生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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失恋

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sideルディ

そりゃ結婚してるよなー、リラ可愛いし可愛いし可愛いし可愛いし可愛いし。


それにリラがアイツのこと好きだって知ってたし。


だって、俺はずっとリラのこと見てたんだからさ。


知らないはずない。


「はぁ。」


嫌だな。


付き合ってるとか、恋人、とかなら俺にも雀の涙程度の可能性があったのに。

結婚なんかされたらもう絶対無理だ。


落ち込むなぁ…。


「うっ!!」


いきなり鼻の曲がりそうな匂いが漂ってきた。


血と腐った肉の匂い。


どこかに死体でも放置されてるの?

え、怖っ!!
そんなの見たら絶対腰抜ける!!


クロウさんに報告?


いやいや、もしかしたら野生の動物が死んでるだけかもしれない。


とりあえず確認して俺が腰を抜かすような状況ならクロウさんに報告しよう。


とは言っても1人で見るのもなかなか勇気がいる。


ラルフ連れてきたらよかった………


いや、後悔しても仕方ない。


ここは俺1人で何とかしよう。


大丈夫だよ、ちょっと見るだけ。


ちょっと覗くだけな「おい。」
「ギャァァァァアア!!!」



******************

sideラルフ

「ギャァァァァアア!!!」

バシッ!!
「いでっ!!!」


あまりの喧しさにルディをしばいたら、ルディはしゃがみ込んだ。


「喧しい、夜中に大声出すな。」


思ったより元気そうだな。


泣いてたらどうしようかと思った。


「お前!これ以上バカになったらどうすんだよ!」


ルディは少し涙目になってた。


「大丈夫だ、俺がちゃんと引導を渡してやる。」


まぁ、これ以上馬鹿になれば俺じゃなくてもダリアが殺るだろうがな。


「全然大丈夫じゃねぇよ!物騒すぎるわ!」


心配して損した。


結構元気あるじゃないか。


「まぁ、そう騒ぐな。それよりこの鼻の曲がりそうな匂いは?失恋は動機にならないぞ。」


少し先にある森からこの匂いがする。


まさかと思うが人間を殺したりしてないよな?


「俺がやったと思ってる!?それはないだろ!明らかにおかしいから見に行こうとしてたらお前が来たんだよ。」


あぁ、それであんなに驚いてたわけだ。


「そうか、じゃあ行くぞ。」


とりあえず俺らの手に負えないならクロウさんに報告すればいい。


「え?え?え?もう行く?本当に行く??」


何だ、ビビってたのか。


「死体なんて見慣れてるだろ?」


子供の頃、俺たちは何を食って育った?


「やめろよ。…そんなこと言うの。」


あぁ、嫌な思い出だよな。

俺だって思い出したくない。


「分かった、もう言わない。それより行くぞ。怖いならそこでワンワン泣きながら待ってるといい。」


ここまで言われてついて来なかったら異常だ。


「俺がワンワン泣くわけないだろ!!ったく!ついて来い!俺が先頭だからな!!」


本当、単純な奴。



昔から変わらないな。


「はいはい、行くぞ。」


だからこそ、居心地がいいよ。


お前の隣は。


*********************

sideリラ


「ふふっ、今はいい感じなんだ!ラルフと!」


「え!?本当!?」


私とダリアちゃんは既にクロウ先生の家に戻って、同じベッドに入って好きな人の話をしている。

これは今夜眠れないかもね。


「うん、この間ね……」


ダリアちゃんの嬉しそうな顔が一変した。

眉間に皺を寄せてすごく嫌そうな顔をする。


「え??何??」


どうしたの?

なかなかすごい顔してるよ?


「外…すごく嫌な匂いがする。」


え??


私は全くわからない。


「大丈夫?」


本当に嫌な匂いなんだ。


「ダメ……吐きそう…」

え!?吐く!?


「ちょ、ちょっと待って!!」


とりあえずクロウ先生に…


「クロウ先生!!」


私はベッドを飛び出てクロウ先生の部屋に行く。


ノックをする前にクロウ先生が部屋から出てきた。


「クロウ先生、ダリアちゃんが吐きそうだって…」


だから何か吐いてもいいものが欲しい。


「だろうな、嫌なものが近づいてる。全く、あの狼2人はこんな夜中に何を拾ってきたんだ?」


まさか原因はラルフとルディ?


「リラ、ダリアを連れて店に行っててくれ。店の鍵はこれだ。」


「わかりました。」


何が起こっているんだろう。

私は鈍いからそれがわからない。


とにかく今はクロウ先生に言われた通りにしないと。

私はダリアちゃんのいる部屋へ急いで戻った。


「ダリアちゃん、大丈夫?」


顔色が悪い。

相当苦手な匂いみたい。


「本当にこの匂い嫌い…」


どんな匂いなんだろう。

「クロウ先生が店に行けって言ってたから一緒に行こう?立てる?」


立てないなら背負ってでも行くよ。


「うん、大丈夫。」


ダリアちゃんはついに鼻を摘んだ。


そして……


「きゃっ!!」


私を担ぎ上げて猛スピードでクロウ先生の家を出た。


私が地面に降ろされた時は既にお店の前についていた。


「あー!生き返ったー!!もう本当に最悪な匂いだったよ!乱暴なことしてごめんね!怪我してない??」


原因から少し離れて空気が変わったからダリアちゃんは完全復活していた。


「私は全然何ともないよ!ダリアちゃん、気分治ったみたいでよかったよ。」


心配した。


本当に顔が真っ青だったから。


「ヴァンパイアの私であんなになるんだから、ルディとラルフは失神してるかもね?」


サラッと恐ろしいこと言うね。


「狼は鼻がいいからね。大丈夫かな…?」


いくら2人が一緒にいるとしても心配だ。


「大丈夫。ラルフは言うことなしで大丈夫だし、ルディの馬鹿もいざって時はしっかりしてるから。」


普段喧嘩ばかりのダリアちゃんとルディだけど、分かり合えてるところはちゃんと分かり合えてる。

さすが幼馴染だね。


「だから、ヤバいことは男たちに任せて私たちは恋バナしよ!?」


なるほど、やっぱりヤバいことなんだね。


それなら私の出る幕はない。


足手まといになるだけだから。


「うん、そうだね。」


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