生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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最低な物語

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sideリラ


私がどんなに嫌な顔をしても、カルロスは話を続けた。


「俺の地獄のような日々は禁断の果実を手に入れれば終わると思っていた。

兄を皆殺しにし、あの女を殺す計画があったからな。

一つ目は滞りなくできた。 

問題はあの女だ。」


この人本気でイカれてる。

本当に自分の兄弟を殺したんだ。


最低。
 
本当に最低、人に話せるようなことじゃないのに。


「あの女を殺そうと目論んでいるのが悟られ、俺は知らぬ間にあの女と命をつなげられていた。

あの女が死ねば俺も死ぬ、そんな姑息な呪いをかけられて俺は気が気ではなかった。

王になったのに他人に命を握られている。

少しでも気を損ねれば首に刃を突き立てると脅されていた。」


そこまで話すとカルロスは話すのをやめた。


「それからどうなったんですか?」


私が聞くとカルロスは口角を上げた。


「今日はここまでだ。」


はぁ!!?


人を呼び出しておいてそんな小出しにするわけ!?



「まだ聞きます。話してください。」


こんなの何の情報にもならない。


年寄りの昔話に付き合わされただけじゃない。


「疲れたと言っているだろう。迎えも来たことだ、そろそろ帰れ。」



迎え??



「あぁ、そいつの言う通り。帰るぞ。」



え!!


「ルシアス!!」


ルシアスは私の腕を強く引いた。


「ルシアス!何してるんですか!」


暴れても無駄だ、力じゃ敵わない。


「………」


え??無視???


「ルシアス!」

「………」



やっぱり無視してる!!


いくら怒ってるからって無視はひどい。


無視されるような事をした私も私だけど。


「ルシアス!!何か言ってください!!」


いつまで口を聞いてくれないつもり?


「……な。」


え?何か言った!


「も、もう一度!」


声が小さくて聞き取れない。



「二度と蹴るな。」



相当痛かったみたい。


それもそのはず、全人類の男の急所なんだから。


ルシアスが少ししょげている。


「は…はい、二度と蹴りません。」



次やったら泣くかもしれない。


それくらい今のライアスはしょんぼりしているように見えた。


「それから…無事でよかった。」


ルシアスはそう言うと私の腕を離して手を繋ぐ。


「は…はい。」


あれ?おかしい、絶対におかしい。


ルシアスは永久不動の格好いい男だったのに、今はものすごく可愛い。


普段は絶対にこんな顔しないのに。


その顔を見るとどうも頭を撫でたくなってしまう。


「ルシアス…私からもお願いがあります。」

「何だ。」


言うと怒られそうだから先に屈んでもらおう。


「少し屈んでください。」


ルシアスは何の疑いもなく屈んでくれた。


なんて可愛いんだろう。


すごく愛おしい。


*********************

sideルシアス


リラはきっと怒っている。


急に連れ出したことに腹を立てているに違いない。


蹴るなとは言ったが、殴るなとは俺は言ってない。


このタイミングで俺に屈めと言うんだから、きっと俺を殴るんだろう。


完全に失敗した。


殴るなと言っておけばよかった。


さっきは見事な蹴りだったからな。


拳の方もきっと見事な出来になっている。


俺はいつどこから殴られてもいいように密かに歯を食いしばった。


それと同時にリラが手を動かす。


気張れよ、俺。


さっきのが耐えられたんだ、いや、耐えられなかった。


が、急所を蹴られるよりまだ顔を殴られる方が100倍マシだ。


さぁ、来い。好きなだけ殴れ!!


わしゃわしゃ……




「………?」



何が起こってる?


どうして俺は殴られてないんだ?



「ルシアス、今日はとっても可愛い。」


可愛い……??


これは…知ってるぞ。


ナイトを撫でる時の手だ。


まさか俺を犬か何かだと思ってるのか??


「可愛いって…」


これは馬鹿にされてんのか??


「やめろ、全く。」


リラの手を掴むとリラは嬉しそうに笑う。


「俺は別に可愛くない、ゴツいしデカイしそもそも男なんだから可愛いわけないだろ。」



俺が何を言おうとリラは嬉しそうに笑うだけだった。


*******************

sideリラ

可愛いと言うと余計に拗ねるルシアス。


ムキになるところが可愛いって言ってるのに。


もう少し見ていたい。


「それより、アイツはなんて言ってたんだ?」


あぁ、もちろん聞きたいよね。


「またみんなで集まって話そうと思います、その時でいいですか?」



何度も話すよりみんなの前で一度話す方がいい。



「その方が要領はいいな。とりあえず全員集めるから話してくれ。」



可愛いから格好いいに切り替わるのが早い。



もう少し見ていたかったのに。


なんて、言ってられないね。



私たちには1日でも早く倒さないといけない敵がいるんだから。
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