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零弐 狂わしい金ね板の楽譜
五音
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陽炎さんへの報告を纏めたのは翌日の夜近くになっての事だった。部屋で糸を通し、紙を綴っていれば、
「『魔力』とやらの事は、書かなかったのか?」
相部屋とはいえ馴れ馴れしく、あいつが近づいてくる。
「雷継の言葉のほかには、何の証拠も残っていない。僕自身、十分な説明をする事が出来ない。不確かな事を報告する事は出来ない」
「むしろそれを書かずに報告書まとめられるのが凄いな」
僕は小さく首をすくめた。
「ってか、それを書けば、勝手に家を燃やした事を釈明できただろうに」
「だから、説明ができない。どうせ微かな罪だ、大人しく罰を受ける」
こいつは僕の先ほどの言葉を聞いていなかったのか?
「ん、聞いてはいたさ。しかし、裁の国にだって『異能』なんて力があるだろう? その『魔力』とやらがあってもおかしくないと俺は思うけどね」
今は煙管を持っていないのに、檸檬の香りがする。服に染みているのだろう。存在を主張しているようで好きになれない。
「裁のあれとは、話が違うだろう」
「俺たち非異能にしてみれば、ほとんど同じだろ」
裁の国の人々は、特別な力を持つ。一言で「異能」と呼ばれるが、その中身は人により違うらしい。嘘を見抜いたり壊れたものを直したり、どれも偽を理に直す力だと言われている。この異能を使い、裁の国は多くの国々を従えているのだ。
「……それよりも、雷継が問題だ」
僕は話を逸らして綴り終えた糸を結びにかかった。
あのあばら屋での一件の後、雷継は魂が抜けたようにしているという。今日は楽団の練習を早くに切り上げて彼の客室で独り籠もっているとか。僕に何か言付けがあるでもない。そもそも、密かに持ち込まれた「楽譜」、密かに作られた「楽器」を壊したことに責を問うことなどできないだろう。そういう意味で、秘め事は賭け事に近しい。彼らも分かっていたのだろうし、僕も分かっていて壊した。ただ、血が焦げついた歯車など、燃え残ったかすかな部品を見たときには妙な気分になった。今となっては、何の意味もない証拠だ。
「意味がない、とか言うなよ」
ふいに紫煙が言った。
「説明できずとも、あれが何人もの人を殺したんだろう?」
「……」
竹屋の主人、琴弾きの男児、地獄耳の老爺、大工の妻、楽団の横笛と太鼓奏者。彼らは、燃えたあばら家の下にあった狭い地下でまとめて見つかった。骨まで見えるような歯車の噛み傷から血を失いすぎて倒れ、誰にも気づかれぬまま揃って息を引き取っていた。床が燃え、穴が開いてから広がりはじめた臭いには、ぞっとしたものだった。
雷継は、あのあばら屋で地下を見つけ、隠されていた楽器だけを引き上げていたのだ。僕が踏み込んだ時に綺麗だったのは雷継が血を拭きとっていたから。仲間の死を知っていて、あそこまで落ち着いて楽器の「手入れ」をしていた彼は、やはり、正気ではなかったのだろう。
(……やはりあの楽器と、楽譜は、壊すべきだった)
そう思うしかない。
しかし一つ、気懸りなのはーー
「……なあ、今暇だろ。ちょっと付き合えよ」
「いや、悪いが」
「悪かろうが良かろうがな、任務が終わって報告書も書いた今、忙しいとは言わせないぜ」
いつになく強引な紫煙に、僕は目を瞬いた。
今日は閉まっている竹屋「光堂」向かいの甘味屋には、看板娘もまたいなかった。席に着いた紫煙は勝手に結い青梅を二つ頼むと、僕に向き直った。
「何故ここに?」
「いや、何となくな。前に美味いと聞いたから来てみたかったんだ」
「知り合いと来れば良かっただろう」
「じゃあお前と来ても構わないな?」
「僕より親しい奴なら幾らでも居るだろう」
「でも、お前と来ても構わないだろう? 俺はお前と来たかったんだ」
僕は諦めて、出された茶に口をつけた。仄かな甘みが心地良い。
「……気になってるんだろ、楽譜のこと」
「……」
ちらりと見やれば、今は店内に誰もいない。店主も奥に退がっていた。僕は口を離して、潤った唇を舐める。
「……気にならないはずがない」
あの時。燃える楽器の中から、まるで初めから無かったかのように楽譜は消えていた。
「実は木製だった、あっという間に燃えちまった……なあんて事はないか?」
「ない。他の部品はまだ残っていたし、それに」
僕は袂から小さな金ね粒を取り出した。
「それは?」
「楽器を蹴り壊した時に、楽譜から飛んだ」
「お前、金ねでできた楽譜を蹴り壊したのか?」
何故そこで面白がるのか、紫煙は愉快そうに目を細めた。
「お前って細いくせして案外やるよな。あの雷継を背負ったり」
「背負うだけならやりようだろう」
「おー、今度教えてくれよ」
僕は楽譜の突起だった金ね粒を掌で転がす。
あの時……楽器を蹴り壊したとき、僕は当然金ね板の楽譜を壊そうとしていた。あれが最も危ないもので、燃えた程度の熱で溶けるかも分からなかったのだから当然だ。薄い金ねを歪ませた感触はあったし、破片も飛んできた。楽譜は確かに壊した。
(だが……直せないわけじゃない)
紫煙は怪しい人影を見なかったと言った。僕も見なかったし、気配もなかった。それなのに、楽譜は消えた。何か、嫌な予感がしてならない……。
「ま、考えてもしょうがないだろう。今はただ祝杯をあげようぜ」
紫煙の声に、僕は手を握りこむ。すぐに奥から、菓子を持った店主がやってきた。仕事の話をするわけにはいかない。茶で祝杯か、と言ってやろうかとも思ったが、別の言葉がするりと喉から出た。
「お前はどうしてあの時、すぐに現れた?」
紫煙は、ふっと息だけで笑ってみせた。気障だ。返事など期待していなかった僕は視線を切って茶をまた一口、含む。
しかし紫煙は、口を開いた。
「そりゃあ……女に厳しくするほど枯れちゃあいないからな」
口の中で、茶が冷めた。
「……いつからそんな、馬鹿げた事を思いついた?」
「ん? うすうすそんな気はしてたが、確信したのは仮面舞踏会の日。男の匂い、付けてきただろ?」
「っ?!」
「なんて、な」
僕の手中でわずかに揺れる茶を見て、紫煙は、にやりと笑った。
「やっぱり女だったんだな、お前さん」
「……図ったな」
かまをかけられていたのだ。
男同士で踊りもする仮面舞踏会で誰の匂いがついていようと問題は無い。そう言って反応しなければよかったものを、動揺してしまった。僕が間抜けだったということだ。
「もう少しはったりを見抜く目を磨いた方がいいぜ。任務は完璧にこなす癖に、肝心な所が抜けてるんだよな」
「……」
「安心しろよ」
こいつは、僕の頭に気安く触れるのだ。
「お前の秘め事は誰にも言わない」
「……何故だ。墨染は男だけの忍び衆と決まっている。女が混ざっていると報告しないのか」
「言って利がありゃそうしたかもな?」
「利は」
「理はあっても利は無いんだよ、俺にとっては」
心の読めない、ただ明るいだけの笑みを浮かべて、僕の秘め事を暴いた男は茶碗をくいと傾ける。嫌味なほどに様になるその体のどこからも、やはり悪意は感じ取れないのだ。脅す悪意も、肉欲めいた悪意も……。
こいつのことが、僕には分からない。
「……」
ふいに、涼風に交じって、からからと細い音がする。店の軒下を見ると、鳴る仕掛けの竹細工の鳥が吊るされていた。その下に、緑の紐で作った小さな手毬のような玉が続いている。中で、乾いた種が揺れていた。
「これがほんとうの結い青梅ってやつか?」
紫煙が無邪気な声をあげた。
青梅に染まりやすい紐を網のようにくくりつけて、慕う相手に贈る、という風習がある。想いが通じたのなら、梅はそのまま浸けて梅酒にして、柔らかくなった梅から果肉を崩し、抜いた紐と種だけを残して乾かし、軒下に飾るのだ。仄かに紐が緑に染まるのを結梅青色などとも言うのだが、最近はあまり見ることもなくなった。
「綺麗なもんだな。なあ?」
結い青梅の下で揺れる「光堂」の鳥を見ながら、僕はぼんやりと紫煙の言葉に頷いた。夢で聴いた鈴の音が、重なって聞こえたような気がした。狂うほどに美しかったあの曲は、不思議と今は思い出さなかった。
「『魔力』とやらの事は、書かなかったのか?」
相部屋とはいえ馴れ馴れしく、あいつが近づいてくる。
「雷継の言葉のほかには、何の証拠も残っていない。僕自身、十分な説明をする事が出来ない。不確かな事を報告する事は出来ない」
「むしろそれを書かずに報告書まとめられるのが凄いな」
僕は小さく首をすくめた。
「ってか、それを書けば、勝手に家を燃やした事を釈明できただろうに」
「だから、説明ができない。どうせ微かな罪だ、大人しく罰を受ける」
こいつは僕の先ほどの言葉を聞いていなかったのか?
「ん、聞いてはいたさ。しかし、裁の国にだって『異能』なんて力があるだろう? その『魔力』とやらがあってもおかしくないと俺は思うけどね」
今は煙管を持っていないのに、檸檬の香りがする。服に染みているのだろう。存在を主張しているようで好きになれない。
「裁のあれとは、話が違うだろう」
「俺たち非異能にしてみれば、ほとんど同じだろ」
裁の国の人々は、特別な力を持つ。一言で「異能」と呼ばれるが、その中身は人により違うらしい。嘘を見抜いたり壊れたものを直したり、どれも偽を理に直す力だと言われている。この異能を使い、裁の国は多くの国々を従えているのだ。
「……それよりも、雷継が問題だ」
僕は話を逸らして綴り終えた糸を結びにかかった。
あのあばら屋での一件の後、雷継は魂が抜けたようにしているという。今日は楽団の練習を早くに切り上げて彼の客室で独り籠もっているとか。僕に何か言付けがあるでもない。そもそも、密かに持ち込まれた「楽譜」、密かに作られた「楽器」を壊したことに責を問うことなどできないだろう。そういう意味で、秘め事は賭け事に近しい。彼らも分かっていたのだろうし、僕も分かっていて壊した。ただ、血が焦げついた歯車など、燃え残ったかすかな部品を見たときには妙な気分になった。今となっては、何の意味もない証拠だ。
「意味がない、とか言うなよ」
ふいに紫煙が言った。
「説明できずとも、あれが何人もの人を殺したんだろう?」
「……」
竹屋の主人、琴弾きの男児、地獄耳の老爺、大工の妻、楽団の横笛と太鼓奏者。彼らは、燃えたあばら家の下にあった狭い地下でまとめて見つかった。骨まで見えるような歯車の噛み傷から血を失いすぎて倒れ、誰にも気づかれぬまま揃って息を引き取っていた。床が燃え、穴が開いてから広がりはじめた臭いには、ぞっとしたものだった。
雷継は、あのあばら屋で地下を見つけ、隠されていた楽器だけを引き上げていたのだ。僕が踏み込んだ時に綺麗だったのは雷継が血を拭きとっていたから。仲間の死を知っていて、あそこまで落ち着いて楽器の「手入れ」をしていた彼は、やはり、正気ではなかったのだろう。
(……やはりあの楽器と、楽譜は、壊すべきだった)
そう思うしかない。
しかし一つ、気懸りなのはーー
「……なあ、今暇だろ。ちょっと付き合えよ」
「いや、悪いが」
「悪かろうが良かろうがな、任務が終わって報告書も書いた今、忙しいとは言わせないぜ」
いつになく強引な紫煙に、僕は目を瞬いた。
今日は閉まっている竹屋「光堂」向かいの甘味屋には、看板娘もまたいなかった。席に着いた紫煙は勝手に結い青梅を二つ頼むと、僕に向き直った。
「何故ここに?」
「いや、何となくな。前に美味いと聞いたから来てみたかったんだ」
「知り合いと来れば良かっただろう」
「じゃあお前と来ても構わないな?」
「僕より親しい奴なら幾らでも居るだろう」
「でも、お前と来ても構わないだろう? 俺はお前と来たかったんだ」
僕は諦めて、出された茶に口をつけた。仄かな甘みが心地良い。
「……気になってるんだろ、楽譜のこと」
「……」
ちらりと見やれば、今は店内に誰もいない。店主も奥に退がっていた。僕は口を離して、潤った唇を舐める。
「……気にならないはずがない」
あの時。燃える楽器の中から、まるで初めから無かったかのように楽譜は消えていた。
「実は木製だった、あっという間に燃えちまった……なあんて事はないか?」
「ない。他の部品はまだ残っていたし、それに」
僕は袂から小さな金ね粒を取り出した。
「それは?」
「楽器を蹴り壊した時に、楽譜から飛んだ」
「お前、金ねでできた楽譜を蹴り壊したのか?」
何故そこで面白がるのか、紫煙は愉快そうに目を細めた。
「お前って細いくせして案外やるよな。あの雷継を背負ったり」
「背負うだけならやりようだろう」
「おー、今度教えてくれよ」
僕は楽譜の突起だった金ね粒を掌で転がす。
あの時……楽器を蹴り壊したとき、僕は当然金ね板の楽譜を壊そうとしていた。あれが最も危ないもので、燃えた程度の熱で溶けるかも分からなかったのだから当然だ。薄い金ねを歪ませた感触はあったし、破片も飛んできた。楽譜は確かに壊した。
(だが……直せないわけじゃない)
紫煙は怪しい人影を見なかったと言った。僕も見なかったし、気配もなかった。それなのに、楽譜は消えた。何か、嫌な予感がしてならない……。
「ま、考えてもしょうがないだろう。今はただ祝杯をあげようぜ」
紫煙の声に、僕は手を握りこむ。すぐに奥から、菓子を持った店主がやってきた。仕事の話をするわけにはいかない。茶で祝杯か、と言ってやろうかとも思ったが、別の言葉がするりと喉から出た。
「お前はどうしてあの時、すぐに現れた?」
紫煙は、ふっと息だけで笑ってみせた。気障だ。返事など期待していなかった僕は視線を切って茶をまた一口、含む。
しかし紫煙は、口を開いた。
「そりゃあ……女に厳しくするほど枯れちゃあいないからな」
口の中で、茶が冷めた。
「……いつからそんな、馬鹿げた事を思いついた?」
「ん? うすうすそんな気はしてたが、確信したのは仮面舞踏会の日。男の匂い、付けてきただろ?」
「っ?!」
「なんて、な」
僕の手中でわずかに揺れる茶を見て、紫煙は、にやりと笑った。
「やっぱり女だったんだな、お前さん」
「……図ったな」
かまをかけられていたのだ。
男同士で踊りもする仮面舞踏会で誰の匂いがついていようと問題は無い。そう言って反応しなければよかったものを、動揺してしまった。僕が間抜けだったということだ。
「もう少しはったりを見抜く目を磨いた方がいいぜ。任務は完璧にこなす癖に、肝心な所が抜けてるんだよな」
「……」
「安心しろよ」
こいつは、僕の頭に気安く触れるのだ。
「お前の秘め事は誰にも言わない」
「……何故だ。墨染は男だけの忍び衆と決まっている。女が混ざっていると報告しないのか」
「言って利がありゃそうしたかもな?」
「利は」
「理はあっても利は無いんだよ、俺にとっては」
心の読めない、ただ明るいだけの笑みを浮かべて、僕の秘め事を暴いた男は茶碗をくいと傾ける。嫌味なほどに様になるその体のどこからも、やはり悪意は感じ取れないのだ。脅す悪意も、肉欲めいた悪意も……。
こいつのことが、僕には分からない。
「……」
ふいに、涼風に交じって、からからと細い音がする。店の軒下を見ると、鳴る仕掛けの竹細工の鳥が吊るされていた。その下に、緑の紐で作った小さな手毬のような玉が続いている。中で、乾いた種が揺れていた。
「これがほんとうの結い青梅ってやつか?」
紫煙が無邪気な声をあげた。
青梅に染まりやすい紐を網のようにくくりつけて、慕う相手に贈る、という風習がある。想いが通じたのなら、梅はそのまま浸けて梅酒にして、柔らかくなった梅から果肉を崩し、抜いた紐と種だけを残して乾かし、軒下に飾るのだ。仄かに紐が緑に染まるのを結梅青色などとも言うのだが、最近はあまり見ることもなくなった。
「綺麗なもんだな。なあ?」
結い青梅の下で揺れる「光堂」の鳥を見ながら、僕はぼんやりと紫煙の言葉に頷いた。夢で聴いた鈴の音が、重なって聞こえたような気がした。狂うほどに美しかったあの曲は、不思議と今は思い出さなかった。
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