魔女の施し、魔女の恩返し

清水柚木

文字の大きさ
16 / 23

第16話 しゃっくり200回

しおりを挟む
ヒルデガルド嬢はマリア嬢とランチをして帰る運びとなった。

マリア嬢は食事の際にもヒルデガルド嬢に叱られていたが、嬉しそうに笑っていた。そこには確かに友情があった。

そして私を先頭に、騎士達に囲まれながらヒルデガルド嬢は再び王城の廊下を歩いている。午前中より人通りが多い王城は、更にこれみよがしな嫌味が続いている。しゃっくり100回では少なかったか。

静々しずしずとヒルデガルド嬢の行列が進む中、前から堂々と歩いてくる子供が見えた。お坊ちゃんだ。

「騒がしいですね。王城はいつからこの様に下世話な世界に成り果てたのですか?」

可愛らしい声が、つんざくような喧騒を止めた。

「良い大人がコソコソと悪様あしざまに言うとはみっともないですね。このような大人にはなりたくないものです。ああ、反面教師というものですか?だとしたらありがとうございます。貴重なことを習ったと父とクリングヴァル公爵に伝えますね。私は記憶力が良い方なので良かったですね」

お坊ちゃんがニコリと笑うと、貴族達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。みっともない。ここはお坊ちゃんの顔に免じて、しゃっくりが200回止まらない魔法で許してやろう。

「アウグスティン様、公爵家のご子息ともあろう方があの程度の嫌味に反論してはいけませんわ」

おーい、ここでも指導って、ヒルデガルド嬢もいい加減にしなさい!ここはお礼を言うところでしょう!

「僕は子供だから関係ありません。言いたいことは言わせてもらいます」

ニコリと笑って流すお坊ちゃんは、1日で強くなったね。私は感動して涙が出ちゃうよ?

「アウグスティン様……『僕』は……」

「今は子供だから良いんです。ですがここからは、ヒルデガルド嬢の婚約者です。大人に相応しい行動をします」

お坊ちゃんは騎士の女性達をすり抜ける。さすが身体能力抜群なだけある。騎士達が驚いているじゃない!

「お手をどうぞ、婚約者様?」

お坊ちゃんがスッと手を差し出した。エスコートしようと言うのだ。この国で1、2を争う権力者の家系がふたりでいれば、それは誰も陰口など言えないだろう。ましてやお坊ちゃんは正当なる後継者だ。

「………………」

お人形さんは動揺してないように見える。でも、よく見るとその指が微かに震えている。男性恐怖症は子供でも駄目なのか……。

「……よろしくお願いしますわ。アウグスティン様」

お人形さんがお坊ちゃんの手の上に手を重ねる。お坊ちゃんはその手を握ったりしない。だからだろうか。ヒルデガルド嬢のお付きの人たちも一様にホッとした顔をする。

そしてそのまま、ふたりは歩き出した。

もう、お坊ちゃん、オルガは感動の涙が出ちゃうよ!子供の成長は早いと言うけれど、お坊ちゃんは早すぎだ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

三年目の離婚から始まる二度目の人生

あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。 三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。 理由はただ一つ。 “飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。 女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。 店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。 だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。 (あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……) そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。 これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。 今度こそ、自分の人生を選び取るために。 ーーー 不定期更新になります。 全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

処理中です...