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第1章 宿敵の家の当主を妻に貰うまで
第23話 再会、オーロラちゃん
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屋敷の入り口が締まる音は、どうしてここまで厳かなのだろうか、なんて変なことを考えていた。大きな扉を抜けた先には灰色の絨毯が敷き詰められた空間があった。奥には階段が伸びていて、左右には廊下が伸びている。その全てが綺麗に整理、清掃されていて、手が行き届いていた。
「暖かいな」
屋敷の中は外のひんやりとした冷たさが一切なかった。ただ室内だからじゃなくて、すごく弱火の暖炉の近くにいるような。
「魔法で温めているんです。どの部屋も同じ室温になっていますよ」
「だからか……魔法ってすごいんだな」
覇気にはこんな便利な使い方はない。フォルス家は魔法が覇気の関係上使えないってことは、これらの温かい魔法だって使えない訳で、それだけで結構損をしているんじゃないだろうか。サリアの街が過ごしやすい気候じゃなかったら、フォルス家も苦しんでいたのかもしれない。
そう思っていると、大きな音が耳に響いた。扉が開いた音に違いはないけれど、目に入る限り空いた扉はない。
「ノヴァ様!」
頭上から聞こえた声に見上げれば、声の主は左上の2階部分にいた。オーロラちゃんが手すりから身を乗り出して目を輝かせている。どうやらさっきの音は彼女が扉を開けてここに来た時の音だったらしい。
危ないよ、と言おうとしたけど、そのときにはもう彼女は手すりから降りてしまっていた。階段まで走り、駆け下りて俺達の元へと来るオーロラちゃん。少し前に会ったばかりだけど、元気なようで安心した。
「やあオーロラちゃん、一昨日ぶりだね」
そう挨拶をするとオーロラちゃんは目の前で急停止し、姿勢を正して貴族の礼を取った。
「ようこそノヴァ様……アークゲート家へようこそ」
その所作は洗練されていて、アークゲート家のご令嬢として相応しいふるまいだったけど、彼女の素を知っている俺からすると堅苦しく感じた。
「やめてよオーロラちゃん、この前みたいな感じにしてほしいな」
「…………」
そう言うとオーロラちゃんはチラリとだけシアを見た。しばらく目線を交差していたけど、やがて作った笑顔ではなく、以前の勝気な表情に切り替えてくれた。
「そう? じゃあそうするわね。それにしても驚いたわ、まさかお姉様の婚約者があなただったなんて」
「……おう、これこれ。これがオーロラちゃんだよなぁ」
俺の知っているオーロラちゃんになったと思って笑っていると、当の本人は不貞腐れたように頬を膨らませてそっぽを向く。
「ちょっと恥ずかしいから、その反応辞めて欲しいかも」
初めて会ったときと同じような反応に、自然と笑みがこぼれていた。
「あはは、ごめんごめん。でもまだ正式に婚約者ってわけじゃないよ」
そう告げると、オーロラちゃんは目を細めて俺を見てくる。
「ふーん、まだ、ね」
やけに「まだ」の部分を強調しますね、この子は。
「ねえねえ、あなたのこと、ノヴァお兄様って呼んでもいい?」
「え……いやそんな大げさな――」
「いいでしょ? ノヴァお兄様?」
「う……」
コテンと首を傾げて上目遣いをするオーロラちゃん。流石に狙っているわけではないと思うけど、破壊力は抜群だ。まあシアの事もお姉様と呼んでいるし、ここは仕方ない。なにが仕方ないのかは考えない。
「分かったよ。でもあんまり外で大っぴらに言うのは辞めてね?」
「もちろんよ! ノヴァお兄様!」
笑顔で応えるオーロラちゃんだが、その後にほんの一瞬だけシアと目を合わせていた。この姉妹、アイコンタクトをする癖でもあるのだろうか。さっきから何度か目線を交差させているけど、あの一瞬じゃ何も伝わらない気が。
「で、これからどうするの? 集合が一時間後って言うのは聞いているけど」
「それまで屋敷をノヴァさんに案内するんです。オーラはノヴァさんと会いたがっていましたから、声をかけました」
「本当!? ありがとうございます、お姉様!」
「いえいえ」
おぉ、やっぱりシアとオーロラちゃんは思った通り仲が良いみたいだ。シアは女神のような慈愛の心に満ちていて優しいし、オーロラちゃんもたまに失敗することはあるけど根は優しい子だ。相性が悪いわけもないか。
「では、こちらから案内しますね」
「ああ、頼むよ」
右手の廊下をシアに手で指し示されて、俺達はそちらへと足を向けた。
「暖かいな」
屋敷の中は外のひんやりとした冷たさが一切なかった。ただ室内だからじゃなくて、すごく弱火の暖炉の近くにいるような。
「魔法で温めているんです。どの部屋も同じ室温になっていますよ」
「だからか……魔法ってすごいんだな」
覇気にはこんな便利な使い方はない。フォルス家は魔法が覇気の関係上使えないってことは、これらの温かい魔法だって使えない訳で、それだけで結構損をしているんじゃないだろうか。サリアの街が過ごしやすい気候じゃなかったら、フォルス家も苦しんでいたのかもしれない。
そう思っていると、大きな音が耳に響いた。扉が開いた音に違いはないけれど、目に入る限り空いた扉はない。
「ノヴァ様!」
頭上から聞こえた声に見上げれば、声の主は左上の2階部分にいた。オーロラちゃんが手すりから身を乗り出して目を輝かせている。どうやらさっきの音は彼女が扉を開けてここに来た時の音だったらしい。
危ないよ、と言おうとしたけど、そのときにはもう彼女は手すりから降りてしまっていた。階段まで走り、駆け下りて俺達の元へと来るオーロラちゃん。少し前に会ったばかりだけど、元気なようで安心した。
「やあオーロラちゃん、一昨日ぶりだね」
そう挨拶をするとオーロラちゃんは目の前で急停止し、姿勢を正して貴族の礼を取った。
「ようこそノヴァ様……アークゲート家へようこそ」
その所作は洗練されていて、アークゲート家のご令嬢として相応しいふるまいだったけど、彼女の素を知っている俺からすると堅苦しく感じた。
「やめてよオーロラちゃん、この前みたいな感じにしてほしいな」
「…………」
そう言うとオーロラちゃんはチラリとだけシアを見た。しばらく目線を交差していたけど、やがて作った笑顔ではなく、以前の勝気な表情に切り替えてくれた。
「そう? じゃあそうするわね。それにしても驚いたわ、まさかお姉様の婚約者があなただったなんて」
「……おう、これこれ。これがオーロラちゃんだよなぁ」
俺の知っているオーロラちゃんになったと思って笑っていると、当の本人は不貞腐れたように頬を膨らませてそっぽを向く。
「ちょっと恥ずかしいから、その反応辞めて欲しいかも」
初めて会ったときと同じような反応に、自然と笑みがこぼれていた。
「あはは、ごめんごめん。でもまだ正式に婚約者ってわけじゃないよ」
そう告げると、オーロラちゃんは目を細めて俺を見てくる。
「ふーん、まだ、ね」
やけに「まだ」の部分を強調しますね、この子は。
「ねえねえ、あなたのこと、ノヴァお兄様って呼んでもいい?」
「え……いやそんな大げさな――」
「いいでしょ? ノヴァお兄様?」
「う……」
コテンと首を傾げて上目遣いをするオーロラちゃん。流石に狙っているわけではないと思うけど、破壊力は抜群だ。まあシアの事もお姉様と呼んでいるし、ここは仕方ない。なにが仕方ないのかは考えない。
「分かったよ。でもあんまり外で大っぴらに言うのは辞めてね?」
「もちろんよ! ノヴァお兄様!」
笑顔で応えるオーロラちゃんだが、その後にほんの一瞬だけシアと目を合わせていた。この姉妹、アイコンタクトをする癖でもあるのだろうか。さっきから何度か目線を交差させているけど、あの一瞬じゃ何も伝わらない気が。
「で、これからどうするの? 集合が一時間後って言うのは聞いているけど」
「それまで屋敷をノヴァさんに案内するんです。オーラはノヴァさんと会いたがっていましたから、声をかけました」
「本当!? ありがとうございます、お姉様!」
「いえいえ」
おぉ、やっぱりシアとオーロラちゃんは思った通り仲が良いみたいだ。シアは女神のような慈愛の心に満ちていて優しいし、オーロラちゃんもたまに失敗することはあるけど根は優しい子だ。相性が悪いわけもないか。
「では、こちらから案内しますね」
「ああ、頼むよ」
右手の廊下をシアに手で指し示されて、俺達はそちらへと足を向けた。
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