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Ep.5:ゴミ捨て場の運命(ガントレットとの遭遇)
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ゴミの山から掘り出したその鉄塊は、ひどく冷たかった。
まるで冷凍庫から出したばかりの生肉のような、湿った冷気が掌に伝わってくる。俺はモンキーレンチを脇に挟み、泥だらけの指で表面の錆を擦ってみた。
ジャリッという音とともに表面の汚れが落ち、その下から鈍い黒色の金属肌が顔を覗かせる。デザインは無骨だ。騎士が身につけるような洗練された装飾はない。禍々しいの不気味なフォルム。
「……なんだこれ? 防具か?」
俺はスマホを取り出し、インストールしておいたアプリ――『ハンターズ・アイ(無料版)』を起動した。カメラをかざすとアイテムの鑑定ができるアプリだ。無料版なので五秒の動画広告が流れる。イライラしながら「スキップ」ボタンを連打する。早くしろ、こちとら時間がないんだ。
ようやく表示された鑑定結果は、実にあっけないものだった。
『名称:不明』
『ランク:測定不能』
『詳細:データがありません』
「使えねえアプリだな!」
俺は悪態をついた。測定不能ということは、ゴミ同然のEランク以下か、データベースにないガラクタだ。まあ、こんなゴミ捨て場にあるんだ、十中八九前者だろう。鉄くずとして売れば、百円くらいにはなるかもしれない。
スライムの核二個分だ。そう皮算用をして、俺はガントレットを持ち帰ろうとボストンバッグを開けた。
その時だった。
ガントレットの内側、手を入れる部分の闇が、ドクンと脈打ったように見えた。
見間違いか? 顔を近づけた次の瞬間。ガパァッ! 金属であるはずのガントレットが、まるで捕食動物が顎を開くように変形した。
「うおっ!?」
反応する間もなかった。黒い鉄塊が、俺の左手に飛びかかってきた。ガチンッ! 乾いた金属音が響き、手首に激しい衝撃が走る。装着されたのではない。これは、「噛みつかれた」のだ。
「ぎゃあああああああっ!!」
絶叫が喉から迸る。
痛い。熱い。万力で締め上げられているようだ。ガントレットの内側から無数の棘が飛び出し、俺の皮膚に食い込んでいる感覚がある。
「な、なんだこれ! 外れろ! 外れろよクソッ!」
俺は右手のモンキーレンチで、左手のガントレットをガンガンと叩いた。火花が散る。だが、びくともしない。それどころか、叩くたびにガントレットは収縮し、さらに深く俺の肉へと食い込んでくる。
痛い痛い痛い! 骨が! 俺の貧弱な骨密度じゃ耐えられない! 指先の感覚がなくなっていく。血流が止まっているのか、それとも神経がイカれたのか。
「誰か! 誰か助けてくれ! 労災だ! これは労災案件だ!」
誰もいないゴミの山で、俺は無様に転げ回った。泥水が口に入る。
寄生虫だ。こいつは俺の腕を食らって生きようとしている。このままじゃ腕が壊死する。切断? 四十二歳で隻腕? 会社はどうする? キーボードが打てない俺なんて、即リストラ対象だぞ!
パニックで過呼吸になりかけた、その時。俺の悲鳴を聞きつけたのか、それとも血の匂いを嗅ぎつけたのか。瓦礫の山の向こうから、ズルリと「それ」が現れた。
「グルルルゥ……」
低い唸り声。身長は俺の肩ほどしかない。だが、その醜悪な緑色の皮膚と、眼球が飛び出した顔つきは、スライムのような「動くゼリー」とは次元が違う。
明確な「悪意」を持った生物。ゴブリンだ。しかも、その手には赤錆びた粗末な短剣が握られている。
服装はボロボロの腰布一丁だが、その体躯は筋肉質で、見るからに凶暴そうだ。
「ひっ……」
俺の喉が引きつる。なぜここに? ここは浅層だぞ。ゴブリンが出るのはもっと下の階層のはずだ。俺の脳裏に、掲示板の書き込みがよぎる。
『最近、上層の工事の影響で、深層のモンスターが浅層に迷い込む「はぐれ」が増えているらしい』
はぐれゴブリン。群れからはぐれ、飢えて凶暴化した個体。通常個体よりも生存本能が強く、危険度は倍以上と言われる。目が合った。濁った黄色の瞳が、俺という獲物を品定めしている。殺される。スライム相手に死闘を演じた俺が、武器を持ったゴブリンに勝てるわけがない。
あいつの持っている短剣、錆びてるじゃないか。破傷風になる。刺されたら絶対、破傷風になる。そんな的外れな恐怖が頭を支配する。
「ギャッ!」
ゴブリンが地面を蹴った。速い。俺のような運動不足の中年とは、生物としてのスペックが違う。一瞬で距離を詰められ、錆びた刃が俺の腹めがけて突き出される。
「うわああああっ!」
俺は無様に尻餅をつきながら、モンキーレンチを盾にした。カィィンッ! 金属音が響く。奇跡的に防いだ。だが、衝撃で腕が痺れる。重い。子供のような体格なのに、その腕力は成人男性並みか、それ以上だ。
ゴブリンは嗜虐的な笑みを浮かべ、追撃を加えてくる。二撃、三撃。俺は泥の上を転がりながら、必死で避ける。
ジャージが裂け、泥水が傷口に染みる。息が続かない。心臓が破裂しそうだ。もう駄目だ。体力の限界だ。次に踏み込まれたら、避けられない。
ゴブリンが大きく振りかぶった。俺の首を狙っている。
走馬灯が見えた。いや、そんな綺麗なものじゃない。見えたのは、銀行の残高通帳と、住宅ローンの返済予定表だ。
あと二十年。三千五百万円。俺が死んだら、団信でローンはチャラになる。友里は助かるかもしれない。でも、凛はどうなる? 「パパはダイエットのために入ったダンジョンで、ゴミを漁って野垂れ死にました」なんて、一生の恥だ。
それに、俺はまだ、凛と和解していない。洗濯物を、一緒に洗ってもらっていない! こんな汚い場所で、緑色の小鬼に刺されて、人生エンドロールなんて御免だ!
「ふざけるな……!」
俺の口から、本音が漏れた。
「俺は、まだ、死ねないんだよぉぉぉッ!」
その瞬間だった。
ドクンッ!! 左手のガントレットが、心臓のように強く脈打った。
激痛が走る。だが、それは先ほどまでの「締め付ける痛み」とは違った。血管に熱い鉛を流し込まれるような、気色の悪い一体感。頭の中に、ノイズのようなイメージが流れ込んでくる。
――飢餓。捕食。生存本能。こいつ、俺の「生きたい」という執着を食べてやがるのか? 俺の視界が、一瞬だけモノクロに反転した。
目の前のゴブリン。その足元に伸びる、薄暗い「影」。その影が、まるで液体のように揺らぎ、俺の左手に向かって流れ込んでくるのが見えた。ズルズルと。スパゲッティをすするように。ガントレットが、ゴブリンの影を吸引している。
『スキル:影喰らい(初期)を発動』
脳内で、無機質なアナウンスが響いた気がした。次の瞬間、俺の全身に爆発的な力が湧き上がった。カフェイン錠剤を一瓶丸飲みしたような、危険な覚醒感。重かった体が、羽のように軽い。
視界がクリアになり、ゴブリンの動きがスローモーションに見える。振り下ろされる短剣。見える。軌道が、まるわかりだ。
俺は無意識に左手を突き出した。ガシィッ! ゴブリンの手首を、ガントレットが鷲掴みにした。
「ギッ!?」
ゴブリンが驚愕に目を見開く。俺の握力は、四十代平均の四十キロそこそこなはずだ。だが今、俺の左手は、鉄パイプすらへし折れそうな剛力を発揮している。ミシミシと、ゴブリンの細い腕が悲鳴を上げる音。俺は自分でも信じられない力で、ゴブリンを引き寄せた。そして、右手のモンキーレンチを、フルスイングで振り抜いた。
「ファーァァァァッ!!」
ドゴォォォンッ! 鈍く、重い衝撃音。
モンキーレンチがゴブリンの脇腹に直撃した。肋骨が砕ける感触が、手に伝わってくる。
「ギャガアアアッ!」
ゴブリンが吹き飛び、コンクリートの柱に激突した。
一撃。たった一撃で、あの凶暴な怪物が悶絶している。俺は呆然と自分の手を見た。左手から黒い煙のようなものが立ち上り、霧散していく。それと同時に、急激な脱力感が襲ってきた。フルマラソンを走りきった直後のように、膝から力が抜ける。
「はあ、はあ、はあ……」
ゴブリンは、よろよろと立ち上がると、俺を恐怖の目で見つめた。そして、奇声を上げながら、ダンジョンの奥へと逃げ去っていった。追う気力はない。俺はその場に大の字に倒れ込んだ。
天井の岩肌が見える。生きている。俺は、生き残ったんだ。心臓の鼓動が、耳元でうるさいくらいに鳴っている。助かった。
安堵のため息をつこうとして、俺は左手の異変に気づいた。ガントレットは、まだそこにあった。俺の腕に食い込んだまま、まるで皮膚の一部になったかのように、ピッタリと張り付いている。引っ張ってみる。痛い。皮膚が引っ張られる痛み。接着剤でくっついた、なんてもんじゃない。融合している。
「……嘘だろ」
俺は青ざめた。これ、どうやって外すんだ? 病院に行けば取れるか? いや、こんな謎の物体が融合した腕なんて見せたら、即座に隔離病棟行きだ。
じゃあ、切断? いやいや冗談じゃない。
じゃあ、このまま? 明日、会社はどうする。
満員電車に、この中二病全開のガントレットをつけて乗れというのか。部長になんて説明する。
「あ、これですか? 週末にちょっと闇の力に目覚めまして」
言えるかーーッッ!
俺は泥だらけの姿で、頭を抱えた。ゴブリンを撃退した達成感など、一瞬で吹き飛んだ。残ったのは、社会的信用を失うかもしれないという、絶望だけだった。
まるで冷凍庫から出したばかりの生肉のような、湿った冷気が掌に伝わってくる。俺はモンキーレンチを脇に挟み、泥だらけの指で表面の錆を擦ってみた。
ジャリッという音とともに表面の汚れが落ち、その下から鈍い黒色の金属肌が顔を覗かせる。デザインは無骨だ。騎士が身につけるような洗練された装飾はない。禍々しいの不気味なフォルム。
「……なんだこれ? 防具か?」
俺はスマホを取り出し、インストールしておいたアプリ――『ハンターズ・アイ(無料版)』を起動した。カメラをかざすとアイテムの鑑定ができるアプリだ。無料版なので五秒の動画広告が流れる。イライラしながら「スキップ」ボタンを連打する。早くしろ、こちとら時間がないんだ。
ようやく表示された鑑定結果は、実にあっけないものだった。
『名称:不明』
『ランク:測定不能』
『詳細:データがありません』
「使えねえアプリだな!」
俺は悪態をついた。測定不能ということは、ゴミ同然のEランク以下か、データベースにないガラクタだ。まあ、こんなゴミ捨て場にあるんだ、十中八九前者だろう。鉄くずとして売れば、百円くらいにはなるかもしれない。
スライムの核二個分だ。そう皮算用をして、俺はガントレットを持ち帰ろうとボストンバッグを開けた。
その時だった。
ガントレットの内側、手を入れる部分の闇が、ドクンと脈打ったように見えた。
見間違いか? 顔を近づけた次の瞬間。ガパァッ! 金属であるはずのガントレットが、まるで捕食動物が顎を開くように変形した。
「うおっ!?」
反応する間もなかった。黒い鉄塊が、俺の左手に飛びかかってきた。ガチンッ! 乾いた金属音が響き、手首に激しい衝撃が走る。装着されたのではない。これは、「噛みつかれた」のだ。
「ぎゃあああああああっ!!」
絶叫が喉から迸る。
痛い。熱い。万力で締め上げられているようだ。ガントレットの内側から無数の棘が飛び出し、俺の皮膚に食い込んでいる感覚がある。
「な、なんだこれ! 外れろ! 外れろよクソッ!」
俺は右手のモンキーレンチで、左手のガントレットをガンガンと叩いた。火花が散る。だが、びくともしない。それどころか、叩くたびにガントレットは収縮し、さらに深く俺の肉へと食い込んでくる。
痛い痛い痛い! 骨が! 俺の貧弱な骨密度じゃ耐えられない! 指先の感覚がなくなっていく。血流が止まっているのか、それとも神経がイカれたのか。
「誰か! 誰か助けてくれ! 労災だ! これは労災案件だ!」
誰もいないゴミの山で、俺は無様に転げ回った。泥水が口に入る。
寄生虫だ。こいつは俺の腕を食らって生きようとしている。このままじゃ腕が壊死する。切断? 四十二歳で隻腕? 会社はどうする? キーボードが打てない俺なんて、即リストラ対象だぞ!
パニックで過呼吸になりかけた、その時。俺の悲鳴を聞きつけたのか、それとも血の匂いを嗅ぎつけたのか。瓦礫の山の向こうから、ズルリと「それ」が現れた。
「グルルルゥ……」
低い唸り声。身長は俺の肩ほどしかない。だが、その醜悪な緑色の皮膚と、眼球が飛び出した顔つきは、スライムのような「動くゼリー」とは次元が違う。
明確な「悪意」を持った生物。ゴブリンだ。しかも、その手には赤錆びた粗末な短剣が握られている。
服装はボロボロの腰布一丁だが、その体躯は筋肉質で、見るからに凶暴そうだ。
「ひっ……」
俺の喉が引きつる。なぜここに? ここは浅層だぞ。ゴブリンが出るのはもっと下の階層のはずだ。俺の脳裏に、掲示板の書き込みがよぎる。
『最近、上層の工事の影響で、深層のモンスターが浅層に迷い込む「はぐれ」が増えているらしい』
はぐれゴブリン。群れからはぐれ、飢えて凶暴化した個体。通常個体よりも生存本能が強く、危険度は倍以上と言われる。目が合った。濁った黄色の瞳が、俺という獲物を品定めしている。殺される。スライム相手に死闘を演じた俺が、武器を持ったゴブリンに勝てるわけがない。
あいつの持っている短剣、錆びてるじゃないか。破傷風になる。刺されたら絶対、破傷風になる。そんな的外れな恐怖が頭を支配する。
「ギャッ!」
ゴブリンが地面を蹴った。速い。俺のような運動不足の中年とは、生物としてのスペックが違う。一瞬で距離を詰められ、錆びた刃が俺の腹めがけて突き出される。
「うわああああっ!」
俺は無様に尻餅をつきながら、モンキーレンチを盾にした。カィィンッ! 金属音が響く。奇跡的に防いだ。だが、衝撃で腕が痺れる。重い。子供のような体格なのに、その腕力は成人男性並みか、それ以上だ。
ゴブリンは嗜虐的な笑みを浮かべ、追撃を加えてくる。二撃、三撃。俺は泥の上を転がりながら、必死で避ける。
ジャージが裂け、泥水が傷口に染みる。息が続かない。心臓が破裂しそうだ。もう駄目だ。体力の限界だ。次に踏み込まれたら、避けられない。
ゴブリンが大きく振りかぶった。俺の首を狙っている。
走馬灯が見えた。いや、そんな綺麗なものじゃない。見えたのは、銀行の残高通帳と、住宅ローンの返済予定表だ。
あと二十年。三千五百万円。俺が死んだら、団信でローンはチャラになる。友里は助かるかもしれない。でも、凛はどうなる? 「パパはダイエットのために入ったダンジョンで、ゴミを漁って野垂れ死にました」なんて、一生の恥だ。
それに、俺はまだ、凛と和解していない。洗濯物を、一緒に洗ってもらっていない! こんな汚い場所で、緑色の小鬼に刺されて、人生エンドロールなんて御免だ!
「ふざけるな……!」
俺の口から、本音が漏れた。
「俺は、まだ、死ねないんだよぉぉぉッ!」
その瞬間だった。
ドクンッ!! 左手のガントレットが、心臓のように強く脈打った。
激痛が走る。だが、それは先ほどまでの「締め付ける痛み」とは違った。血管に熱い鉛を流し込まれるような、気色の悪い一体感。頭の中に、ノイズのようなイメージが流れ込んでくる。
――飢餓。捕食。生存本能。こいつ、俺の「生きたい」という執着を食べてやがるのか? 俺の視界が、一瞬だけモノクロに反転した。
目の前のゴブリン。その足元に伸びる、薄暗い「影」。その影が、まるで液体のように揺らぎ、俺の左手に向かって流れ込んでくるのが見えた。ズルズルと。スパゲッティをすするように。ガントレットが、ゴブリンの影を吸引している。
『スキル:影喰らい(初期)を発動』
脳内で、無機質なアナウンスが響いた気がした。次の瞬間、俺の全身に爆発的な力が湧き上がった。カフェイン錠剤を一瓶丸飲みしたような、危険な覚醒感。重かった体が、羽のように軽い。
視界がクリアになり、ゴブリンの動きがスローモーションに見える。振り下ろされる短剣。見える。軌道が、まるわかりだ。
俺は無意識に左手を突き出した。ガシィッ! ゴブリンの手首を、ガントレットが鷲掴みにした。
「ギッ!?」
ゴブリンが驚愕に目を見開く。俺の握力は、四十代平均の四十キロそこそこなはずだ。だが今、俺の左手は、鉄パイプすらへし折れそうな剛力を発揮している。ミシミシと、ゴブリンの細い腕が悲鳴を上げる音。俺は自分でも信じられない力で、ゴブリンを引き寄せた。そして、右手のモンキーレンチを、フルスイングで振り抜いた。
「ファーァァァァッ!!」
ドゴォォォンッ! 鈍く、重い衝撃音。
モンキーレンチがゴブリンの脇腹に直撃した。肋骨が砕ける感触が、手に伝わってくる。
「ギャガアアアッ!」
ゴブリンが吹き飛び、コンクリートの柱に激突した。
一撃。たった一撃で、あの凶暴な怪物が悶絶している。俺は呆然と自分の手を見た。左手から黒い煙のようなものが立ち上り、霧散していく。それと同時に、急激な脱力感が襲ってきた。フルマラソンを走りきった直後のように、膝から力が抜ける。
「はあ、はあ、はあ……」
ゴブリンは、よろよろと立ち上がると、俺を恐怖の目で見つめた。そして、奇声を上げながら、ダンジョンの奥へと逃げ去っていった。追う気力はない。俺はその場に大の字に倒れ込んだ。
天井の岩肌が見える。生きている。俺は、生き残ったんだ。心臓の鼓動が、耳元でうるさいくらいに鳴っている。助かった。
安堵のため息をつこうとして、俺は左手の異変に気づいた。ガントレットは、まだそこにあった。俺の腕に食い込んだまま、まるで皮膚の一部になったかのように、ピッタリと張り付いている。引っ張ってみる。痛い。皮膚が引っ張られる痛み。接着剤でくっついた、なんてもんじゃない。融合している。
「……嘘だろ」
俺は青ざめた。これ、どうやって外すんだ? 病院に行けば取れるか? いや、こんな謎の物体が融合した腕なんて見せたら、即座に隔離病棟行きだ。
じゃあ、切断? いやいや冗談じゃない。
じゃあ、このまま? 明日、会社はどうする。
満員電車に、この中二病全開のガントレットをつけて乗れというのか。部長になんて説明する。
「あ、これですか? 週末にちょっと闇の力に目覚めまして」
言えるかーーッッ!
俺は泥だらけの姿で、頭を抱えた。ゴブリンを撃退した達成感など、一瞬で吹き飛んだ。残ったのは、社会的信用を失うかもしれないという、絶望だけだった。
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