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第42話 再現! 巨大スプーンと誓いの口づけ
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「本日は、ジルベール公爵閣下、レティシア奥様、結婚十周年記念パーティーへようこそ!」
パンパカパーン!
盛大なファンファーレと共に公爵家の庭園には色とりどりの紙吹雪が舞っていた。
◇
あれから十年。
私たちは『錫婚式』と呼ばれる結婚十周年の節目を迎えていた。
招待客は領民たちはもちろん、バルトやライル、そして今では良き友人となったカイル殿下やビクトリア女王も駆けつけてくれている。
「早いものだな。君と結婚して、もう十年か」
隣に立つジルベール様が感慨深げに目を細めた。
十年の歳月は、彼を老けさせるどころか、渋みと色気を増した「イケオジ」へと進化させていた。相変わらず、見るだけで目が潤う美貌だ。
「ええ。毎日が美味しくて、騒がしくて、あっという間でしたね」
「……私のウエスト周りが若干きつくなったのも君のせいだがな」
「幸せ太りですよ。貫禄があって素敵です」
私たちが軽口を叩き合っていると、司会進行役のライルが声を張り上げた。
「さあ、皆様お待ちかね! メインイベントのお時間です!」
ザワザワ……と会場の期待が高まる。
十年前の伝説を知る者たちは、ニヤニヤしながら魔導カメラを構えている。
「公爵家伝統の儀式……『愛のファーストバイト・リターンズ』です!!」
ドォォォォン!!
地響きと共に運ばれてきたのは、十年前のウエディングケーキをも凌駕する、超巨大な『特製フルーツタルト』だ。
直径三メートル。
カスタードクリームの海に季節のフルーツが山のように盛られている。
そして、私が背後から取り出したのは――。
「……やはり、それか」
ジルベール様が額を押さえた。
私が手にしているのは、かつて結婚式で使ったスコップ……ではなく、この日のために新調した『ミスリル銀製の巨大スプーン』だ。
柄の部分には宝石が埋め込まれ、無駄に神々しく輝いている。
「愛の重さは年々増していますからね。道具もグレードアップしないと!」
私はスプーンを振りかざし、タルトのど真ん中をえぐり取った。
その量、およそホールケーキ二個分。
「さあ、旦那様。私の十年分の愛、受け止めてください!」
「……加減というものを知らんのか、君は」
ジルベール様は呆れたように笑ったが逃げる様子はない。彼はタキシードの襟を正し、堂々と私の前に立った。
「いいだろう。……十年前は溺れかけたが、私も鍛えられた。今の私なら、君の愛など余裕で飲み干してみせる!」
「おおっ、男らしい! では、いきますよー!」
「来いッ!!」
ジルベール様が限界まで口を開ける。
私は気合と共に巨大スプーンを突き出した。
「あーーーーーーんッ!!」
ドスッ。
タルトの山が彼の顔面に吸い込まれていく。
会場中から「パパがんばれー!」「負けるな公爵!」の大歓声。
双子のアランとリリィも「パパ、すごーい!」と飛び跳ねている。
ジルベール様はクリームまみれになりながらも、必死に飲み込んでいく。
その姿は、もはや戦う獅子のようだった。
ゴクンッ。
「……ぷはぁっ!」
完食。
皿の上には、クリームの一滴も残っていない。
「……美味い。だが、甘すぎるぞ、レティシア」
「ふふ、十年目の愛の味ですから」
「……ならば」
ジルベール様はナプキンで口を拭う……かと思いきや、逆に私を引き寄せた。そしてクリームのついた自分の唇を、私の唇に押し付けた。
「んっ!?」
甘いカスタードとフルーツの酸味。
そして彼の熱い吐息が混ざり合う。
「……お返しだ」
唇を離した彼は、悪戯っぽく笑った。
「君の口元も甘くなったな」
「も、もう! みんな見てるのに!」
会場からは「ヒューヒュー!」という冷やかしと割れんばかりの拍手が巻き起こった。
ビクトリア女王なんて「あらあら、ご馳走様ですわ!」と爆笑している。
「パパとママ、ラブラブだー!」
「きゅ~!」
子供たちと聖獣モチも駆け寄ってきて、私たちはもみくちゃにされた。
クリームの匂いと、みんなの笑顔。
そして、隣には世界一愛する旦那様。
「……幸せですね、ジルベール様」
「ああ。……君に出会えて、本当によかった」
私たちは巨大タルトの前で何度目かわからない口づけを交わした。
十年経っても、百年経っても。
私たちの食卓には、きっと変わらない笑顔と「おかわり」の声が響いていることだろう。
パンパカパーン!
盛大なファンファーレと共に公爵家の庭園には色とりどりの紙吹雪が舞っていた。
◇
あれから十年。
私たちは『錫婚式』と呼ばれる結婚十周年の節目を迎えていた。
招待客は領民たちはもちろん、バルトやライル、そして今では良き友人となったカイル殿下やビクトリア女王も駆けつけてくれている。
「早いものだな。君と結婚して、もう十年か」
隣に立つジルベール様が感慨深げに目を細めた。
十年の歳月は、彼を老けさせるどころか、渋みと色気を増した「イケオジ」へと進化させていた。相変わらず、見るだけで目が潤う美貌だ。
「ええ。毎日が美味しくて、騒がしくて、あっという間でしたね」
「……私のウエスト周りが若干きつくなったのも君のせいだがな」
「幸せ太りですよ。貫禄があって素敵です」
私たちが軽口を叩き合っていると、司会進行役のライルが声を張り上げた。
「さあ、皆様お待ちかね! メインイベントのお時間です!」
ザワザワ……と会場の期待が高まる。
十年前の伝説を知る者たちは、ニヤニヤしながら魔導カメラを構えている。
「公爵家伝統の儀式……『愛のファーストバイト・リターンズ』です!!」
ドォォォォン!!
地響きと共に運ばれてきたのは、十年前のウエディングケーキをも凌駕する、超巨大な『特製フルーツタルト』だ。
直径三メートル。
カスタードクリームの海に季節のフルーツが山のように盛られている。
そして、私が背後から取り出したのは――。
「……やはり、それか」
ジルベール様が額を押さえた。
私が手にしているのは、かつて結婚式で使ったスコップ……ではなく、この日のために新調した『ミスリル銀製の巨大スプーン』だ。
柄の部分には宝石が埋め込まれ、無駄に神々しく輝いている。
「愛の重さは年々増していますからね。道具もグレードアップしないと!」
私はスプーンを振りかざし、タルトのど真ん中をえぐり取った。
その量、およそホールケーキ二個分。
「さあ、旦那様。私の十年分の愛、受け止めてください!」
「……加減というものを知らんのか、君は」
ジルベール様は呆れたように笑ったが逃げる様子はない。彼はタキシードの襟を正し、堂々と私の前に立った。
「いいだろう。……十年前は溺れかけたが、私も鍛えられた。今の私なら、君の愛など余裕で飲み干してみせる!」
「おおっ、男らしい! では、いきますよー!」
「来いッ!!」
ジルベール様が限界まで口を開ける。
私は気合と共に巨大スプーンを突き出した。
「あーーーーーーんッ!!」
ドスッ。
タルトの山が彼の顔面に吸い込まれていく。
会場中から「パパがんばれー!」「負けるな公爵!」の大歓声。
双子のアランとリリィも「パパ、すごーい!」と飛び跳ねている。
ジルベール様はクリームまみれになりながらも、必死に飲み込んでいく。
その姿は、もはや戦う獅子のようだった。
ゴクンッ。
「……ぷはぁっ!」
完食。
皿の上には、クリームの一滴も残っていない。
「……美味い。だが、甘すぎるぞ、レティシア」
「ふふ、十年目の愛の味ですから」
「……ならば」
ジルベール様はナプキンで口を拭う……かと思いきや、逆に私を引き寄せた。そしてクリームのついた自分の唇を、私の唇に押し付けた。
「んっ!?」
甘いカスタードとフルーツの酸味。
そして彼の熱い吐息が混ざり合う。
「……お返しだ」
唇を離した彼は、悪戯っぽく笑った。
「君の口元も甘くなったな」
「も、もう! みんな見てるのに!」
会場からは「ヒューヒュー!」という冷やかしと割れんばかりの拍手が巻き起こった。
ビクトリア女王なんて「あらあら、ご馳走様ですわ!」と爆笑している。
「パパとママ、ラブラブだー!」
「きゅ~!」
子供たちと聖獣モチも駆け寄ってきて、私たちはもみくちゃにされた。
クリームの匂いと、みんなの笑顔。
そして、隣には世界一愛する旦那様。
「……幸せですね、ジルベール様」
「ああ。……君に出会えて、本当によかった」
私たちは巨大タルトの前で何度目かわからない口づけを交わした。
十年経っても、百年経っても。
私たちの食卓には、きっと変わらない笑顔と「おかわり」の声が響いていることだろう。
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