生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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愛憎劇

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sideタランテラ


静寂は突然壊された。


「タランテラ!!!」
 

女は金切声を上げて私の牢の前にきた。


ダリアか。


あの女は何を騒いでいる?


「あらあら…はしたない。」


ご自慢の顔が台無しになっている。


「タランテラ!!ライアス様に何したのよ!!」


ダリアは私の胸ぐらを思い切り掴む。


「答えなさい!!!」


バシッ!!!


いきなり現れたかと思えば私を殴るか。



「あっははは!私は何もしていない、あの男はただ己の力を見誤っただけ、私には何もできない。」


「じゃあ何であんたはライアス様と同じ事をして何ともないのよ!!教えなさい!!」



拷問の次は泣き落とし?


私が口を割らないから違う方法で出てきたか。



「私は何も知らない、喧しい口を閉じて消え失せるがいいわ。」


つまらないことを思いつく連中だ。


バキッ!!!
「っ!!!!」


また私を殴った…この女、拘束さえなければ殺してやるのに…!



「私には彼しかいないのよ!!!」



ダリアは涙を浮かべて私に縋った。



「お願いだから、ライアス様を助ける方法を教えて!!」



まさか、あの男に惚れている?


この小娘が?



「芝居はいい、何をされても私は喋らない。」



苦しい芝居だ。


惚れた腫れたで私が何か言うとでも思ったか、小娘が。


「いいわ……わかった…何も話してくれないなら、リラちゃんを今すぐ殺すわ。」



ふと泣くのをやめて、また嘘を塗り固める。



「殺してみるといい、そんなハッタリは私には無意味ぅっ!!!」



この小娘!私の首を掴んで…!



「ハッタリかしら?あんたが1番分かってるでしょ?
私は、自分が愛した人のためなら何でもするの。
リラちゃんを殺す事なんて躊躇しない、むしろ死んでくれた方がいい。
あの子がいる限り、ライアス様は私のものにはならないんだから!!!」


「っぐ!!」



最後に一度、手に力を入れて小娘が私の首を離した。




小娘の目が据わっている。



まさか…



「本気…なのか?」



まさか本気であの男に惚れているのか?



「本気だって言ったでしょ…見てなさいよ。」



小娘は私にいきなり背を向けた。



「待て、小娘!!待て!ダリア!!」


私の静止も聞かずに小娘はフラフラと地下牢を後にした。



*********************

sideリラ


ついにこの時が来た。


「来い!!早く!!!」


ダリアちゃんの演技は完璧で、地下牢の少し前から私の髪を掴み引き摺っていく。



「嫌だ!!離して!!何でこんなことするの!!」



ついに地下牢の扉を通り、階段も引きずって連れていかれる。



ここからは少しも気が抜けない。



絶対にバレないように、とにかく私はダリアちゃんと大喧嘩したことにしないと。



「痛い!!!離してよ!!!」

「黙れ!!!さっきからうるさいのよ!!」




ダリアちゃんは女優になるべきだ。


「ほら!タランテラ!!言いなさいよ!本当に殺すわよ!!!」



この勢い、本当に殺されそうだ。


いや、この後殺されかけるんだけど…。



「………。」
「早く言ってよ!!!」



ダリアちゃんは金切声を上げてナイフを私の喉元に突き付けた。



「言えって言ってるの!!」
「い゛っ!!!」



ナイフが見事に私の喉を切る。



あまりの痛みに涙が出た。



「やめて!離して!ダリアちゃん!!」



私は全力で暴れた。


私の全力なんてダリアちゃんの腕力を前にしたら子猫も同じ。


ダリアちゃんは難なく私を押さえ込んだ。



「いいの?殺すわよ?最後の禁断の果実よ?」
「どうせ」「ぎゃっ!!!」


タランテラが何か言いかけた瞬間、ダリアちゃんはまた深く私の喉にナイフを入れた。


「よせ!!やめろ!!小娘!!!」


掛かった。



「じゃあ早く言いなさい…早く、早く!!!」
「ゲホッ!!!!」


これ以上喉を切られたら絶対に死ぬ。


ダリアちゃんもそれを察したみたいで…



「早く言ってよ!!ライアス様が死んじゃうでしょ!!ねぇ!!!」

「あ゛っ!!!!」



ダリアちゃんは私の脇腹に思い切りナイフを刺した。



「………」
「あぁ…そう…まだ言わないんだ。じゃあいい。もういいよ…ライアス様が助からないなら、みんな殺して私も死ぬわ!!!!」



ダリアちゃんがナイフを振り上げたから私は思い切り目を瞑る。



すると………



「ダリア!!!やめろ!!!」



この場をもっと掻き乱すルディが登場した。
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