宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

文字の大きさ
124 / 237
第2章 宿敵の家の当主を妻に貰ってから

第124話 特別な剣

しおりを挟む
 長椅子に座る俺、オーロラちゃん、ターニャ、ソニアちゃん。それに対してたった今ゲートから出てきたシアという、少し見ない構図。 
  
「というより、どうやってオーラはここに? 今日はついさっきまでグレイスによる授業だった筈では?」 
  
「その……ゲートの魔法を習得しまして……」 
  
「え? 本当ですか? 凄いじゃないですか」 
  
「えへへ……と言っても片道しか使えないし、持続時間も短いし、規模も小さいんですけど」 
  
 シアの褒める言葉に、オーロラちゃんは顔を綻ばせる。少し前に聞いたけど、彼女にとってシアは少しでも近づきたい目標であり、尊敬する大好きな姉だという。そんなシアに褒められたら嬉しくなってしまうのも仕方ないだろう。俺だってそうなるだろうし。 
  
「ですが、これまで出来なかったことが出来るようになるのは素晴らしい事ですよ」 
  
 そう言ったシアの腕に細長い箱が収まっていることを再確認して俺は立ち上がる。両手で持つほど細長い箱だけど、何が入っているんだろう。 
  
「大丈夫? 持とうか?」 
  
「あ、えっとですね……これはその……ノヴァさんへの贈り物といいますか」 
  
「え? そうなの?」 
  
 なにか貰い物をするようなきっかけがあったかなと思い返してみるけど、思いつかない。誕生日はついこの間小さいながらも屋敷の皆で祝ったし、当主になったから……とか? 
  
「ノヴァさん、ゼロードとの戦いで剣が砕かれてしまったではないですか。それで代わりになる剣を作ってもらっていたんです。アークゲートと長い付き合いのある鍛冶師に依頼していたのですが、ようやく出来上がったので」 
  
「じゃあそれは……剣?」 
  
「はい……喜んでいただけるとよいのですが……」 
  
 少し心配そうな顔になるシアに対して、俺の心は踊っていた。シアから貰えるものなら何でも嬉しい。でも剣となると、その喜びにも拍車がかかるというもの。 
 しかも彼女がわざわざ俺のために作るように依頼してくれたなんて、なんて言い表して良いか分からないくらいだ。 
  
「すっごく嬉しいよ。ありがとうシア」 
  
「ふふっ、その顔を見て安心しました……どうぞ」 
  
 シアに近づいて、その腕から掬い上げるように箱を受け取る。振り返るとさっきまでいたテーブルにちょうどいい空間があったから、そこに置かせてもらった。 
  
「えっと、開けてもいい?」 
  
「はい、もちろんです」 
  
 膝をついたままで尋ねれば、笑顔でシアが答えてくれる。俺は逸る気持ちを抑えきれずに、箱を開いた。カタンッという音を開けて開く箱。蓋を持ち上げてみれば、現れたのは紺色の鞘に収まった長剣だった。 
  
「おぉ……」 
  
 蓋を箱の横に置いて、箱の中の剣を手に取る。手触りの良さからは、鞘すらも高級であることが伺えた。造りはシンプルで、飾り気のないガード部分があるだけ。けどその中にも洗練さが感じられる。 
 立ち上がり、柄に手をかけて引き抜く。光沢を放つ刃が露わになった。 
  
「すごいな……」 
  
 見ただけで上等すぎるものだと分かる。これを打ったのは相当腕の立つ鍛冶師だろう。それに、この感覚。 
  
「……シアの魔力? いやでも……」 
  
 シアの魔力を感じる。ただこの剣自体に力があるわけじゃなくて、なんていうか、そういう感じがするだけというか。 
 それにシアだけの物でもないような気がする。 
  
 ふと視線を感じてそちらを見てみると、やけに得意げな表情のオーロラちゃんが目に入った。 
  
「アークゲート家の剣は、作成する際に魔力で材質をほんの少し強化するんです。とはいえ特別な力……例えば剣から火や雷を出すみたいな芸当は出来ないんですけど。 
 今回は私とオーラ、そしてユティがそれぞれ魔力を流し込んで材質を強化しています。それらが混ざり合っているのですが、ノヴァさんには分かるみたいですね」 
  
 嬉しいです。というシアの言葉を背後から聞いて納得する。シアの魔力はよく分かるし、オーロラちゃんの魔力もなんとなく分かる。それに残ったものはユティさんの物だろうか。 
 他の二人とは違うけど、彼女の魔力は穏やかで心を落ち着かせてくれるように感じられた。 
  
 三人が俺のために力を割いてくれた剣……これ以上の贈り物が、他にあるだろうか。 
  
「シア、オーロラちゃん、ありがとう。すっごく嬉しいよ。大切にする」 
  
「ふふっ、ここまで喜んでもらえると、頑張った甲斐があるってものね」 
  
 胸を張るオーロラちゃんに微笑みかけるものの、その後すぐに背後から声が飛んだ。 
  
「よく言いますよ、オーラは真っ先にやりたいって飛び跳ねるほどでしたのに」 
  
「…………」 
  
 シアの指摘を受けたオーロラちゃんは顔を少し赤くして、ちょっとだけ視線をずらした。 
 その様子を微笑ましく思いながら、もう一度剣に目を向ける。見れば見る程に、凄い剣だ。 
  
「……剣の事は詳しくないですが、素晴らしいものですね。旦那様が以前持っていたものは勿論の事、先の旦那様が持っていたものよりも上のように感じられます」 
  
「はい、なんというか凄い剣で……旦那様にぴったりだと思います!」 
  
 ターニャやソニアちゃんもそう言ってくれる。確かに父上の剣についても知っているけど、こちらの剣の方が上だろう。 
 俺にとっては、間違いなく歴代どころか未来を考えても最高の一振りだ。 
  
「……これ、家宝にするくらいの名剣だね」 
  
「少なくとも強度に関しては先のゼロードの一撃でもヒビ一つ入らないと思います。どれだけ使っても、向こう何十年かは持つかと」 
  
「……本当に凄いね」 
  
 こんな名剣を作ってくれたアークゲート家の鍛冶師の人には感謝しかない。剣を鞘に戻した後、執務机に向かって立てかける。さらにさっきまでいたテーブルの上に置いた箱もターニャに片づけてもらうことにした。 
 箱をもって部屋を出て行くターニャを見送って、俺はシアに声をかける。 
  
「……シアも少しお茶していく? ちょうどオーロラちゃんが来て、お茶の最中だったんだ」 
  
 俺の言葉に、シアははっきりと頷いた。 
  
「はい、そうします。あら、ソニアちゃん、元気ですか? オーラに困っていませんか?」 
  
 俺の隣に腰を下ろしたシアは目の前のソニアちゃんに気付いて声をかける。彼女も当然、ソニアちゃんとオーロラちゃんが仲が良いのは知っている。あえて聞いているのは、その悪戯っぽい笑顔を見れば間違いないだろう。 
  
「は、はい奥様。オーラちゃんには本当に良くしてもらっていて――」 
  
「むー、困ってないですー。ソニアと私は仲良しですから」 
  
「お、オーラちゃん……」 
  
 横から抱き着いて頬を膨らませるオーロラちゃんにクスクス笑うシア。その笑顔を見て、オーロラちゃんもやがて楽しそうに笑顔を見せ始める。それにつられてソニアちゃんも笑顔になるし、帰ってきたターニャも笑い合う俺達を見て穏やかに笑っていた。 
  
 新しくなったフォルス家は笑顔に溢れていて、俺が目指したかったものそのものだった。 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。 本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。 『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。 「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。 カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。 大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

処理中です...