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第3部 死神の代替わり
21 死神注意
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「で、自殺した理由だっけか。」
「うっす。」
リビングでお茶を飲みながら話し始める。
「私はねえ、生きていた時、どこにも居場所がなかったんだよ。学校では虐められ、家では勉強しろとしか言われず。休まる時がなかった。そんな毎日を送っていたら精神すり減らしちゃって、もう思考回路がおかしくなっていたんだと思う。楽になるには死ぬしかないって思ってた。」
「それ分かります。俺も死んでから冷静になりましたもん。あの時の思考回路は普段とは違ったと。」
「ね。だけど今は私が死ぬと悲しんでくれる人がいると分かっているから。絶対的な味方がいるから。だから今はもう死んでられないんだ。」
「……そうっすか。俺にもそんな人、出来ますかね。」
「きっと出来るよ。で、けんけんはどんな経緯で?」
「俺っすか? ……俺は、よく分かんないんすよ。見えない漠然とした何かに追いかけられるような焦燥感がずっとあって、それから逃れたいと思った時、死ぬことが頭に浮かんで。それで……」
「なるほどね。」
けんけんと話をして、私達はどちらもただ『楽になりたかった』のだということが分かった。
「先代に話せてよかったっす。なんか軽くなった気がします。」
「それはよかった。」
「先代の傍は居心地がいいっすね。」
私は病んでいた時に『自殺』とか『死にたい』とかで検索を掛けて同じような苦しさを持つ人のブログとかを見ていた。そうしている事でなんとか生きていた。
あの時欲しかったのは共感だったのかもしれない。と、けんけんと話す上で腑に落ちた気がする。それはけんけんも同じだったのかもしれない。
もし私達が生きているうちに出会っていれば、お互い死ななかったのかもしれない。なんてタラレバを言ってみたり。
しかし今出会えたからこそ、これからを変えられる切っ掛けとなるのかもしれない。
「そう?」
「死神の仕事、頑張ってみます。」
「ほどほどに頑張れ! でも根詰めすぎないように気をつけてね。」
「っす。」
多分もうけんけんは大丈夫。死神としてしっかり仕事を全うしてくれるだろう。そう思えた出来事だった。
「さてけんけん、話も一段落したし次の仕事の時間が迫ってるよ。ちなみにこれからはけんけんが主体になって狩ってもらうからね。」
「ういーす。」
怠そうな返事に反してちゃんと仕事を教えた通りにこなしているようだ。迷いがない。ペラ、と資料を捲る音が聞こえる。
「ええと次は……東 ひかり、十九歳、溺死か。で、場所は……」
そうなると私はけんけんの後ろをついて行くくらいしかもうやることがない。いいことなんだけどちょっと暇。けんけんの飲み込みが早すぎてほとんど教えることもないんだもの。
「先代、行くっすよ?」
「はーい。」
二人で現世に降りる。
「ごぼっ、この子だけはっ、助けないと……! ごぶっ、」
どうやら海に来たらしい。そしてターゲットは溺れているみたい。あれ、『この子』……?
「けんけん、もしかして狩るのひかりちゃんだけじゃない?」
「いや、ひかりって人だけっす。」
「そうか……」
じゃあもしかしたら誰かを助けて死んでしまう、ということか。
「そろそろっすね。」
その言葉と共にぶん、と鎌を振るう音がする。
「よし、魂確認っと。じゃあ先代帰るっすよ。」
「ああうん。帰ろう。」
あまりにもあっさりしている。というかけんけんの動きに淀みもなく素早く魂を狩ることが出来ている。これならいつ代替わりしても大丈夫だな。
「先代、今日の夕飯、何すかね。」
「さあ……アンジュの気分次第だからねえ……」
「俺ステーキ食いたいっす。」
「そうなるといいねえ。」
「っす。」
結果的に言えばこの日の夕飯は鍋だった。けんけんの希望には沿わなかったが美味しいと言いながら食べていた。アンジュとけんけんの仲が良くて私嬉しいっす。
「うっす。」
リビングでお茶を飲みながら話し始める。
「私はねえ、生きていた時、どこにも居場所がなかったんだよ。学校では虐められ、家では勉強しろとしか言われず。休まる時がなかった。そんな毎日を送っていたら精神すり減らしちゃって、もう思考回路がおかしくなっていたんだと思う。楽になるには死ぬしかないって思ってた。」
「それ分かります。俺も死んでから冷静になりましたもん。あの時の思考回路は普段とは違ったと。」
「ね。だけど今は私が死ぬと悲しんでくれる人がいると分かっているから。絶対的な味方がいるから。だから今はもう死んでられないんだ。」
「……そうっすか。俺にもそんな人、出来ますかね。」
「きっと出来るよ。で、けんけんはどんな経緯で?」
「俺っすか? ……俺は、よく分かんないんすよ。見えない漠然とした何かに追いかけられるような焦燥感がずっとあって、それから逃れたいと思った時、死ぬことが頭に浮かんで。それで……」
「なるほどね。」
けんけんと話をして、私達はどちらもただ『楽になりたかった』のだということが分かった。
「先代に話せてよかったっす。なんか軽くなった気がします。」
「それはよかった。」
「先代の傍は居心地がいいっすね。」
私は病んでいた時に『自殺』とか『死にたい』とかで検索を掛けて同じような苦しさを持つ人のブログとかを見ていた。そうしている事でなんとか生きていた。
あの時欲しかったのは共感だったのかもしれない。と、けんけんと話す上で腑に落ちた気がする。それはけんけんも同じだったのかもしれない。
もし私達が生きているうちに出会っていれば、お互い死ななかったのかもしれない。なんてタラレバを言ってみたり。
しかし今出会えたからこそ、これからを変えられる切っ掛けとなるのかもしれない。
「そう?」
「死神の仕事、頑張ってみます。」
「ほどほどに頑張れ! でも根詰めすぎないように気をつけてね。」
「っす。」
多分もうけんけんは大丈夫。死神としてしっかり仕事を全うしてくれるだろう。そう思えた出来事だった。
「さてけんけん、話も一段落したし次の仕事の時間が迫ってるよ。ちなみにこれからはけんけんが主体になって狩ってもらうからね。」
「ういーす。」
怠そうな返事に反してちゃんと仕事を教えた通りにこなしているようだ。迷いがない。ペラ、と資料を捲る音が聞こえる。
「ええと次は……東 ひかり、十九歳、溺死か。で、場所は……」
そうなると私はけんけんの後ろをついて行くくらいしかもうやることがない。いいことなんだけどちょっと暇。けんけんの飲み込みが早すぎてほとんど教えることもないんだもの。
「先代、行くっすよ?」
「はーい。」
二人で現世に降りる。
「ごぼっ、この子だけはっ、助けないと……! ごぶっ、」
どうやら海に来たらしい。そしてターゲットは溺れているみたい。あれ、『この子』……?
「けんけん、もしかして狩るのひかりちゃんだけじゃない?」
「いや、ひかりって人だけっす。」
「そうか……」
じゃあもしかしたら誰かを助けて死んでしまう、ということか。
「そろそろっすね。」
その言葉と共にぶん、と鎌を振るう音がする。
「よし、魂確認っと。じゃあ先代帰るっすよ。」
「ああうん。帰ろう。」
あまりにもあっさりしている。というかけんけんの動きに淀みもなく素早く魂を狩ることが出来ている。これならいつ代替わりしても大丈夫だな。
「先代、今日の夕飯、何すかね。」
「さあ……アンジュの気分次第だからねえ……」
「俺ステーキ食いたいっす。」
「そうなるといいねえ。」
「っす。」
結果的に言えばこの日の夕飯は鍋だった。けんけんの希望には沿わなかったが美味しいと言いながら食べていた。アンジュとけんけんの仲が良くて私嬉しいっす。
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