私の恋が実るまで

優しい味

翌朝、私はいつも通りの時間より少し早く起き、髪を整え歯を磨き朝食の準備を始めた。
朝はシンプルにわかめの味噌汁に卵焼き、焼き方はスクランブルエッグ、昨日榊原くんはスクランブルエッグが好きと言っていたのでそうする。
あとは白米に朝にいいと言われている納豆を用意する。
白米が炊ける音がなり味噌汁が完成したと同時に榊原くんに電話をかける。
寝ているのか中々電話に出なかったけどやっと出た榊原くんの声はとても低かった。
窓の鍵空いてるから入ってきてといい卵焼きを作る。
昨日の夜榊原くんが登れるようにホームセンターで壁にかけるハシゴを用意し垂らしておいた。
よっぽどの事がない限り落ちないと思うけど
そう思ってると窓がノックされ扉が開く。
「あ、おはよ～榊原くん」
「おはよ、柊さん」
まだ眠いのか目を擦りながら返事をする榊原くん。
「榊原くんは納豆食べれる？」
「うん」
まるで子供みたいに目を擦りながら頷いて返事をする榊原くん。
「わかった～
もうすぐできるからご飯よそってくれる？」
「わかった」
そうして全ての料理が出来上がり私たちは向かい合って座った。
「それじゃ、いただきます」
お互いに合唱しながら言う。
「どう？榊原くん、美味し？」
「うん、美味しい…」
榊原くんは初めに味噌汁を1口飲んだあとお皿テーブルに戻して固まってしまった。
「どうしたの？好みの味じゃなかった？」
私が榊原くんの隣に移動して訊く。
「こんなに、美味しくて優しい味、お母さんのご飯の味に似てて、
ごめん、せっかく作ってくれたのに」
泣きそうになりながら言う榊原くんをそっと抱きしめ言う。
「そんなのは気にしなくていいから、
泣きたいなら泣いていいよ。
榊原くんが親戚の人の家でどんな風に生活してなのか分からないけど今は私しか居ないから大丈夫」
自分の子供じゃないから、そんな理由で榊原くんを蔑ろにしてた人も居たんだと思う。
でも私はそんな事はしない。
「落ち着くまでこうしてよ。
大丈夫だから」
私はそう言って榊原くんの背中を優しく撫でる。
……
しばらくした後、落ち着きを取り戻した榊原くんは突然泣き出した理由を教えてくれた。
どうやら私の作った味噌汁の味が榊原くんのお母さんの味にそっくりだったらしく思い出してしまったらしい。
「まだ時間あるからゆっくり食べよ」
「うん」 
そうして私の準備が終わるまでずっと話し続け着替える際にはずっと後ろを向いてる榊原くんにイタズラをしながらゆっくりと過ごし学校へ向かうのだった。