生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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捕食者

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sideクロウ


ルシアスも目が覚めたことだ。


もうここから出た方がいい。


「行けるならとりあえず場所を移動しよう。こんな所を腹の減った動物に見つかったら一環の終わりだ。」


俺は調査がしたい。


追いかけっこはごめんだからな。


「縁起でもないこと言わないでよ。」


縁起でもも何もふとそう思った。


「思ったことを言っただけだ、そうなるとは限らないから気にするな。」


本当にふと不意にってやつだ。


ポタッ……

ん?


俺達は今円になっていて、その間に水が垂れて来た。


雨か?


若干暗くなったからな。


「それもそうだね。じゃあ僕がクロウを地上へ投げるからこっちに……」



ライアスが上を見て表情をスッとなくす。


「どうした、幽霊でも見たような顔し…て。」


俺も同じように上を見たらライアスと同じことになった。


これは確かに表情がなくなる事案だな。


「お前ら何固まってんだよ。」


ルシアスも上を見た。


きっと穴から俺たちを覗きこんでいるはさぞ面白い光景を目にしているだろう。



いい大人3人が自分の顔を見て、なんとも言えない表情を浮かべているんだから。



「あれは……熊なのか?デカすぎるだろ。」


ルシアスの質問には俺が答えられそうだ。


「熊だな。さっきあの熊はリラとルディを襲っていた。」


2人は無事逃げ切って、ラルフとダリアと合流して今はワニに追いかけられている。


「僕のリラを追いかけ回すなんて、いい根性してるよね。」

「追いかけ回してんのはお前も一緒だろ?お友達じゃねぇか。それからお前のものじゃない。」



また始まった。



「そのくだらない言い合いは腹を空かせた熊の前でもやらないといけないのか?」


まだ他にやることあるだろう。



「言いたいことは言えって教わって来たんだ。熊だろうがワニだろうが言わせてもらう。それよりクロウ、鍋はあるか?」



鍋?


出そうと思えば出せるが…



「何に使う気だ?」



まさか鍋でタコ殴りにするわけじゃないよな?



「もちろん、アイツに使う。熊の肉は結構美味い。腹が減ったから丁度いい。」



熊って食えるのか?



「獣臭そうだ、とても食えるとは思えない。」


俺は木の実と鶏肉でこの3日間を乗り切るつもりだった。


熊は想定外すぎる。


「大丈夫だ、処理は全部俺がやってやる。ちゃんと食えるようにしてやるから安心しろ。」


猪は食わないけど熊は食うのか。


この男がよくわからない。


「寝起きなのに大丈夫?僕が手伝おうか?」


「問題ない、準備運動程度だ。とりあえず、10秒だな。」


ルシアスはギラついた目をして拳を握り指をぼきぼき鳴らす。



「さてさて……リラの分もきっちりお礼をしないとな。」


ニッと悪魔のような笑みを浮かべたルシアスは一瞬で俺の前から消えた。


そうかと思えば頭上でとんでもない音が聞こえる。



バキッ!!!!!


大木が折れるような音だ。


上を見ると、ルシアスの拳が熊の顎にめり込んでいた。


熊はすでに白目を向いていて、後ろに倒れる。


俺たちのいる穴に光が入り一気に明るくなった。


「クロウ。」


驚いていたらライアスに呼ばれた。


「なんだ。」


視線をライアスに移すと、ライアスがいきなり目の前から消えて背後を取られている。


「舌を噛まないようにね。」


その言葉とともに腹をガッチリ掴まれて…

「おい!」


上にぶん投げられた。


俺が着地して下にいるライアスに文句を言おうとしたら、ライアスはもうそこにはいない。


「楽しかった?」


すでに隣にいる。


「楽しいわけあるか。礼は言っておくが。」

「どういたしまして。」


ヴァンパイアにしてもライアスは馬鹿力すぎる。


まぁそれは目の前で暴れているルシアスも同じこと。


「仕上げだ。」


ルシアスはそう言って拳を振り下ろし、瀕死の熊にとどめを刺した。


岩が割れたような音だった。


熊の額が陥没している。


即死だな。


本当に10秒で倒してしまった。


「全く……どっちが獣かわからないな。」



ヴァンパイアは時に恐ろしい。


********************

sideリラ


「「「はぁはぁはぁはぁ……」」」


もうダメ、疲れた……。


今私たちは崖を全速力で登った所。


崖の頂上で私たちは相当息が上がってる。


ルディとラルフは寝転がり、私とダリアちゃんは座り込んでいた。


「はぁ…はぁ…怪我は?…ないか?」


ラルフがみんなに聞く。


「ない…よ…はぁ、はぁ、マジキツい…。」


私やっぱり人間じゃなくてよかった。


人間ならきっと死んでいた。


「私もない…」


みんなよく応える余裕があるね。


私はもう倒れそうだよ。



「リラは?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」


私は答える代わりに頷いた。



「そうか…ならいい。……はぁ……とりあえず、一旦休憩な。」



ラルフの意見に賛成。



これは冗談抜きで後一歩も動けない。


涼しい風が頬を掠める。


これがまた気持ちいい。


体は熱いし息も上がっていて苦しいけど、このままに来る風がたまらなくいい……


あぁ。もう寝れそう。


少し休憩って言ってたし、ほんの少しだけなら寝てもいいかな………
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