生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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帰還

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sideリラ

「ルディどう?」


ルディはもう起き上がっているし、だいぶ笑顔も戻ってきた。


「骨は完治したから大丈夫!」


この時間で骨が完治するってすごい。


人間の私なら骨が一本折れただけで1ヶ月はかかるのに。


「もうどこも痛くない?本当に大丈夫?」


ルディのことが心配で質問攻めにすると、ルディは笑った。


「本当に大丈夫だって、リラは俺が大好きすぎるな!」


何言ってるの?


「大好きに決まってるでしょ!!」


私が言い切ったら何故かルディが真っ青な顔をした。


「?」


何?


私の後ろを見てるような…


「聞き捨てならねぇな。」


ガシッ!!
「ひっ!!」


この悪魔のような声と、頭が割れそうな腕力は1人しかいない!


「ルシアス様……お疲れ様…です。」


あ…頭が痛い。


「あぁ、本当に俺は疲れてる。戦っただけでも疲れたってのに、ライアスの馬鹿野郎が間男だのなんだの言っていたから本気で走って帰ってみりゃ、これか?」


ルシアス様は記憶をなくしてもかなりのヤキモチ焼きだ。


「ち、違うんです…友達として、大好きなんです…」


「いいか、男女に友情なんてない。所詮はオスとメス、番なんだよ。」


「な、なんてこと言うんですか!!」 



本当に友達なのに!!!


「そ、そうだ!この変態!!リラを離せ!!」


ルディも負けじと応戦してくれた。


「変態はお前だ。どうしてお前はいつも裸なんだ、この変態が。」


確かにルディの今の格好は紳士とは言い難い。



全裸なのはもちろんのこと、大事なところはライアスのジャケットで隠しているだけだから。


「いたたたたた!!!」
「おい!やめろって!!痛がってるだろ!!」
「喚くな、変態が。」


*********************

sideライアス

全く、いつになく騒がしいね。

「ライアス様、コレはどちらに?」

キジャが僕に話しかけた。


「あぁ、それは地下にお願いしてもいい?ルルド、後は任せたよ。」


キジャとルルドは僕とルシアスに変わって例の倒した魔物を運んでくれていた。


「かしこまりました。」


2人は地下に運んでくれるからいいとして…


「そんなに騒ぐと誰かに姿を見られるよ?」


僕がいきなりリラの目の前に現れたら、リラは驚いていた。


「ライアス…様!」

様だなんて白々しいね。


「呼び捨てで構わないよ。それよりみんな中に入りなよ。見られたらまずい子たちばかりだよ。」


全裸に、死んだはずの禁断の果実。


あまり外で騒いでいていい立場じゃない。


「は…はい!」

「ったく、お前にだけは言われたくないな。お前王族だろうが。」


ルシアスは悪態をつきながらリラを抱き上げた。


僕もルシアスだけには言われたくないんだけどな。


「ルシアスも王族だよ。」


ルシアスは僕のことは気にも留めず屋敷へ入る。


「ルディ、立てる?」


僕が声をかけたらルディは僕のジャケットで前を隠して立ち上がった。


「元気そうでよかったよ。あ、そのジャケットはあげる。」


「……あんた、本当は記憶戻ってんじゃないの?アイツも。」


頭が弱いとばかり思ってたよ。


「戻ってたら、君はどうするの?」


野生の勘なのかな。


「別にどうもしない。その方がこれから先うまくいくって踏んでの判断だろ。俺はそこには口出ししないけど、リラに寂しい思いはさせないでやってよ。」


リラは本当にいい友達を持ってるね。



「今の僕とルシアスにそれは難しいことなんだよ。」


賢い君なら分かるよね。


「だから、君が君たちが、リラの側にいてあげて。」


僕たちがそばで守ってあげられない分まで。


「へぇ。そんなこと言うんなら俺たちはリラを返さないかも。」


賢かったり、愚かだったり、君は本当にわからないね。


「そんなことは気にしなくていいよ。僕は欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れるから。」


その時はせいぜい抵抗しないでね。


僕はリラの友達をすすんで殺したくはないんだよ。


「へぇ、よーく覚えておくよ。」


彼は分かってくれそうにないね。


残念だな。


「ほら、君も早く僕の屋敷にお入り。そのままだと風邪をひくよ。」


「はーい。」


ルディは素直に従い、僕の真横を通り過ぎて屋敷へと向かった。


*******************

sideキジャ


「せーの!!!」
「せーの!!!」


絶対無理だと分かっていた。


「もう無理だってー、ちょっと分解して入れない?」


この小さいドアにコレは無理だ。


男2人が明らかに入らないサイズの死体をドアの向こうへねじ込もうとしている。


「くっ!!いや…入る…!」
「ねー、ルルドくーん、絶対無理だって。石頭すぎない?」



なのを意固地になってるのか。



「おいおい、何やってんだ?」



団長がいきなり現れた。


「あぁ、見ての通りです。」


ルルドが通るはずのない大きさの魔物の死体をドアから通そうとしている。


「なるほどな、闇が深い。ったく、退け。」

「ルシアス様…」


団長は魔物の死体を自身の方に引いた。


「危ないからこっち来い。」


団長はぶっきらぼうに言い放って俺たち2人を少し後ろに下がらせた。


「ルシアス様、お手を煩わせる程では……」


「気にするな。こんなもの、煩うものでもない。よく見てろ、こういう物はこうやって入れるんだ。」


団長は軽く足を上げる。


そして俺はこのドアの破壊を察知した。


もう一歩下がっていよう。
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