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第43話 新たな夢、世界グルメ探求の旅へ
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パーティーの喧騒が去り、静けさが戻った公爵邸のバルコニー。月明かりの下、私とジルベール様は並んで夜風に当たっていた。
手には酔い覚ましのハーブティー。
「……いい式だったな」
ジルベール様がふぅと満足げな息をつく。
「ええ。十年経っても、こうして皆にお祝いしてもらえるなんて。……それに、あの巨大タルトを完食した旦那様の胃袋にも感動しました」
「君のおかげで鍛えられたからな」
彼はクスクスと笑い、そして少しだけ真面目な顔をして私を見た。
「レティシア。……突然だが相談がある」
「相談、ですか? まさか今日のタルトのカロリー消費について?」
「それもあるが、もっと大事な話だ」
彼は手すりに肘をつき、遠く広がる領地の夜景を見つめた。
「私は……そろそろ公爵としての公務を優秀な部下たちや次世代に任せていこうと思っている」
「えっ?」
私は目を丸くした。
ジルベール様はまだ働き盛りだ。引退するには早すぎる気がする。
「引退、ですか? 何かあったんですか?」
「いや。……ただ、思ったのだ。私はこの十年間、君のおかげで『幸せ』を知った。領地も豊かになり、子供たちも健やかに育っている」
彼は私の手を取り、その指に口づけを落とした。
「だからこそ……これからの人生は、君の『夢』を叶えるために使いたい」
「私の、夢?」
「ああ。君はよく言っていただろう? 『まだ見ぬ食材が世界にはたくさんある』と」
ハッとした。
確かに私は、ことあるごとに言っていた。
東の国には『お米』や『味噌』があるらしい。
南の島には『カカオ』や『スパイス』が眠っているらしい。いつか本場の味を見てみたい、と。
「世界を旅しよう、レティシア」
ジルベール様が少年のように目を輝かせた。
「君の知る『レシピ』の源流を探しに。……東の果ての島国でも、南の密林でも、どこへでも連れて行く。君が新しい食材を見つけて、料理して、笑ってくれるなら……それが私にとって最高の余生だ」
「ジルベール様……」
胸がいっぱいになった。
この人は、どこまで私を甘やかしてくれるのだろう。「氷の魔公爵」と呼ばれ、国政に縛られてきた彼が、全てを放り出して私との旅を選んでくれるなんて。
「……行きたいです。すごく、行きたい」
私の脳裏に、まだ見ぬ食材たちがパレードをして通り過ぎていく。
(本場の『お寿司』! スパイスたっぷりの『カレー』! カカオから作る『チョコレート』!)
「でも……子供たちは? 領地の仕事は?」
「領地経営は、ライルとマーサがいれば回る。あの二人は優秀すぎるくらいだ。それにカイル国王もバックアップしてくれると約束してくれた」
「さすが国王陛下。買収済みでしたか」
「子供たちについては……アランとリリィも連れて行く。あいつらも外の世界を見たがっていたし、何より聖獣モチがいるからな。移動も護衛も完璧だ」
「空飛ぶキッチンカーならぬ、空飛ぶドラゴン旅行ですね!」
想像するだけでワクワクが止まらない。
家族みんなで世界中を食べ歩く旅。
そんなの、楽しいに決まっている。
「ふふ……。わかりました、旦那様」
私は空になったカップを置き、彼に抱きついた。
「お供します! 世界の果てまで! ……その代わり、旅先での毒味係は覚悟してくださいね?」
「望むところだ。君の料理が食べられるなら、地の果てでも天国だ」
私たちは月夜の下で、新たな「契約」を交わした。それは雇用契約でも、婚姻契約でもなく。
人生をかけた「グルメツアー」の約束だった。
「よし、そうと決まれば準備だ! まずは世界地図を持ってこよう!」
「あ、私、携帯用の調味料セットを新調しなきゃ!」
深夜だというのに、私たちのテンションは最高潮に達していた。
手には酔い覚ましのハーブティー。
「……いい式だったな」
ジルベール様がふぅと満足げな息をつく。
「ええ。十年経っても、こうして皆にお祝いしてもらえるなんて。……それに、あの巨大タルトを完食した旦那様の胃袋にも感動しました」
「君のおかげで鍛えられたからな」
彼はクスクスと笑い、そして少しだけ真面目な顔をして私を見た。
「レティシア。……突然だが相談がある」
「相談、ですか? まさか今日のタルトのカロリー消費について?」
「それもあるが、もっと大事な話だ」
彼は手すりに肘をつき、遠く広がる領地の夜景を見つめた。
「私は……そろそろ公爵としての公務を優秀な部下たちや次世代に任せていこうと思っている」
「えっ?」
私は目を丸くした。
ジルベール様はまだ働き盛りだ。引退するには早すぎる気がする。
「引退、ですか? 何かあったんですか?」
「いや。……ただ、思ったのだ。私はこの十年間、君のおかげで『幸せ』を知った。領地も豊かになり、子供たちも健やかに育っている」
彼は私の手を取り、その指に口づけを落とした。
「だからこそ……これからの人生は、君の『夢』を叶えるために使いたい」
「私の、夢?」
「ああ。君はよく言っていただろう? 『まだ見ぬ食材が世界にはたくさんある』と」
ハッとした。
確かに私は、ことあるごとに言っていた。
東の国には『お米』や『味噌』があるらしい。
南の島には『カカオ』や『スパイス』が眠っているらしい。いつか本場の味を見てみたい、と。
「世界を旅しよう、レティシア」
ジルベール様が少年のように目を輝かせた。
「君の知る『レシピ』の源流を探しに。……東の果ての島国でも、南の密林でも、どこへでも連れて行く。君が新しい食材を見つけて、料理して、笑ってくれるなら……それが私にとって最高の余生だ」
「ジルベール様……」
胸がいっぱいになった。
この人は、どこまで私を甘やかしてくれるのだろう。「氷の魔公爵」と呼ばれ、国政に縛られてきた彼が、全てを放り出して私との旅を選んでくれるなんて。
「……行きたいです。すごく、行きたい」
私の脳裏に、まだ見ぬ食材たちがパレードをして通り過ぎていく。
(本場の『お寿司』! スパイスたっぷりの『カレー』! カカオから作る『チョコレート』!)
「でも……子供たちは? 領地の仕事は?」
「領地経営は、ライルとマーサがいれば回る。あの二人は優秀すぎるくらいだ。それにカイル国王もバックアップしてくれると約束してくれた」
「さすが国王陛下。買収済みでしたか」
「子供たちについては……アランとリリィも連れて行く。あいつらも外の世界を見たがっていたし、何より聖獣モチがいるからな。移動も護衛も完璧だ」
「空飛ぶキッチンカーならぬ、空飛ぶドラゴン旅行ですね!」
想像するだけでワクワクが止まらない。
家族みんなで世界中を食べ歩く旅。
そんなの、楽しいに決まっている。
「ふふ……。わかりました、旦那様」
私は空になったカップを置き、彼に抱きついた。
「お供します! 世界の果てまで! ……その代わり、旅先での毒味係は覚悟してくださいね?」
「望むところだ。君の料理が食べられるなら、地の果てでも天国だ」
私たちは月夜の下で、新たな「契約」を交わした。それは雇用契約でも、婚姻契約でもなく。
人生をかけた「グルメツアー」の約束だった。
「よし、そうと決まれば準備だ! まずは世界地図を持ってこよう!」
「あ、私、携帯用の調味料セットを新調しなきゃ!」
深夜だというのに、私たちのテンションは最高潮に達していた。
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