あなたの犬になりたい

ゆずみそ

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わんわん

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「おはようございます、お嬢様。朝ですよ~」

 カーテンが勢いよく開けられ、中天近くのお日様が目を刺してきます。いっぺんで今日の天気が分かりますね、晴れです。

「ん~~、おはようシーラ。良い天気ね」

 昨日、寝入る直前に懸案事項を思い出し、気になってあまり眠れないなんて事はなく、ケント様に最高の自分を見て欲しい私は、これでもかっというくらいにはグッスリ寝ました。
 お肌を労るのはレディの務めですもの。

「今日の予定は何だったかしら」

 大きな欠伸もでましたが、眠気を覚ます効果があると聞いたような気がします。ですから、これもレディとして必要な行為だと誰にも聞かれていないのに言い訳してしまいました。

「大欠伸は品がないですよ」

 おお、神は見ていた! 諫めてくれてありがとうシーラ!

「それで予定ですが、いつもの通り特にありません」

「そうよね。じゃあケイン様にアポイントメントを入れてくれるかしら。最短で」

「かしこまりました~」

 彼女なら、ケイン様の予定にグイグイねじ込んで来てくれるはずです。得難い侍女ですわ。





 特に予定は無いものの、ブランチの後は運動を致します。健康的なスタイル維持が目的です。全ては愛する人の為ですもの、頑張りますわよぉー!

「フンッ! フンッ! フンッ!フンッ!」

 広間で美容に熱心な有志一同による腹筋大会です。日替わりで背筋・胸筋も鍛えます。

 シフトの有る侍女やメイド達と違って毎日行っている私ですが、成果を見ると何故か真ん中より少し下程の位置につけています。不思議な事もあるものです。

 汗を流している最中に、シーナからケント様の本日の予定をもぎ取って来たとの報告がありました。

「これから伺っても良いとのことだったのですが、あらまあ、お胸がキュッと上がったのでは?」

 いきなり揉んでくるのはどうかと思いますよ。

「いい柔らかさと弾力ですね。これならケント様も夢中になるんじゃないでしょうか」

 離れる時にそっと頂きを撫でて行くのは、もはや彼女の癖なのでしょうね。

 褒められた胸をツーピースに包んで、ケント様のお宅へ馬車で向かいます。
 一頭立ての馬車を私が操るのです。後ろには従者では無く、シーラが立ち乗りします。二人座れなくも無いのですが、彼女の希望です。これがとっても目立ちます。

 裾の広いキュロットですし、スピードも出しません。しかし傍目にはスカートが翻っているように見えるのではないでしょうか。道行く人の視線が集まるのです。

 その時私は前を向いているので、実際にどうなっているかは見た事がないのですけれど。

 恐らく彼女は運命の相手を探しているのではないかと愚考しています。
 注目を集める事で、自身の存在に気付いてもらい、また、己も見逃さぬように視線を高い位置に置く……この貪欲さ! 妥協しない彼女はまだまだ伸び代があると確信しております。

 素敵な侍女に想いを馳せていると、ロッド家に着きました。隣なので。
 あら? 代わり映えしない道のりで出会いって、そんなにあるかしら? …………少ないチャンスをモノにする――私も見習いますわ。

 ケント様で早速実践でしてよ!

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