生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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酷い顔でも

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sideルシアス


リラの腕をかばっと開いた。


「あーあ。こりゃ酷ぇな。」


これが単純明快な感想。


鼻は折れて、頬はパンパンで瞼も蜂に刺されたかのように腫れている。



「俺の可愛い妻がボロボロだ。」



前髪をずらしたら額の大きなたんこぶが露わになった。



「酷い顔の私は嫌ですか…?」


うるうるした目で不安そうに俺に聞いてくる。


どんな顔になってもたまらなく可愛い。



「さぁな。」


どっちだと思う?


俺が顔如きで嫌になると思ってるか?



そう思われているなら軽薄な男だって言われてるのと同じだ。



「さぁなって!」


リラは少しムッとした。



ここで言ってほしいのか?



それは遠慮したい。



「答えは…」



みんなに聞かれたくないだろうからリラの耳元へ口を寄せた。



「ベッドの中で教えてやる。」


リラの破茶滅茶になった顔が真っ赤に染まった。



答えなんて聞かなくてもわかってる証拠だ。



俺がベッドで毎回ベッドで愛を囁いた甲斐があったな。



「はいはい、そこ。イチャイチャ禁止でーす。」



キジャがいいところで止めに入った。



「なんだ、僻みか?」


俺が聞くとキジャはため息をついた。



「休憩してる暇はありませんよ。容量よく怪我しないと。ただでさえすぐ治るのに。
殴られ続けるのは嫌でしょう?」



キジャがリラの顔を覗き込んだ。


リラは普段あまり近づかないキジャに近づかれて少し驚いている。



「近い。」



躓いたらどうする。


リラに抱きついたらお前の命はないぞ。



「いやぁ…美人さんが見事に台無しだ。」



失礼な奴だな。


「び…美人…だなんて…/////」



リラが赤くなった。



「いい度胸だな、俺の妻を口説くなんて。お前もリラと同じような顔になりたいらしい。」



「勘弁してくださいよ、俺は人妻興味ないんで。」



キジャはそう言ってサッと俺らから離れた。



**********************

sideルーカス



「つ……ついに……」



俺は力つきながら言った。



「できた……。」


そしてそれはクロウさんも。




「流石に疲れたな…。」



クロウさんは珍しく足を投げ出して床に座っている。



「………もう、二度とやりたくないです。」



俺は床に寝転がっていた。



普通なら何日もかかる回復薬を今即興で数時間で作った俺たち。



かなりの魔力を消費した。


空間魔法で飛び回り、材料を集めてひたすら魔力を練って薬を作った。



本当によく頑張ったと思う。



「もちろん…二度とやらない。俺はこれを渡してくるからお前はここで少し休んでいろ。」


クタクタになっているはずのクロウさんは重い腰を上げた。



「俺も」

「いい、かなり無理をさせたからな。」



クロウさんはポンポンと俺の頭を撫でる。



「本当によく頑張った。」



いつか味わったこの感覚。



大きな手が俺の頭を撫でるこの感覚は小さい時の記憶だった。



小さい時の記憶はあまりいいものはないはずだったのに。



いいことを思い出せたな。
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