死神ちゃんと天使くん 【完結】

第3部 死神の代替わり

18

　次の日。昨日洗濯したローブを持ってけんけんの部屋へ行く。

「けんけん起きてるー？」

　部屋に入るが、物音一つしない。気配はあるのに。まだ寝てるのかなー。

「ここにローブ置いておくね。っと、一応持ってきたメモも置いとこー。」

　畳まれたローブと、その上に『今日からこのローブを着てね！』と書かれているメモをベッド近くのチェストに置く。さ、用事も終えたし戻ろー。

「ほっ！？」

　と思ったら腕を引かれる。そのままボフンと柔らかい場所に落ちた。なんだなんだ？

「……ん、」

　待って、これは……

「けんけん！」

　ここはけんけんの部屋ということは、私を抱き込んでいるのはけんけんということになる。ちょっとー！？　何寝惚けてるのー！？

「けんけんー！　起きてー！！」
「んー……」

　もしかして寝起き悪いタイプの人か。どうしよう。私に巻きついているもの──多分腕だろう──をなんとか剥ぎ取ろうと奮闘する。

「ぐぐぐ……」

　無理だー、アンジュお助けー。

「呼んだ！？　……え、ちょっとけんけん！　なにやってんの！！」

　……アンジュはなんで心の中で呼んだだけなのにやってきたのさ。どんなレーダーをお持ちなのだ。まあいいか。助けてくれるなら。

「アンジュー、お助けー。」
「今助けるね！」

　ぐい、と私に巻きついたものを剥ぎ取ってくれたことで自由になる。

「ありがとう、アンジュ。」
「いえいえー！　あ、そうだ。ちょっとけんけんと話をしたいから、先にご飯盛ったりしててくれない？」
「いいよ。盛るだけね？」
「うん！　よろしくー！」

　アンジュとけんけんを置いてキッチンへと向かう。













「あれ、遅いなあ……」

　もうご飯も盛り終え、後は食べるだけなのだが……二人が来ない。呼びに行った方がいいかな。けんけんの部屋へ向かう。



　けんけんの部屋の扉を叩こうとした時、中から声が聞こえた。

「──っていうことは天使になる人は、死神が自殺したことで、その人と相性のいい人間が殺されているってことっすか？」
「まあその認識でいいかな。だから君に付く天使も大事にしなね？」
「っす。」

　二人の言葉に頭が真っ白になる。扉を叩こうとした手もその場に固まる。

　アンジュが事故死したのは私が自殺して死神になったから……？　私が自殺しなければアンジュは死ぬことはなかった……？

　ああ、どうしよう、どうしよう。私のせいだ。



　この場にいることが出来なくなり、自室へと走った。