~ッ!! 姫の講習会で、魔法使いのお友達がたくさん出来たんだからっ! 可愛い子がいても、絶対紹介しないからねッ!?」


 おふざけをしていたのはここまでで、黒塗りの馬車を目視した俺たちは、気合を入れ直した。
 やはり来ていたな……。
 そう呟く前に、マリンがヴァイオレット様の監視に向かった。
 その背を見送った俺は、ノエルが待っているであろう、駅のホームに向かって歩き出す。


 魔法列車の到着をそわそわしながら待っているノエルを発見し、俺は一年前を思い出していた。


 「あの時は、喜ぶノエルに飛びつかれても、俺は時間ばかりを気にして……。魔法列車がこんなにデカかったなんて、今気付いた……」


 はっと自嘲気味に笑った俺は、本当になにも見えていなかった。


 ずっと、ノエルがひとりで魔法列車の旅を楽しんでいたとばかり思っていた……。
 なんで俺は、なにも聞かなかったんだろうな。
 半年以上前からノエルが楽しみにしていたのに、俺は魔法列車にまったく興味がなかったんだ。
 それでも、どこへ行ったのか聞けばよかった。
 そうしたらノエルが魔法列車に乗らなかったことに、気付けたのに……。
 後悔することばかりだ。


 一人椅子に座っているノエルに近付くと、俺に気付いて大きな目が丸くなった。
 寒いからか、ふっくらとした頬が僅かに赤くなっている。

 しかも……。
 猫のような、三角の耳の形をしたモコモコの帽子が、可愛すぎるだろう。

 誘拐されるぞ。

 一目見てそう思った……、が。
 格段に可愛らしくなっているノエルを見て、俺と別れて正解だったんだなと、今初めて思った──。
 












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