『あなた次第』 【本編は完結】

君影 ルナ

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6章 テスト

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「駄目だ……花蘇芳 藍さん教えて……」
「こっちも……」

 開始十五分で音を上げた板前さんと冴木さん。それぞれ山吹さんと藤さんに教えてもらっていたはずだけど……

「この人スパルタ過ぎる! 無理! いちご変わってくれ!」
「ええー? 俺普通でしょー?」
「んなわけあるかー!」
「ねー、竜胆はどう思うー?」
「さあ……どうでしょうね。」
「勉強、やっぱり、無理……なんでいちごはそんなに頑張れるの……?」
「……今回頑張らないと後がなくなるから……かな。」

 ふいっと目線を逸らすいちごちゃん。

「あ……なるほど。」

 そこ納得するんだ。それくらいいちごちゃんはテストの点数が芳しくないのかな……?

「だから頑張らないと! 留年は嫌!」
「いちご……! いちごが頑張ってるなら私も頑張らないとだね! ってことで花蘇芳 藍さん、教えて!」
「私にも!」
「ええと……私で良ければ。」
「やったあ!」
「あ、そうだ。私のことは藍とでも呼んでください。フルネームで呼ぶの大変じゃないですか? 七文字ですし。」

 ずっと思っていたことを告げてみる。ここの生徒は皆さん揃って音霧メンバーのことをフルネームで呼ぶ。長くないのかな、といつも感じていた。

「では藍さん、と呼ばせていただきましょうか。」
「へっ!?」

 敦子さんと静香さんに向けて言った言葉だったのだが、一番最初に私の名前を呼んだのは以外にも山吹さんだった。

 いつも苗字呼びだった人から名前で呼ばれるのはなんか気恥しいものがある。思わずビクッと肩を震わせる。

「藍さん? どうされましたか?」
「い、いえ……」

 それもいい笑顔で言われると余計気恥しい。

「ああ、私のことは竜胆とでも呼んでください、藍さん?」

 ひぃぃ、何度も呼ばないでくださいよ! 恥ずかしくて顔が熱くなってくる。

「竜胆意地悪ー。藍ちゃんが可哀想だよ。」
「意地悪で結構です。」
「あれ、どっかで聞いたセリフだね?」
「それは多分茜が……」

 敬語同士として話しやすいと勝手に思っていたが、その考えを改めないといけないかな。

「藍ちゃん? 大丈夫?」
「へっ!? ……ああ、うん、大丈夫。」
「そう?」
「じゃあ私達も藍ちゃんって呼ぶね。私達のことも名前でいいから。」
「よろしくね、藍ちゃん。」
「よろしくお願いします。敦子ちゃん、静香ちゃん。」

 お友達が増えたみたいで嬉しかった。思わず口元が緩む。

「っ……!」
「……いちごが言ってたことがよく分かった。」
「でしょー?」

 静香ちゃんといちごちゃんががっちりと握手する。それに続いて敦子ちゃんとも握手するいちごちゃん。三人とも目で話しているようで、私は一人置いてけぼりに。

 ……まあ、皆さん楽しそうだからいいか。手持ち無沙汰になったので手元にあった自分の教科書を開く。パラパラとページを捲って……

「……ん?」

 その時ひらりと封筒が落ちてきた。こんなもの挟んでたっけ? 見覚えがないなあ。

 その封筒を拾い、裏表じっくり眺めてみる。何も書かれていない。……開けてみる?


 封を開けるとそこには……

「っ……!」

 隠し撮りのようなアングルの写真が五枚入っていた。それぞれに音霧の皆さんが写っており、その顔に赤いペンでバツ印が書かれている。

 その他に紙が一枚入っている。それを見てみると、


『ハナズオウ アイ、待っててネ』


 と書かれていた。これを見る限りだと、音霧の皆さんが危ない気がする。私の名前が書いてあるということは、私が原因。

 送り主は一体誰なんだ。キョロキョロと辺りを見回してみるが、誰も見つけられず。途方に暮れるしかなかった。













 あの後も少し勉強し、帰宅した。自室でぐるぐる考えを巡らせる。

「他生徒達は音霧を怖がっていて、その生徒達は怯える者と危害を加える者と分かれているから……もしかして危害を加える側の人間の仕業かな……?」

 体育祭の時のことを思い出す。あの時のような痛い思いはあまりしたくないんだけどなあ……。

「でも……私を名指ししているのは……何故?」

 怖がられているのは『音霧』であって、私個人だけではない。それなのに……

「私、何かしたかな……」

 知らぬ間に何かしてしまったのだろうか。

「……明日から周りに気をつけないと。私が音霧の皆さんを守るんだ。」

 音霧の皆さんに危険が及ぶだろうことははっきりしている。ならば私の取る行動は……

 その後もしばらく今後の動き方について考えるのだった。
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